貨幣
[Wikipedia|▼Menu]
.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}ウィクショナリーに関連の辞書項目があります。貨幣

貨幣(かへい、: money)とは、経済学においては、サービスとの交換価値情報、及びそのメディア(媒体)の総体であって、財・サービスとの交換や保蔵ができるものであるとの社会の共通認識のもとで使用されるものである。また、それは以下の要件を満たす。

商品交換の際の媒介物で、価値尺度、流通手段、価値貯蔵の3機能を持つもののこと[1]

商品の価値尺度、交換手段として社会に流通しているもので、またそれ自体が価値あるもの、富として蓄蔵を図られるもの[2]

また、日本の法律においては、貨幣とは造幣局が製造し、政府が発行する硬貨(coin)を指し、日本銀行券とは区別している。
概説

物やサービスとの交換に用いられる「お金」を、経済用語では貨幣、または通貨と呼ぶ[3]。貨幣とは、経済学上は、価値尺度交換の媒介、価値の蓄蔵の機能を持ったものの事である。

広義には、本位貨幣の他にも、法律により強制通用力を認められている信用貨幣も含める[1]。つまり「貨幣」という語は、鋳貨紙幣に加えて預金などの信用貨幣も含めて指す場合が多い[2]。なお、慣習的な用法として、法令用語の意味における貨幣と紙幣・銀行券をあわせて「お金」と呼ぶことが多い。

政府は、租税の算定に通貨を用いる。法定通貨が額面通りの価値を持つためには、その貨幣を発行する政府に対して国民の信用が存在することが必要条件である。

二者間でサービスの取引を行う場合には、信用取引となる。一方から他方に財・サービスが移転した後に、決済を行うとすると、その場合、財・サービスの売り手には、買い手に対する信用が生じ、反対に財・サービスの買い手には、売り手に対する負債が生じる。この取引における「信用/負債」関係は、負債が支払われることで解消される。ところで、実際の経済においては、財・サービスの取引は、多くの主体間で行われるため、売り手と買い手の間の「信用/負債」関係も無数に存在し、財・サービスの売り手は他方で、財・サービスの買い手でもあるのが、通常の場合であり、現実の経済では、無数の「信用/負債」関係が複雑に絡み合ってくる。ある二者間で定義された負債と別の二者間で定義された負債を相殺、決済するためには、負債を計算する共通の表示単位が必要になる。この共通の表示単位(ドルポンドなど)が貨幣(計算貨幣)である。貨幣とは共通の計算単位で表示された負債のことである。貨幣を負債の一種とみなす貨幣観を信用貨幣論という[4][5]
貨幣の機能

貨幣の重要な機能として次のようなものがあり、いずれかに用いられていれば貨幣と見なせる。それぞれの機能は別個の起源と目的をもっていると言われる[6]1923年発行のレンテンマルク硬貨。この貨幣は、1920年代のドイツの一兆倍にもなったハイパーインフレで混乱した経済を建て直すために発行された貨幣の一種である。
価値の尺度
貨幣は、計量可能なモノ()の交換価値を客観的に表す尺度となる。これによって異なるモノの価値を、同一の貨幣において比較ないし計算できる。例えば、本20冊と牛1頭といった比較が可能になり、価格を計算できる。
支払
計量可能なモノを渡し、責務を決済する。初期社会では特に示談金、損害賠償、租税などの制度と関連して生じた。
価値の蓄蔵
計量可能なモノを貨幣に交換することで、モノの価値を蓄蔵することができる。例えば、モノとしての大根1本は腐敗すれば消滅するが、貨幣に換えておけば将来大根1本が入手可能となる。あるいは「大根1本の価値」を蓄蔵できる。ただし、自由な取引の元では通貨価値ないし物価変動により貨幣で入手できるモノの量は増減することがある。
交換の媒介
貨幣を介する社会では、計量可能なモノと貨幣を相互に交換することで、共通に認められた価値である貨幣を介することで取引をスムーズに行える。これに対し、貨幣を介さない等価交換においては、取引が成立する条件として、相手が自分の欲しいモノを持っていることと同時に、自分が相手の欲しいモノを持っていることが必要となる。
貨幣の歴史詳細は「貨幣史」および「貨幣学」を参照

