財産
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店舗や住居などの建物が、財産(不動産)の一般的な形態である。建物内にある家具などの什器もまた、財産(動産)の一般的な形態である。

財産(ざいさん 英:Property)は、個人団体に帰属する経済的価値があるものの総称で、有形・無形を問わず財産権の対象となるもの[1]。似た言葉に「資産」があるが、これは有形・無形の財産に関する会計上の概念(決算期末など一時点における財産評価額)である[2]
概要

経済学政治経済学においては、私有財産公共財産[注釈 1]組合財産[注釈 2]という財産の3形態がある[4]

社会学人類学では、財産がしばしば1つの対象物と複数の個人との関係(少なくともこのうち誰か1人は同対象物の財産所有権を有する)と定義される。異なる個人が1つの対象物に対して異なる権利を有することが多い「組合財産」と「私的財産」の区別は混乱しがちである[5][6]

日本の民法86条は、有形の財産を不動産(土地および土地に定着している物)と動産(不動産以外の物)に大別している[7]。これら有形の財産には、所有者が直接的に支配する様々な物権所有権用益物権[注釈 3]担保物権など)および債権が付随する。無形の財産は、発明や芸術・音楽・著作といった創作者の経済的利益を保護する知的財産権特許権商標権著作権など)が代表的で[9]、企業や個人の持つ知名度信用なども無形の財産にあたる。しかしながら、知的財産権は必ずしも(特に開発途上国で)広く認識されているとは限らず、施行保護されていない場合がある[注釈 4][10]。1つの財産が、有形な部分(実物)と無形な部分(付随する権利等)を持っていても構わない。とりわけ所有権は、財産と他者との関係を確立しており、所有者が適切と考える方法でその財産を処分する権利を所有者に保証している[要出典]。

財産を意味する英単語「プロパティ(Property)」は、単体だと特に不動産を指すのに使われる[注釈 5]。また歴史的に見ても、資本主義以前の社会における主要な財産は土地であり、財産制度は土地所有のあり方によっていた[11]
種類

日本を含む大半の国家・地域の法体系が財産を複数の種類に分けており、とりわけ「不動産」と「動産」とを区別している。また多くの場合、それら法体系は「有形」と「無形」の財産を区別している。

無形財産の取扱いについては、財物が相続可能でも法律ほか伝統的概念によって期限切れになる場合があり、この点は有形財産との大きな違いである。有効期限が切れると知的財産は創作者の手から離れて、使用料を払う義務もなく万人が利用可能になる(パブリックドメインジェネリック医薬品などが典型例)。

日本では、相続に際して被相続人の遺産を「積極財産」と「消極財産」の2つに分類することがある。前者は簿記上の概念でいう「資産」にあたるもの、後者は「負債」にあたるもので、ここでの財産とは一定会計単位組織の有する権利・義務の全てを含むものとされる[12]。相続人は被相続人の財産に属する全ての権利義務を継ぐことになるため、消極財産のほうが多い場合は相続放棄することも可能である。

債権回収の実務においては、債務者が有する差押えの対象となる財産の事を「責任財産」という。一方で、民事執行法において差押えすることができない動産や債権もあり[13]、こちらを「差押禁止財産」という。

多くの社会では人体が何らかの財産と考えられている。自分の体の所有権と各種権利の問題は、概して人権の議論において生じる[注釈 6]。ビジネス界にも「体が資本」という定型句があり[14]、身体が健康で普段通りに活動できることがその人の財産であることを説いている。
経済体制と財産

財産に対する捉え方は、その社会の経済体制によって違いが見られる。

資本主義には、財産権がその所有者に財産を生じさせてを生み出し、市場運営に基づいて効率的な経済資源[注釈 7]の配分が促されるという中核的な前提がある。ここから財産の現代的概念は、財産がより多くの富とより良い生活水準を生み出すことを期待して発展した。しかし、アダム・スミスは財産が不平等に及ぼす影響について批判的な見解を以下のように述べている。
「大きな財産が存在する所にはどこでも大きな不平等が存在する...[中略]市民政府は、財産保全のために制定される限り、実際には富裕層を貧困層から守るためだったり、若干の財産を持つ人々を全く財産を持たぬ者から守るために制定されている。(アダム・スミス著『国富論[15]

