貨客混載(かきゃくこんさい)とは、貨物と旅客の輸送、運行を一緒に行う形態のこと。鉄道、路線バス、タクシー、飛行機、フェリーなどで行われる。多くの場合、旅客が滞在するスペースと貨物を積載するスペースは明確に分離される。対語は客貨分離。ヤマト運輸などでは、客貨混載(きゃくかこんさい)と表現している[1]。英語では貨客混載仕様の輸送機器や運用を「コンビ」と呼ぶ。 日本では、効率の良い大規模輸送や高頻度輸送を目的として客貨分離(例:混合列車、荷物列車、郵便車の廃止等)が進められてきた経緯がある。しかしながら21世紀に入ると、二酸化炭素排出量削減などの環境問題や地方で進行し始めた人口減少対策、さらにトラックドライバー不足などにより、客貨分離が必ずしも効率的ではない状況も見られるようになった。 2010年、環境負荷の軽減、都市内交通渋滞の解消等の効果を検証するため、札幌市と都市型新物流システム研究会が共同で地下鉄を利用した宅配便の拠点間輸送の実証実験を市営地下鉄東西線で実施した[2][3]。なお札幌市交通局では2017年に路面電車を用いた実証実験を行っている[4]。2011年、ヤマト運輸が環境負荷の軽減を目的に京福電鉄(嵐電、京都府)を利用した宅配便輸送を開始。2015年6月には、ヤマト運輸がトラックドライバー不足を補う目的で岩手県北自動車(岩手県)を利用した宅配便輸送を、県庁所在地の盛岡市と三陸地方の宮古市間で開始した。こうした動きを背景に同年12月に開催された、交通政策審議会と社会資本整備審議会では、過疎地の物流網を維持するために、バスや鉄道の輸送力を活用した貨客混載の検討を進める必要があること。また、都市内物流でも、トラックドライバー不足対策の観点から旅客輸送力を活用した貨物輸送を検討べきとの指摘を行った[5]。以降、ヤマト運輸が宮崎交通(宮崎県)を、佐川急便が北越急行(新潟県)を利用するといった事例が拡大、さらには宅配事業者が共同で東京メトロ(東京都)を利用し、荷物輸送を行う構想も浮上している[6]。 2017年、国土交通省は過疎地などで、貨物自動車(ライトバンやツーリングワゴン等)に旅客を乗せる事例等の解禁や、従来存在した乗り合いバス(路線バス)による貨物輸送の重量制限(350kgまで)を撤廃する規制緩和を9月1日から実施した[7][8]。 2017年11月1日、旭川市の旭川中央ハイヤーは、佐川急便と共同で、乗り合いタクシーを利用した戸別配送事業を開始した[9]。 2018年(平成30年)2月21日 - 全国で初めてヤマト運輸による貨客混載列車を長良川鉄道越美南線関駅 - 美並苅安駅間で運行開始[10]
21世紀における日本の動き
2020年3月23日、西米良村営バスはヤマト運輸・佐川急便と共同で、両社の宅配便の輸送を開始。ヤマト運輸・佐川急便両社の共同貨客混載事業はこれが全国初。
2020年になると新型コロナウィルスの影響で鉄道利用者数が激減し、その収入減を補うための新幹線等の空席を利用した荷物輸送が各鉄道事業者で行われるようになっている[12]。
宅配便以外の分野では高速バスの床下トランクを利用した小荷物輸送が見られる。
JR東日本グループのバス会社(ジェイアールバス関東・ジェイアールバス東北・ジェイアールバステック)と物流会社(ジェイアール東日本物流・東北鉄道運輸)は共同で2016年に地域活性化物流有限責任事業組合を立ち上げ、ラ・フォーレ号やいわき号などで東北地方産の生鮮食品や加工食品を輸送する[13]。