貨幣は4つの機能によって用途が分かれており、身分によって使える貨幣が決まっていたり、共同体の内部と外部とで用いられる貨幣が異なっていた。すべての機能を含む全目的な貨幣が現われたのは、文字をもつ社会が誕生して以降となる[6]

現在は1国につき1通貨の制度が主流となっているが、歴史においては、公権力によらずに国際的な貿易で流通する貨幣や、各地域が独自に発行する貨幣が多数存在していた。このため、複数の貨幣が用いられていた[7]
経済学における貨幣

経済学では貨幣という用語は、銀行の当座預金や普通預金などの預金通貨や、定期預金などの準通貨を含むより広い意味で用いられることが多い。貨幣数量説貨幣乗数などの用語における貨幣は、こうした用例である。貨幣は、財・サービスと交換できるため、人々に求められると考える[8]。貨幣は、財との交換回数の節約という形で、経済の効率化に重要な役割を果たしている[9]

デイヴィッド・ヒュームは、貨幣は商業の実体ではなく、財貨相互の交換を容易にするために人々が承認した道具と定義した[10]アダム・スミスは、富とは貨幣ではなく貨幣で買える商品であり、貨幣は商品が買えるから価値があるにすぎないと論じた[11]デヴィッド・リカードは、貨幣は交換のための単なる媒介と定義している[12]。スミスやリカードによる、貨幣は商品交換の媒介にすぎないという思想は、19世紀後半の新古典派経済学では「貨幣の中立性」と表現された[13]
貨幣の価値

「貨幣の価値」は「貨幣のモノとしての価値」とは異なる。例えば、不換紙幣の場合、モノとしての日本の千円札は印刷物でしかない。「千円札」を文字や模様が印刷された紙として利用して得られる効用は、「千円で売られているランチ」から得られる効用に及ばない。

異時点間における貨幣価値をあらわす概念として割引現在価値がある。これは、将来の貨幣価値は現在の貨幣価値に利息分が上積みされたものと考えて、その利息を生むために必要な現在の貨幣価値と同等とみなすものである。たとえば利率が年に10%であり、日本円で9091円を預金すると来年には909円(=9091×10/100)の利子を受け取ることができるものとする。すると、来年にはあわせて10000円になる。この場合、来年の10000円の割引現在価値は9091円である。

通貨の価値の根拠は、その通貨の裏付けとなっている貴金属の内在的な価値にあるとみなす金属主義と、その発行主体、とりわけ国家主権の権力にあるとみなす表券主義がある[14]
貨幣と購買力詳細は「購買力平価説」を参照

貨幣はあらゆる商品の価値を統一的に表現できるため、これを逆算すれば一定の貨幣量で購買可能な商品量を表現できる。この貨幣の能力を「購買力」と呼ぶ。また一定の商品量を購買するのにどのくらいの貨幣量が必要かを調べ、これを国際比較することで数値化ができ、これを購買力平価(PPP)と呼ぶ。
貨幣と情報

商品の交換には、サービスの交換比率や買い手・売り手に関する情報が必要となる。貨幣は、この情報を入手するための費用を節約する。この情報が欠けていると、互いに相手の所有する商品を同時に欲している場合にしか交換が成立しない。このような「欲求の二重の一致」なしに交換を成立させるものとして、貨幣は商品経済の発達を進展させ、分業と交易の拡大をもたらす。また貨幣は、完全な情報を仮定するミクロ経済学では登場せず、マクロ経済学の分析対象となる[15]
公共貨幣と債務貨幣

貨幣は、公共貨幣(public money)[16] と債務貨幣(debt money)に大別される。公共貨幣は、いかなる者にも債務を発生させることなく、公共機関の通貨発行権に基づいて発行される。他方、債務貨幣は、だれかの債務と引き換えに発行される。

人類の歴史における主な貨幣は長らく公共貨幣であった。たとえば、古代ギリシャのエレクトロン貨、日本の和同開珎藩札太政官札などは、公共貨幣である。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:45 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef