診療録
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診療録(しんりょうろく)、カルテ(: Karte)[1]とは、医療に関してその診療経過等を記録したものである。

診療録は狭義には医師が記入するもののみを指す[1]。広義の診療録には手術記録・検査記録・看護記録等を含め診療に関する記録の総称をいう[1]。全体的な概念としては診療情報、または医療情報とも言われる。

なお、この項目では診療録に関することのみではなく診療記録や診療情報についても記述する。目次

1 日本における診療録

1.1 名称と記入

1.2 記録の内容

1.3 法令

1.3.1 医師法・歯科医師法

1.3.2 医療法

1.3.3 個人情報保護法

1.3.4 その他の法令



2 アメリカにおける診療録

3 診療録のシステム化

3.1 電子カルテ化

3.2 問題指向型診療録


4 獣医師の診療録

5 脚注

6 関連項目

7 外部リンク

日本における診療録

この節は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。

名称と記入

日本で一般に知られているカルテはドイツ語に由来する。これは明治時代の日本が主にドイツから医学を学んだことの影響である。明治以前の日本で、診療録としての体を成している書物としては、言継卿記が上げられる。

かつての日本ではドイツ語で書かれていた[2]が現在は英語、もしくは日本語に英単語を混在させたものが多い[3]
記録の内容

医師法施行規則には、診療録には以下の4つを最低限記録しなければならないと定められている。
診療を受けた者の
住所氏名性別及び年齢

病名及び主要症状

治療方法(処方及び処置)

診療の年月日

しかし一般的に、診療録に記載される内容は以下のようなものである。不必要な項目については適宜記載されないこともあるが、システマティックに患者の状況を知って適切な医療を行うため、以下の項目はすべて重要である。

患者の基本情報 :氏名・年齢・性別・住所・保険証番号等

主訴 (CC; Chief Complaint) :胸痛・発熱といった、患者が来院するきっかけとなった主な訴えであり、診療はここから始まる。

現病歴(現症)(PI; Present Illnessまたは O.C; onset and course) :いつから、どのように主訴が始まり、どのような経過をとったのか、前医ではどのような治療を受けたのか、どのような症状が出たのか。

既往歴 (PH; Past History) :過去に患者がかかった病気。現在の病状の把握や、治療の際の方針に大きく影響する。

家族歴 (FH; Family History) :親族や同居者の病気・健康状態。遺伝性疾患や感染症等で家族歴が重要となるだけではなく、患者背景を知り適切な治療方針を立てる上での参考になる。

社会歴 (SH; Social History) :出身地・職業・日常の生活状況・趣味。これらから診断が絞られることは珍しくない。

嗜好 :喫煙飲酒

アレルギー :花粉症食物のほか、アレルギーを起こす薬剤について

現症・身体所見 :視診・聴診・触診による所見、反射・精神状態等

検査 :血液検査・画像検査等各種の検査結果や予約の状況

入院後経過・看護記録

治療方針 :治療の目的について

法令

日本の法律では「診療録」と「その他の診療に関する諸記録」は便宜上別物として扱われている。

日本医師会が2003年に作成した「診療情報の提供に関する指針」では、診療録を「医師法第24条所定の文書」、診療記録を「診療録、手術記録、麻酔記録、各種検査記録、検査成績表、エックス線写真、助産録、看護記録、その他、診療の過程で患者の身体状況、病状等について作成、記録された書面、画像等の一切」と定義している[1]
医師法・歯科医師法

医師法第24条1項に、医師患者を診療したら遅滞なく「経過を記録すること」が義務づけられている。これを「診療録」としている。また、2項で記録後最低5年間は保存することが義務づけられている(医療機関内で診療したものについては、その医療機関の義務である)。

診療録は単なるメモにとどまらず、医療過誤においても証拠としての重要性は非常に大きく、医療訴訟でたとえ必要な処置を行っていたとしてもカルテに記載がない場合、行ったとの主張は認められない可能性もある。歯科医師法も医師法と同様の規定がなされている。
医療法

医療法第5条では、都道府県知事と一部市長区長は、必要な場合に医師歯科医師助産師に対し診療録、助産録等の提出を命ずることができる。

第21条において病院、第22条において地域医療支援病院、第23条において特定機能病院は、それぞれ診療に関する諸記録を備えておかなければならないとされている。また25条では診療所助産所病院に対して都道府県知事と一部市長、区長は、また特定機能病院に対して厚生労働大臣は、それぞれ必要な場合に診療録その他を検査することができる。


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