計量学
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計量学(けいりょうがく、: metrology)とは、計量測定計測度量衡を研究対象とする学術分野。『国際計量用語集』(JCGM 200:2008) によると、「計量学は測定対象の分野や測定の不確かさを問わず、測定という行為のあらゆる理論的および実践的観点を含む」とされる[1]日本語では測定学(そくていがく)、計測学(けいそくがく)、度量衡学(どりょうこうがく)とも呼ばれる。用語については後述

本項では、学術の一分野として、また測定に係る営みとしての計量学について解説する。行為としての測定そのものに関する詳細な解説は「測定」の項目を参照のこと。フォード・マドックス・ブラウンの連作『マンチェスターの壁画(英語版)』(1879年?1893年制作)より、「度量衡に関する布告、紀元1556年」。マンチェスター市民に対し、各自が所持する度量衡を持参して測定標準と較正することを命じる勅令が出た時の場景を描く。測定系と測定標準の関連付けは計量学の重要な要素であり、現代ではトレーサビリティの確保という枠組みのもとで推進されている。
用語

英単語としての metrology は 古代ギリシア語の μ?τρον(metron, 秤、物差し[2])と λ?γο?(logos, 言葉、論理[3])を語源とする。Metrology は時に測定行為自体を指すこともある。

一方、測定にかかわる技術は各分野でそれぞれ独自に発達したこともあって[4]日本語の用語は統一されておらず、英語との対応関係も一対一となっていない[5]。Metrology に対応する訳語としては「計量学[6]」、「測定学[7]」、「計測学[8]」、「度量衡学[8]」など多岐にわたる。本項では産業技術総合研究所計量標準総合センターの計量用語集[9]に倣い「計量学」を用いている。
測定の営みと計量学の3種の活動トレーサビリティチェーン[10][11]

測定とは、あるを決められた一定の「基準」と比較し、数値または符号で表すことである[12]。例えば日常的に長さの測定を行う時は定規巻尺を用い、機械工場などでより精密な測定が必要となる時はマイクロメータを用いて、長さを数値として得ることができる。このような測定のための計器や他の装置との組合せを測定系(measuring system)と呼ぶ[13]

各測定系の示す値は可能な限り一致している必要があるため、基準として「ある単位又はある量の値を定義、実現、保存又は再現することを意図した計器、実量器、標準物質、測定系[14]」が必要となる。これを標準(standard)と呼ぶ。標準によって実現されるべき値は国際的な合意により定まっているが、実用上は、国際標準と比較して値が決定された国家標準、国家標準と比較された参照標準、さらに実用標準といった連鎖で、各標準が用意されている(それぞれ英語では international standard, national standard, reference standard, working standard)[15]古代エジプトのキュビット標準

この過程を上流から眺め直すと、計量学を主に3種の活動に分類することができる[16][17]
計量単位の定義(definition)
例えば、1メートルを「北極点と赤道の距離の1/10000000」と定義すること。1983年には不確実性を低減するために定義が改められ、「真空中で1の1/299792458の時間にが進む行程の長さ」とされた[18]。その後も国際単位系 (SI) には他の数々の欠点が指摘され、2019年に行われた定義の改訂では計量学が重要な役割を果たした。
計量単位の現示(realisation)
例えば、上記のメートルの定義を実際の長さとして具現化すること。かつてはメートル原器の製作により行われた。現在はヨウ素で安定化されたヘリウムネオンレーザーを用いる[18]
トレーサビリティ(traceability)の確立
測定値および測定の正確さを決定して文書化し、その知識を普及すること[16]。また、不確かさがすべて表記された切れ目のない比較の連鎖によって、単位の定義から各種標準、そして測定系を全て関連付けること。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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