『警視庁失踪課・高城賢吾』(けいしちょうしっそうか・たかしろけんご)は、堂場瞬一による日本の警察小説のシリーズ。2009年から2013年にかけて全10巻が刊行された。
2010年4月より、「警視庁失踪人捜査課」のタイトルで沢村一樹主演でテレビ朝日系列においてテレビドラマ化された。堂場作品の連続ドラマ化は初めてである。
一人称小説であり、文章は主人公である高城の視点で書かれている。同著者による「刑事・鳴沢了シリーズ」や「アナザーフェイス」、「警視庁追跡捜査係」と同じ世界を舞台としている。 中公文庫より書き下ろしで刊行された。
シリーズ一覧
蝕罪(2009年02月25日発行、ISBN 978-4-12-205116-4、巻末解説:香山二三郎)
相剋(2009年04月25日発行、ISBN 978-4-12-205138-6)
邂逅(2009年08月25日発行、ISBN 978-4-12-205188-1)
漂泊(2010年02月25日発行、ISBN 978-4-12-205278-9)
裂壊(2010年06月25日発行、ISBN 978-4-12-205325-0)
波紋(2011年02月25日発行、ISBN 978-4-12-205435-6)
遮断(2011年10月25日発行、ISBN 978-4-12-205543-8)
牽制(2012年12月20日発行、ISBN 978-4-12-205729-6)
闇夜(2013年03月25日発行、ISBN 978-4-12-205766-1)
献心(2013年06月25日発行、ISBN 978-4-12-205801-9)
各巻あらすじ
蝕罪(しょくざい)
翌月に結婚を控えた会社員・赤石透が失踪したと、心配した母親の芳江が透の婚約者・翠と失踪課に相談に訪れる。事件性の有無を探りながら捜査を始めると、失踪した赤石には就職に失敗し1年間ネットカフェ難民生活をしていた過去があり、更に今の会社に勤める前の1年間、経歴不明の空白の時期があった。母親も婚約者さえも知らない1年に何があったのか。調べを進めていく内に、インチキ健康食品を売りつけて暴利を貪っていたJHAという会社と赤石の関連が浮かび上がってくる。
赤石透 - 失踪した会社員。26歳。派遣会社「TJS(東京ジョブサービス)」勤務。就職に失敗し、大学卒業後1年間、ネットカフェ難民生活を送っていた。さらに経歴に1年間の空白がある。
矢沢翠 - 透の婚約者。TJSに勤める同僚。
赤石芳江 - 透の母親。長野県在住。
赤石美矩 - 透の年の離れた妹。10歳。
上池拓司 - 透の大学時代からの友人。銀行員。
会田光信 - 透がネットカフェ難民生活をしていた頃の知り合い。ネットカフェの店員だった。現在は司法書士をしている。
甲本正則 - 30歳。小さな輸入会社の社員。後頭部を2発撃たれ死亡。
福永真人 - 赤石が失踪前に連絡を取っていた男性。
相剋(そうこく)
杉並事件と呼ばれる通り魔事件で有力な目撃情報を提供した人物が行方不明になったという。依頼をしてきたのは捜査一課の管理官だった。筋違いだと依頼を一蹴しようとする高城を尻目に、阿比留は明神と法月に捜査を命じる。時を同じくして、春休み中の男子中学生が、友人の女の子が失踪したと失踪課を訪れる。通常、家族以外からの捜索願は受理できないが、少女に対する同級生らと家族の証言が食い違い、不審感を抱いた高城は醍醐と共に非公式に捜査を始める。
長岡 - 警視庁捜査一課管理官。
堀 - 杉並事件で有力な目撃情報を持っているらしい人物。
安岡卓美 - 杉並事件の被害者。32歳。
川村拓也 - 中学3年生。生活指導が厳しいことで有名な私立中学に通う。希が失踪したと相談に来る。
里田希 - 拓也の友人。ずば抜けて優秀だった。友人らは「家出をするような子ではない」と言い、父親は「家出を繰り返していた」と言う。
里田直紀 - 希の父親。デジタルプラスワン社長。平日は会社に泊まり込み、ほとんど帰宅しない。
里田愛華 - 希の母親。何事も夫に伺いを立てる気弱な性格。
