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認知(にんち)とは、法概念としては嫡出でない子(非嫡出子)について、その父又は母が血縁上の親子関係の存在を認める旨の観念の表示をすることをいう。法律上、当然には親子関係が認められない場合について、親子関係を認める効果がある。
日本の民法の規定上は、父・母からのいずれによる認知も想定されているが、基本的は父子関係においてのみ問題となる[1]。これは、母子関係は原則として母の認知をまたず分娩の事実によって当然に発生するためである[2]。母の認知は懐胎・分娩の事実が立証不可能の場合に限定的に機能するにすぎない[3]。ただし、近時の人工生殖技術の進歩により代理母における母子関係などの新たな問題が生じており立法上の課題となっている[4]。
認知の立法主義認知の立法主義には意思主義(主観主義)と事実主義(客観主義)がある[5]。
意思主義(主観主義)
原則として非嫡子関係の発生には父の意思表示たる認知が必要で、それがない場合に父に対して意思表示を命じることができるとする法制
事実主義(客観主義)
認知は真実の親子関係について確定する手続であるとして必ずしも父の意思を問題としない法制
なお、日本の民法は両者が混在するとされる[5]。
認知の法的性質日本法における認知には任意認知と強制認知(裁判認知)とがあり、認知の法的性質については、任意認知は父が自らの子と承認する意思表示であり、強制認知は父の意思に反する場合にも裁判によって親子関係を確定するものであるとみる説と、任意認知は父による観念の通知で非嫡子父子関係を推定するにすぎず、強制認知によって非嫡子父子関係は確定するとみる説があり両者は対立する[6]。
任意認知届出又は遺言によってする認知を任意認知という。なお、認知者以外の者の嫡出推定が及ぶ子については、嫡出否認がなされないと認知することができない(離婚後300日問題など参照)。
任意認知の方式
届出による認知
認知は、戸籍法の定めるところにより届出によってすることができる(民法781条
第1項、方式につき戸籍法60条
、61条
)。この場合の法的性質は創設的届出である[7]。現実に親子として生活をしていても届出がなければ認知としての効力を生じない[8]。
遺言による認知
認知は遺言によってもすることができる(民法781条
第2項)。この場合、遺言の効力発生時に発生し、遺言執行者が届出をするため、その法的性質は報告的届出である