護国三部経(ごこくさんぶきょう)とは『法華経』『仁王経』『金光明経』の三つの仏典である。「鎮護国家三部経」「鎮護国家の三部」とも。その呼び名の通り、国家の安泰を願って用いられた。この三部経の括りを定めたのは最澄だという。
『溪嵐拾葉集
』では真言密教における三つの「経王」(『大日経』『金剛頂経』『蘇悉地経』)と護国三部経(こちらは「鎮護国家経王」と呼ばれる)を対応させる説が引用されている。それによると『大日経』には『法華経』、『金剛頂経』には『仁王経』、『蘇悉地経』には『最勝王経』(義浄訳の『金光明経』)が対応する。顕教のものである『法華経』、『仁王経』、『最勝王経』はそれぞれが対応する密教経典の「浅略」であるという。円仁は大日経、金剛頂経、蘇悉地経を「鎮護国家の三部」と位置づけた。日蓮は『曽谷入道殿御書』において、この説を最澄以来の鎮護国家を破壊するものとして否定し、これによって比叡山に邪義が生まれ、その邪義が鎌倉に侵入し、やがては日本を滅ぼすとした。
参考文献
山折哲雄『仏教用語の基礎知識』角川書店、2000年 ISBN 978-4047033177
関連項目
法華三部経
浄土三部経
弥勒三部経
大日三部経
サーマンニャパラ経(沙門果経), マハーパリニッバーナ経(大般涅槃経)など
経蔵 小部
ダンマパダ(法句経), スッタニパータ, テーラガーター, テーリーガーター, ジャータカ, ミリンダ王の問いなど
論蔵
十誦律 · 中阿含経 · 雑阿含経 · 六足論 · 発智論(前1世紀)・婆沙論(2世紀)・倶舎論(4世紀)・順正理論(5世紀) (根本説一切有部 根本説一切有部律)
化地部
清浄道論(5世紀)・アビダンマッタサンガハ(11世紀)
大乗仏教
大乗仏教・初期
維摩経(1世紀)
無量寿経 · 観無量寿経 · 阿弥陀経 --- 「浄土三部経」
馬鳴
中論 · 百論 · 十二門論 · 大智度論 · 十住毘婆沙論(3世紀)
大乗仏教・中期
如来蔵経(3世紀)
勝鬘経(3世紀)
金光明経(4世紀)
仁王経(4世紀)
楞伽経(4世紀)
解深密経(4世紀)
大乗阿毘達磨経(4世紀)