塩田龍二 - 指定暴力団「京三連合」の若頭。かつて襲撃され入院していた時に、所轄の刑事課にいた高城と知り合い、気に入ってしまう。杉並事件に関して、高城に「SI」というヒントを与える。
黒田博史 - 希が憧れていた1年上の先輩。陸上部のホープ。
邂逅(かいこう)
大学理事長を務める息子が帰って来ないと母親が相談に訪れる。翌日とりあえず捜査を始めるが、依頼してきた母親の態度が一転して非協力的になり、大学関係者も「何も言うことはない」の一点張り。母親は遂には、「これ以上捜さなくていい」と捜索願を取り下げてしまう。一方、仙台で発見された女性の遺体。それは、失踪課に家族から捜索願が出ていた女子大学職員で、法月が体にむち打つように調べていた事件だった。状況から自殺と判断されるが、後日、捜査二課の管理官がこの事件について聞いてくる。この事件には何か別の側面があるのか、2つの事件に関係はあるのか、法月が必死になる理由とは……。
藤井碧 - 港区にある森野女子短大の総務部長。40歳。実家のある仙台で遺体で発見される。
鈴原香奈枝 - 碧の妹。既婚者、仙台在住。姉と連絡が取れないと失踪課を訪れる。
占部俊光 - 学校法人港学園理事長。40歳。失踪人。いわゆるワンマンだったらしい。
占部佳奈子 - 俊光の母親。息子と連絡が付かないと失踪課を訪れる。高慢な話し方をする。
嶋田 - 港学園大学総務部長。
竹内 - 港学園大学常務理事。筋金入りの警察嫌い。
三浦尚志 - 港学園大学法学部教授。
三井 - 警視庁捜査二課管理官。藤井碧の件について失踪課に探りを入れる。
阪井康之 - 東日新聞のサツ回り。草食系のハンサムな顔立ち。六条と付き合っている?
漂泊(ひょうはく)
醍醐や明神と呑みに行き、久しぶりに気持ち良く酔った帰り道、高城の目の前で明神が爆風で吹き飛ばされる。ビル火災のバックドラフトに巻き込まれたのだ。鎮火後、火元のスナック「ブルー」から発見された二遺体に他殺の痕跡があることが判明。頭部に撲殺痕があるのは店のマスターだったが、背中に刺し傷のあるもう1人は身元不明。幸い明神の命に別状はなかったが、傷付いた仲間のため、高城は捜査に乗り出す。遺留品のネックレスから、遺体は捜索願が出ている作家の可能性が出てくるが、直前に不可解な行動を取っていることが判明し……。
藤島憲 - 失踪課に捜索願が出ていた人気ミステリー作家。自宅は契約解除され蛻の殻、預金口座や携帯電話など一切が解約されていた。
高嶋尚人 - スナック「ブルー」のマスター。撲殺痕があった。
高嶋健 - 尚人の弟。
饗庭紗江子 - 藤島憲の妹。横須賀在住。
井村 - 藤島の担当編集者。鳴沢了と接点がある。
花崎光春 - 藤島と親しくしていた作家仲間。主に時代小説を執筆する。
村上崇雄 - 藤島の高校時代の同級生。藤島と文学談義に花を咲かせ、最も親しくしていた。
井形はな - 北海道警から警視庁へ2年間研修に来ることになり、長野の下につく。バツイチ。
裂壊(れっかい)
半年に一度実施される課長査察の直前に、室長の阿比留が拳銃を所持したまま姿を消してしまう。査察までの限られた時間の中で内密に阿比留を捜索し始めた高城たちは、これまで本人が隠してきた阿比留の私生活に切り込んでいくことになる。一方、阿比留が姿を消した同日、失踪した女子大生の捜索を恋人が依頼に訪れる。本人の写真、家族、実家といった失踪者に関する情報がない中で法月、醍醐らは捜索を開始する。
鈴木美知 - 失踪した女子大生。なぜか恋人にも写真を撮られるのを嫌がり、家族や実家のことも話していなかった。
広瀬哲司 - 美知の恋人。失踪課に捜索依頼を届け出る。
鈴木孝弘 - 阿比留の夫。山梨県に在住している陶芸家。
尾花遼子 - 交通部交通規制課の管理官。阿比留とは同期で、今でも月に一回程度会うほど親しい。阿比留のプライベートを知っている人物。
光村弘道 - 刑事部のNO.2である参事官。高城の捜査一課時代の課長。高城にとって気の置けない相手であるが、頭の上がらない人間の一人。