解離_(心理学)
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Dissociation
概要
診療科精神医学
分類および外部参照情報
ICD-10F44
ICD-9-CM300.12
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解離(かいり、英語: Dissociation)とは、無意識的防衛機制の一つであり、ある一連の心理的もしくは行動的過程を、個人のそれ以外の精神活動から隔離してしまう事である[1]。抽象的に表現するならば、感覚、知覚、記憶、思考、意図といった個々の体験の要素が「私の体験」「私の人生」として通常は統合されているはずのもののほつれ、統合性の喪失ということになる[2]

その中には誰にでも普通にある正常な範囲のものから、障害として扱われる段階までを含んだ幅広い解釈があり、解離を主として著しい苦痛を伴うものは解離性障害に分類されるが、こうした症状は他の障害や、身体疾患でも生じる。
歴史
ジャネからサリヴァンへ

「解離」という概念の命名は、フランスの精神科医ピエール・ジャネであると一般にいわれる[3]。ジャネは1889年の著書『心理自動症』の中で「意識の解離」を論じ、「ある種の心理現象が特殊な一群をなして忘れさられるかのような状態」を「解離による下意識」と呼び、その結果生じる諸症状がヒステリーであるとした。 そして現在の解離性同一性障害と全く同じ意味で「継続的複数存在」を論じ、その心理規制を「心理的解離(: desagregation psychologique)」と呼ぶ[4]。ジャネは「dissociation」という用語も使っているが、それは「諸機能の解離(分離)」というような一般用語として用いており、心理機制としての「desagregation」と区別している。特に「記憶の解離による治療」という言い回しでの「解離(dissociation)」は「解離性障害(Dissociative Disorder)」の「解離」ではなく、「記憶から分離させる」つまり「そんなこと忘れさせる」の意味である[5]。英語圏の精神医学用語として「dissociation」が最初に用いられたのは、1905年アメリカ合衆国のモールトン・プリンスが著した『人格の解離(The dissociation of a personality[注 1])』である。これを発展させてハリー・スタック・サリヴァンは、(同性愛忌避や教会権力などの)文化的圧力から解離させられた人格部分が、「解離されたシステム(dissociated system)」として幻聴や遁走などの行動を誘導すると考えた[6]。サリヴァンの強い影響のもと、第二次世界大戦後の解離研究は、社会心理学パーソナリティ障害研究を総合する形で、アメリカを中心に発展した[7]
解離・抑圧・スプリッティング

同じ頃にフロイト (Freud,S.) は抑圧という概念を用いて精神分析を形づくっていくが、ヒルガード (Hilgard,E.R.) は1977年の論文で、フロイトの抑圧という概念は水平の壁、あるいは蓋と表現している[8][9]。この場合、無意識意識と異なるためその水面下に沈んだ記憶は想起不可能である。それに対して解離の場合は相互に連絡はとれないが、それぞれの意識状態において異なった意識・無意識がある。そこから解離は水平の壁(蓋)ではなくて、垂直の壁であるというのである。ただし、いずれにしても、ある一定の体験の記憶とそれに関わる思考が、通常の意識から切り離されるという点では同じである[10]

精神分析における防衛機制、で解離のように垂直の壁であるものにスプリッティングがある。メラニー・クラインは、赤子はよく出る乳とよくでない乳を同じものとして認識できないとし、成長とともに同じものとの認識ができるようになるのだが、スプリッティングはその成長と認識が疎外された状態と説明した。それとの差としては、スプリッティングは対象を分けるに対し、解離は自分が分かれるという違いがある。
正常な範囲から障害の段階まで


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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