豪雨
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強い降雨。雨筋が向こうの木々を見えづらくしている。強い雨に見舞われた公園の様子。歩道に雨が叩き付けてしぶきを上げ、浸透能の低い舗装は水浸しになる。

集中豪雨(しゅうちゅうごうう)とは、局地的で短時間の強い、つまり限られた地域に対して短時間に多量の雨が降ることを言う。現在の日本においては一般にも学術用語にも用いられるが、雨量などに基づいた定量的な定義はない[1][2][3][4]
用語

日本の気象庁は以下の2つの用語を使い分けているが、一般的にはどちらも「集中豪雨」と呼ばれる[5]

局地的大雨 - 単独の積乱雲によりもたらされる、数十分の短時間に、数十mm程度の雨量をもたらす雨[6]

集中豪雨 - 積乱雲が連続して通過することによりもたらされる、数時間にわたって強く降り、100mmから数百mmの雨量をもたらす雨。局地的大雨が連続するもの[7]

本項ではこの両方について述べる。なお気象庁は、災害の恐れのある雨を「大雨」[8]、著しい災害に至った雨を「豪雨」[9]と呼んでいて、「豪雨」「集中豪雨」は過去の災害に対してのみ用い、(予報の場面などの)これから起こる大雨に対しては用いない[7][9]

学術的には、「大雨」は単に大量の雨が降ること、「豪雨」は空間的・時間的にまとまって災害をもたらすような雨が降ること、「集中豪雨」は空間的・時間的な集中が顕著な豪雨を指すとされるが、区別は明確ではない[4]

似たような言葉として、雨の降る範囲に関係なく短い時間に多くの雨が降る事を指す「短時間強雨」[10]、雨の継続時間に関係なく狭い範囲に多くの雨が降る事を指す「局地豪雨」、予測が困難な突発的な大雨を指す「ゲリラ豪雨[11]がある。これらは、集中豪雨とされる事例に対しても用いられる場合がある。

集中豪雨の概念は各国共通のものではないが、類似語がある。英語には突然の激しい雨、土砂降りを意味する"cloudburst[12]、"downpour"などの言葉がある。韓国語では日本語がそのまま移入され"????"(集中豪雨)として用いられている。

集中豪雨という用語が初めて公に使用されたのは、1953年8月14日-15日にかけて京都府の木津川上流域で発生した雷雨性の大雨(南山城豪雨、南山城水害をひきおこした)に関する、1953年8月15日の朝日新聞夕刊の報道記事とされている。この報道以降、主に新聞などで使われはじめ、一般語としても気象用語としても定着していった[1][13]。また、用例はあったが普及していなかった「ゲリラ豪雨」という呼称は、集中豪雨が日本国内各地で続発した2008年夏以降一般に広く使用されるようになった[注 1]
メカニズム「降水」および「降水過程」も参照

一般的に、地面に対して水平方向に発達する層状の雲(乱層雲など)に比べて、地面に対して垂直方向に発達する積雲積乱雲の方が、激しい雨(驟雨)をもたらす。これには、積雲や積乱雲の内部の対流(積雲対流)が関係している。積雲や積乱雲がもくもくと発達して急激に雲頂の高さを増すことからも分かるように、積雲対流中の上昇流の速度は他の循環による上昇流に比べて桁違いに大きく[注 2]、これによって雲中で雨粒や氷晶の急激な発達が起こり、激しい雨となる[14]
にわか雨と局地的大雨・集中豪雨の違い発達した積乱雲の例(スペースシャトルより撮影)。こうした雲の発達のほか、世代交代、移動経路などが豪雨になるかならないかを左右する。

先の説明の通り積雲や積乱雲は激しい雨をもたらすものの、そうした雨の多くは、散発的で急に降りだしてすぐ止んでしまう一過性の雨(にわか雨[注 3][15])である[16]。例えば、日本の場合はに散発的な積乱雲が発生しいわゆる夕立をもたらすが、その多くがにわか雨で、夕立の積乱雲のすべてが集中豪雨を降らせるわけではない[5]

これは、にわか雨の時には、複数の積乱雲の塊(降水セル)が雑然と集まっていてそれぞれが独立的に活動しているからである。このようなタイプの降水セルをシングルセル(single cell、単一セル)といい、雷雨の分類上は「気団性雷雨」という。上空が単一の気団に覆われていて、一般風[注 4]の鉛直方向でのシアーが弱いときに発生しやすい[16]

降水セルの大きさはふつう、水平方向に5 - 15km、寿命はおおむね30 - 60分ほどで、雨はその中でも30分程度しか続かない。そのため、降水セルが雑然と集まっただけでは雨が長続きしない[17][18]

しかし、大気が不安定であるなどの要因で積乱雲が発達すると、雨量が増して数十分で数十mm程度に達する。このような雨を気象庁の呼び方では「局地的大雨」という[5][6]

そしてさらに条件が整うと、1時間で数十mmの局地的大雨が数時間あるいはそれ以上継続し、総雨量が数百mmに達して気象庁が呼ぶような「集中豪雨」となる。その条件は、寿命が限られた積乱雲が世代交代をして次々と発生・発達し、かつその積乱雲群が連続して同じ地域を通過することである[5]


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