買い物弱者
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買い物難民(かいものなんみん)とは、従来型の商店街や駅前スーパーといった店舗が閉店する、あるいは対象の地域における交通を支えてきた公共交通機関鉄道路線バスなど)が機能を満たせず廃止する、などの事象を理由として対象となる地域の住民が食料品をはじめとする生活用品などの購入の困難や、病院への通院の不全、役所への届け出の困難、などに代表される社会サービスの需給における不全・不利益に晒される(一部の生存権の行使を拒否される)という社会問題、またはその被害を受けた人々を指す言葉。より広い意味で交通難民(こうつうなんみん)とも称す。「難民」という言葉に対して買い物弱者という言葉を使うケースもある(主に行政機関の公式サイト公文書などで使われることが多い)[1]
目次

1 商業地区・施設の衰退による原因

1.1 商店街の衰退

1.2 米国ウォルマートの事例


2 交通の不便による原因

2.1 ガソリンスタンド過疎地域


3 取り組み

3.1 日本


4 脚注

5 関連項目

6 外部リンク

商業地区・施設の衰退による原因
商店街の衰退

住宅地の徒歩・自転車圏内で小売を担ってきた商店街や駅前スーパーの衰退の原因として
商店街の魅力喪失


各商店・店舗の魅力喪失

建物への新しい要求(
バリアフリー化、無料駐車場の整備、耐震・防災性能向上など)への対応不備、建物の老朽化

法律などにより何らかの改修・更新を強制的に求められた場合、そのコストが高すぎて廃業を余儀なくされる。

旧形態の商売方法から脱却せず、消費者のニーズの変化をくみ取りきれない。各店舗の足並みが揃わないことで、商店街としてまとまった行動を取れないまま、魅力が減退していく


営業店舗数減少(シャッター通り化)

進出した大規模店との競争に負けて撤退

客層の変化(高齢者の割合増加による購買単価の低下)からの収益減少による撤退[2]

後継者問題による個人商店の撤退

コストに見合ったリターンが見込めないため、上記問題の打開を断念する。


商店街中核店舗・大型施設の喪失


集客要因となる施設の建て替えによる(下記の理由も絡む)移転・郊外化。

不況や採算悪化、経営戦略上の統廃合、その他の理由による大規模店(スーパー、百貨店など)や地元スーパー店舗の撤退。

近隣にある公共施設、病院などの郊外化。

などが挙げられる。

大規模店進出に関して中小・個人商店への保護を図った[3]大規模小売店舗法2000年6月に廃止された。全国商店街振興組合連合会(全振連)に加盟する商店街の店舗数は、2009年平成21年)3月末で11万0,961店となり、最盛時の1997年(平成9年)に比べて約4万2,000店、商店街数自体も400か所近く減少しており[4]、商店街の「シャッター通り」化や、なじみの店の消失は、高齢者などの軽自動車を持たない交通弱者に特に影響を与えている[5]
米国ウォルマートの事例

大規模店舗と商店街(中小・個人商店)との競争だけでなく、「駅前スーパー」対「郊外型ショッピングモール」など大規模店舗同士による競争も発生している。

アメリカ合衆国ウォルマートの事例(ウォルマート地獄焼畑商業)のように、
商品数を多く扱える大規模店や専門店(ショッピングモールなど)が出店する

地元の住民が大規模店などで購買を行うようになり、駅前スーパーや商店街の経営が圧迫される

経営を圧迫された地元商店が閉店し、商店街が衰退する

その後、不採算等何等かの理由で大規模店・専門店が地域から撤退する

結果として地域に商業インフラがなくなり、当地域の住民が買い物難民となる

のような経緯を経て、買い物難民が発生する場合がある。モータリゼーションが高度に発達し、消費者の行動範囲が広い地方地域のみならず、東京23区などの都市部でも、商店の減少で買い物難民が発生する事例が出ている[6]

現実問題として、大都市郊外においては、国道沿いに大型店が出店し、駅前のスーパーが撤退している例が多数あり、公共交通機関を通勤手段とすることが多い大都市郊外住民の中には、仕事帰りに駅前のスーパーや商店街で夕食の食材を買って帰るというごく日常の行為にも支障をきたしている(例として、東京郊外では綱島駅、大阪郊外では富田林駅などが駅前のスーパーが撤退しており、いずれも5q圏内の主要道路沿いに大型店が出店している)。
交通の不便による原因「ロードサイド店舗」も参照 地方のスーパーマーケットと買い物客の軽自動車。
車への依存度が高い地方ではもはや「一家に1台」ではなく「1人に1台」、すなわち「一世帯に人数分」の車を持つパターンも珍しくない。
多くの場合、2台以上を所有する際は維持費の安さから軽自動車が選ばれるため、「軽自動車(のみ)の増税に反対」する理由として、この買い物難民問題(軽の増税=クルマが持てない=買い物難民化)が挙がることもある。
愛媛県四国中央市旧土居町にて撮影)

郊外型ショッピングモール(ロードサイド店舗)が地方へ出店したことで、これまで徒歩で来店できた地元の商店街が衰退したため、自動車・自転車等の運転が不可能ないし困難な高齢者障害者といった交通弱者や、経済的理由で自動車を持てない者[7][8][9]、健康であっても自転車で行くには遠すぎるなど、パーソナルな交通手段(自動車、バイク自転車カーシェアリングなど)がないために買い物に困るケースも発生している。

市街地から離れた郊外型ショッピングモールは、基本的にパーソナルな交通手段による来店を前提としており、徒歩による来店はほとんど考慮されていない。そのためそれらを運転(または所有)できない者はバス鉄道タクシーなどの交通機関に頼るほかない。しかし僻地ではそもそも公共交通が使い物にならず[10]、(バス・鉄道どころか小規模タクシー会社すら無いことすらある)交通弱者の来店を困難にしている。また、高齢者とまではいえない年齢の健常者でなおかつ経済的理由で自動車を持てない交通弱者にいたっては、行政の支援もまともに受けることができない[11]ため、高齢者や障害者よりもさらに過酷な境遇を強いられる場合がある[12]
ガソリンスタンド過疎地域 廃墟と化したガソリンスタンド(愛媛県新居浜市)。

さらに深刻なことに、モータリゼーションや機械化農業の要ともいえるガソリンスタンドの数が著しく減少している地域がある。経済産業省資源エネルギー庁によると、ガソリンスタンドが3カ所以下の市町村が283箇所、そのうち全くない所が10カ所あるとされている。背景には経営状況の悪化(競争の激化、ガソリン需要の減少(若者の車離れも参照)、老朽設備の改修コストを回収できる見込みがないなど)や後継者難[13]などが挙げられる。

ガソリン軽油灯油といった石油燃料が買えないことは、買い物への移動手段でもある自動車・バイク[14]はもちろんのこと農業に必要なトラクター、草刈り機などと言った各種エンジン式農機具類、ポンプ・高圧洗浄機、災害時の命綱ともなりうる発電機[15]、住居に不可欠な石油暖房機器やボイラーなども含めた「全ての石油燃料利用機器」が使えなくなるおそれも意味する。「住むための前提条件」が崩壊していることで、やがてゴーストタウンと化す。
取り組み
日本

移動販売宅配、買い物代行、交通支援、市民協働による店舗誘致、朝市開催による中心街復興施策など、行政をあげて取り組みが行われている地域がある[16][17]


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