古典的自由主義は財産の労働説を支持している。彼らは、個人がそれぞれ自分の生命身体を所有しているとの見解を抱いており、従って人はその生命身体を使う労働での生産物を認知する必要があり、それは他者と自由に交換して取引できるという見解である。
「誰しもが自分の体という財産を持っている。これは本人自身だけのもので他に誰も権利を持たない。(ジョン・ロック著『統治二論』)「人々が社会に参画している理由は、自分の財産保護である。(ジョン・ロック著『統治二論』)「生命、自由、財産が存在するのは人間が法律を作ったからではない。逆であって、以前から生命、自由、財産が存在していた事実が、人間に法律を作らせたのである。(フレデリック・バスティア著『法』)

保守主義は、自由と財産が密接に結びついているという概念を支持している。私有財産の所有が広がれば広がるほど、国家や国民はより安定して生産的になる。保守主義者は、財産の経済的平準化(特に強制的なもの)は経済的進歩ではないと主張している。
「財産を私的所有から隔離して、全体主義国家(Leviathan)がすべての支配者になる...[中略]私有財産の基盤の上に偉大な文明が築かれる。保守主義者は、財産の所有が所有者に特定の義務を課すことを認めている。彼はこれらの道徳的、法的義務を喜んで受け入れる。(ラッセル・カーク著『慎重さの政治学(The Politics of Prudence)』)

社会主義の基本原則はこの概念の批判を中心としており、(とりわけ)財産を守るコストは私有財産の所有権からのリターンを上回り、財産権がその所有者に彼らの財産を発展させたり富を生み出すことを奨励したとしても、彼らは自分達の利益のためにそうしているだけで、それは他の人々や社会全体への利益と一致しない場合がある、と述べている。

自由主義的社会主義は、一般的に短い放棄期間で財産権を受け入れる。言い換えると、人は物品を(多かれ少なかれ)継続的に使用する必要があり、さもなければ所有権を失う。これは一般に「所有財産」または「用益権」と呼ばれる。従ってこの用益権システムにおける不在者の所有権は違法であり、労働者が自分と共に働く機械または他の機器を所有している。

共産主義は、生産手段共有制だけが不平等なり不当な結果の最小化と利益の最大化を保証すると主張している。それゆえ、人間は(財産とは対照的である)資本の私的所有を廃止すべきだと主張する。

共産主義も一部の社会主義も、資本の私的所有は本質的に非合法という思想を支持している。この議論は、資本の私的所有がいつもある階級に他の階級より多くの利益を生み出して、この私有資本を介して支配が起こる、という思想が中核である。共産主義者は、無産階級の人達による「苦労して獲得し、独力で獲得し、独力で稼いだ」個人財産に反対しない。社会主義も共産主義も、資本の私的所有(土地、工場、資源など)と私有財産(家、物質的な物など)を慎重に区別している。
関連する概念
合法な契約取引等

一般的な意味や説明行為者
販売金銭と引き換えに、動産・不動産やその所有権を与える。対比の概念は購入。売り手
共有複数当事者による共同運営として動産・不動産の使用を許可する。所有権者
賃貸補償金と引き換えに、動産・不動産の限定的かつ一時的(ただし潜在的に更新可能)な独占的使用を許可する貸し主
許諾上に同じだが、主に知的財産での利用料を払うライセンス契約について言う。許諾者
無形の財無形の財他人の所有財産を一定の目的のために使用収益する
用益物権やそれに類するもの。この特定権益は、同一の当事者によって権益と対象財産が所有されると、容易に破棄される場合がある。N/A
分与財産から生じる全ての財産権について特定部分の所有権ないし持分を別の当事者に与えられるのが特徴で、それ自体が財産の非実体的な形であるもの。具体例として株式など。
地役権一定の目的範囲で、他人の土地を自分の土地のために利用できる権利。 賃借権と違い、その効力は目的を達成する必要最小限度にとどまる。
先取特権先取特権法律の定める一定の債権を有する者が、他の債権者に優先して弁済を受けられる権利。 特定動産の先取特権(民法311条)と不動産先取特権(民法325条)を合わせて、特別の先取特権という。先取特権者
抵当権債務の担保に供した物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利。 質権と違って引渡しを要しないため所有者は抵当権成立後も引き続き使用可能。抵当権設定者
質権(担保)債務不履行に備えて債権者に渡しておく債務者の所有物で、債権弁済を確保するためのもの。融資の返済が滞った時などに融資先の金融機関に差し出す財物[16]。債務者
利害衝突
(利益相反)僅少ないし矛盾のため財産を適切に使用・占有できずにいる、事実上の共有不能状態。


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