詩のエッダ
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古エッダ とは、17世紀に発見された北欧神話について語られた写本。9世紀から13世紀にかけて成立したとされている、古ノルド語で書かれた歌謡集(群)である。主に北欧神話や北欧英雄伝説について語っている。一般に「古エッダ」と呼ばれているものは発見された王の写本をその根底としている。

本来「エッダ」とは、スノッリ・ストゥルルソン著である『新エッダ』のことを指していたが、その中で言及されている古い詩の形式や、後に再発見されたそのような形式の詩を指す言葉としても用いられるようになったため、この2つを特に区別するために「古エッダ」と呼ばれるようになった。しかし現在ではエッダよりも後に編纂されたとされている。

『(新)エッダ』が「散文のエッダ」と呼ばれるのに対して、古エッダは「詩のエッダ」「韻文のエッダ」「歌謡エッダ」と呼ばれることもある。また下記の経緯により「セームンド(セームンドル、サイムンドル)のエッダ」(Samundaredda) と呼ばれていたこともある。
目次

1 王の写本

2 エッダ詩

3 小エッダ

4 古エッダの一覧

4.1 神話詩

4.2 英雄詩

4.3 小エッダ

4.3.1 神話詩

4.3.2 英雄詩



5 刊本

5.1 日本語訳

5.2 原文

5.3 原文・英語対訳

5.4 英語訳


6 脚注

6.1 注釈

6.2 題

6.3 出典


7 参考文献

8 関連項目

9 外部リンク

王の写本 王の写本の発見者ブリュニョールヴル・スヴェインスソン。

現存する最古の古エッダの写本は、1643年アイスランドスカールホルト司教ブリュニョールヴル・スヴェインスソン (Brynjolfur Sveinsson) によって発見されたものである。この写本は1662年に彼により時のデンマーク王に贈られ、コペンハーゲンデンマーク王立図書館 (Danish Royal Library) に所蔵されたため、「王の写本」と呼ばれている。写本は1971年にアイスランドへ返還された。

この王の写本には、スノッリの『エッダ』に引用という形で残されていた詩や、北欧神話を物語る詩が数多く含まれており、スノッリが自身の『エッダ』を著す際にその元とした本であろうと考えられ、「古エッダ」と呼ばれるようになった。しかし現在では、実際に成立したのは『エッダ』より遅く、1270年頃に編纂されたものではないかと考えられている。

古エッダは、ブリュニョールヴルがこれを12世紀の僧セームンドル・シグフースソン (Samundr frodi) (博識なセームンドル)の作だと考えていたことに倣い、また「スノッリのエッダ」に対応して、「セームンドルのエッダ」と呼ばれていたこともあった。しかし、このセームンドルが「古エッダ」の作者であるという説は、現在では否定されている[1]

スウェーデンの学者グスタヴ・リンドブラド (Gustav Lindblad) は、この王の写本収録のエッダ詩が実は注意深く配列されているものであることを指摘し、また各詩の導入部に置かれている散文は王の写本の編者が詩の内容に注意を払っていたことを示唆し、収録されている詩群は1200年頃から集められ始められたのではないかという仮説を唱えた[2]
エッダ詩

古エッダに収録されているような形式の詩をエッダ詩(古ノルド語:Eddukvadi)という。エッダ詩では通常古譚律(fornyrdislag フォルニュルジスラグ、古韻律、語り韻律)と歌謡律(ljodahattr リョーザハーットル、唱え韻律)が用いられ、また稀に談話律(malahattr マーラハーットル)が用いられる。古韻律では詩は8行(2つの短行が4組)からなり、各組の2短行はそれぞれ頭韻で結ばれる。また各行は4か5の音節を持ち、そのうち2音節に強勢が置かれる。歌謡律では詩は6行(古韻律の2組目と4組目がそれぞれ1つの短行に変わる)からなり、同じく頭韻が置かれる。

ケニングも用いられるが、通常スカルド詩ほど多くは用いられず、また複雑でもない。スカルド詩とは対照的に、エッダ詩はほとんどが作者不詳のものである。単に古代北欧の詩のうちスカルド詩ではないものを総称してエッダ詩と呼んでいることもある。
小エッダ

AM 748 I 4toフラート島本など、王の写本以外の写本にのみ残されていたエッダ詩(『バルドルの夢』『リーグルの歌』など)を、編者によっては古エッダの刊本に含めることがある。これらのエッダ詩は「小エッダ」(Edda Minora エッダ・ミノラ)と呼ばれている[3]。同様に、『ヘルヴォルとヘイズレク王のサガ』『勇士殺しのアースムンドのサガ』などのサガ中に挿入・引用されているエッダ風の詩(『フロズルの歌(フン戦争の歌)』『ヒルディブランドルの挽歌』など)もまた、古エッダの刊本に含まれることがあり、その代表例がアンドレアス・ホイスラー (Andreas Heusler)・ヴィルヘルム・ラーニシュ (Wilhelm Ranisch) 編『小エッダ』(Eddica minora, 1903年)である[4]ヤン・デ・フリース(1934年)などのように、これらを「後世の模倣」として退ける立場もある[3]
古エッダの一覧

エッダ詩は主に神話詩 (Godakvadi) と英雄詩 (Hetjukvadi) に分別され、さらに王の写本収録の英雄詩はヘルギに関するものとニヴルング(ニーベルンゲン伝説)に関するものに分けられることもある。
神話詩

巫女の予言[題 1][題 2][題 3]』(V?luspa, V?lspa, V?lospa, Voluspa) - 『ヴォルスパー』『ヴェルスパー』とも。

高き者の言葉[題 2]』(Havamal) - 『オーディンの箴言[題 1]』『オーディンの訓言[題 3]』『ハーヴァマール』とも。

ヴァフスルーズニルの言葉[題 2]』(Vaftrudnismal) - 『ヴァフズルーズニルの歌[題 1]』とも。

グリームニルの言葉[題 2]』(Grimnismal) - 『グリームニルの歌[題 1]』とも。

スキールニルの言葉[題 2]』(Skirnismal) - 『スキールニルの歌[題 3]』『スキールニルの旅[題 1]』とも。

『ハールバルズルの歌[題 2]』(Harbardsljod) - 『ハールバルズの歌[題 1]』とも。


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