触媒三残基(しょくばいさんざんき、英: Catalytic triad)とは、いくつかの酵素の活性部位に見られる3つの配位アミノ酸の一式である[1][2]。触媒三残基は、ヒドロラーゼおよびトランスフェラーゼ酵素(例えば、プロテアーゼ、アミダーゼ、エステラーゼ、アシルラーゼ、リパーゼ、およびβ-ラクタマーゼ)で最も一般的に見られる。酸-塩基-求核剤 三残基は、共有結合触媒のための求核性残基を生成するための一般的なモチーフである。この残基は電荷リレーネットワークを形成して求核剤を分極および活性化し、基質を攻撃して共有結合中間体を形成し、加水分解されて生成物(英語版)を放出し、遊離酵素を再生する。求核剤は、最も一般的にはセリンやシステインアミノ酸であるが、時にはスレオニンまたはセレノシステインも含まれている。酵素の三次元構造は、配列上(一次構造)では離れていても、三残基が正確な方向にまとまっていることを示している[3]。
機能(および三残基の求核剤)の分岐進化(英語版)と同様に、触媒三残基は収斂進化の最良の例のいくつかを示している。触媒作用に対する化学的制約により、同じ触媒解明が、少なくとも23の別々のスーパーファミリーで独立して展開している。その作用機序は、生化学的に最もよく研究されているものの一つである[4][5]。 トリプシンとキモトリプシンは、1930年代に初めて精製された酵素である[6]。1950年代には、トリプシンとキモトリプシンのそれぞれのセリンが触媒的求核剤として同定された(ジイソプロピルフルオロリン酸修飾)[7]。キモトリプシンの構造は、1960年代にX線結晶構造解析により解明され、活性部位に触媒三残基が配向していることが明らかになった[8]。他のプロテアーゼの配列が決定され、整理されて、現在はS1ファミリーと呼ばれる関連するプロテアーゼのファミリーが明らかにされた[9][10][11]。同時に、進化的に無関係なパパインおよびサブチリシンプロテアーゼの構造は類似の三残基を含んでいることが見いだされた。他の三残基メンバーによる求核剤の活性化のための「電荷リレー」メカニズムは、1960年代後半に提案された[12]。1970年代から80年代にかけて、X線結晶構造解析によってより多くのプロテアーゼの構造が解明され、(TEVプロテアーゼといった)相同な三残基および類似した(パパインといった)三残基が発見された[13][14][15]。1990年代から2000年代にかけて、プロテアーゼを構造的に関連
歴史
それらの最初の発見以来、酵素の正確な触媒機構について詳細な研究が増えた。1990年代と2000年代には、低障壁水素結合が触媒作用に寄与しているのか[18][19][20]、それとも通常の水素結合で機構を説明するのに十分なのか[21]、ということが特に議論された[22]。触媒三残基が使用する電荷リレー型共有結合触媒に関する膨大な研究の結果、生化学の中で最も特徴的な機構が解明された[4][5][21]。