負性抵抗
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蛍光灯は負性微分抵抗を持つ素子の1つである[1][2]。点灯中に蛍光灯に流れる電流が増加すると、両端の電圧は低下する。蛍光灯が送電線に直接つながれていると、電圧低下がさらなる電流増加を招き、アークフラッシュ(英語版)によって破壊されてしまう[3]。これを防ぐため、蛍光灯は安定器(英語版)を介して送電線に接続される。安定器は正のインピーダンスを追加することで蛍光灯の負性抵抗を打ち消し、電流を制限する。

電子工学において、負性抵抗(ふせいていこう、: negative resistance, NR)は、一部の電気回路や素子が持つ特性で、端子間の電圧が増加すると、流れる電流が減少するものを指す[4][5]

負性抵抗の振る舞いは、印加電圧が増えるとオームの法則により電流が比例して増加し、抵抗値が正となる通常の抵抗器とは対照的である[6]。通常の抵抗器は、正の抵抗に電流が流れると電力を消費するが、負性抵抗は電力を発生する[7][8]。負性抵抗は特定の条件下で電気信号の電力を増加させて増幅機能を担うことができる[3][9][10]

負性抵抗は限られた数の非線形電子素子でしか見られない。非線形素子では抵抗の定義が2種類ある。「静的抵抗」は電圧 v {\displaystyle v} の電流 i {\displaystyle i} に対する比 v / i {\displaystyle v/i} をいい、「微分抵抗」は電圧変化とそれによって生じた電流変化の比 Δ v / Δ i {\displaystyle \Delta v/\Delta i} をいう。負性抵抗という言葉は負性微分抵抗、すなわち Δ v / Δ i < 0 {\displaystyle \Delta v/\Delta i\;<\;0} を意味する。一般に負性微分抵抗は増幅機能を持つ2端子素子であり[3][11]、端子に与えられた直流電力を交流出力電力に変換することで同じ端子に印加された交流信号を増幅することができる[7][12]電子発振器増幅器の構成部品に用いられ[13]、特にマイクロ波領域での利用が多い。マイクロ波領域のエネルギーは負性微分抵抗素子によって生み出されるのがほとんどである[14]。負性抵抗素子はヒステリシス[15]双安定性を示すことがあり、スイッチングやメモリ回路にも利用される[16]。負性微分抵抗を持つ素子の例にはトンネルダイオードガンダイオードネオン管などのガス放電管蛍光灯がある。そのほかトランジスタもしくは正帰還を施したオペアンプのような増幅素子を含む回路にも負性微分抵抗を持たせることが可能であり、発振器アクティブフィルタに利用されている。

負性抵抗素子は非線形であり、通常の電気回路で見られる正の「オーミックな」抵抗より動作が複雑になる。ほとんどの正抵抗とは異なり、負性抵抗素子の抵抗値は印加される電圧や電流によって変化し、限られた電圧・電流範囲でしか負の抵抗を持たない[10][17]。すなわち、任意の電流範囲にわたって一定の負性抵抗を持つという意味で正の抵抗器に対応する「負性抵抗器」は存在しない。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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