解離性障害
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解離性障害
概要
診療科精神医学, 臨床心理学
分類および外部参照情報
ICD-10F44
ICD-9-CM300.12- ⇒300.14
MeSHD004213
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解離性障害(かいりせいしょうがい、: dissociative disorders; DD)とは、自分が自分であるという感覚が失われている状態が主となる個々の精神障害のためのカテゴリ(分類)である。『精神障害の診断と統計マニュアル』第5版 (DSM-5、アメリカ精神医学会、2013年)では、解離症群と解離性障害が併記される[1]解離性同一性障害、解離性健忘、離人症性障害(離人感・現実感消失障害)などに分類され、要因としては心的外傷体験、幼少期の主たる養育者との愛着の問題、当人の解離の素質などがある。解離性障害は解離症状を主とする病気で、患者は社会的・職業的に支障を来し、対人関係にも困難を抱える[2]。具体的な治療法については、「解離性障害#治療」を参照。

解離性健忘では、一般的な出来事や社会常識などの記憶は保たれているにもかかわらず、自伝的な(個人的な)記憶が欠落する病。離人症性障害は自分を外から見ているような離人感や現実感消失感があり、それが持続的あるいは反復的に現わるために社会的・職業的に支障を来す病である。解離性同一性障害では一人の人間の中に複数の人格(パーソナリティ)が存在するような状態が見出される病[2]。これらの症状は他の精神障害や身体疾患でも見られるため、鑑別は必要とされる。解離性障害の人は、防衛機制解離を無意識的に使用しているとされる。

1994年のDSM-IVと並ぶ診断基準、1990年の世界保健機関 (WHO) のICD-10において、解離性障害に該当するものは「解離性[転換性]障害」であるが、名称にも現れているように、含まれる範囲は異なる。.mw-parser-output .toclimit-2 .toclevel-1 ul,.mw-parser-output .toclimit-3 .toclevel-2 ul,.mw-parser-output .toclimit-4 .toclevel-3 ul,.mw-parser-output .toclimit-5 .toclevel-4 ul,.mw-parser-output .toclimit-6 .toclevel-5 ul,.mw-parser-output .toclimit-7 .toclevel-6 ul{display:none}
定義「精神障害#定義」も参照

精神医学的障害の一種である。
分類と症状

解離には、日常的に起こりうる正常なものから、障害とみなされるまで範囲は広い。不幸に見舞われた人が目眩を起こし気を失ったりするが[3]、これは正常な範囲での「解離」である。

それぞれの人にとって大きな精神的苦痛、限界を超える苦痛を感じた時、感情を体外離脱体験や記憶喪失という形で切り離し、自分の心を守ろうとする。障害を満たすのは重症の場合であり、つまり、著しく苦痛であったり社会的機能の障害をもたらしている場合である。解離性障害に分類される個々の障害は、DSM-IVやDSM-5では以下が挙げられる。

解離性健忘(Dissociative amnesia) - ストレスに満ちた出来事の記憶が欠落している。

解離性とん走 DSM-5では上記に統合(Dissociative fugue)


解離性同一性障害(Dissociative identity disorder, DID) - 人格が複数ある。DSM-IVの編纂委員長アレン・フランセスは、暗示にかかりやすいものに人格の分裂を助長する治療を行い医原性だとする[4]

離人症性障害 (DSM-IV)、離人感・現実感消失障害 (DSM-5、または症)(原語は共にDepersonalization disorder) - 自分を外から見ているような、夢を見ているような感覚[5]

特定不能の解離性障害 - トランス状態等でも著しい苦痛が生じればこれが診断されうる[5]

離人症性障害/現実感喪失「離人症」も参照

離人感とは、自分を外から眺めているような、奇妙な離脱感であり、また現実喪失感とは、現実が夢を見ているように感じられることで、多くは成長期に普通に感じられる正常な出来事であり、日常生活に重大な影響はない[5]。後述するホームズ (Holmes, E.A.)らは解離性障害を「離隔」と「区画化」の 2つに分けているが、そこでの「離隔」が、この離人症と現実感喪失である。

DSM-IV-TR での離人症性障害の診断基準を要約すると次のようになる。

自分の精神過程または身体から遊離して、あたかも自分が外部の傍観者であるかのように(例えば夢の中であるかのように)感じることが持続的または反復的である。

離人体験の間も、現実検討能力は正常に保たれている。

それにより本人が著しい苦痛を感じ、または社会的・職業的な領域で支障をきたしている。

薬物や前述の精神疾患その他の生理学的作用によるものではない。

DSM-5の診断基準では、離人感あるいは現実喪失感となり、現実喪失感だけでも診断が可能となった。

診断には、他との鑑別が必要であり、他の精神障害はほぼすべてが離人感や現実感喪失を起こしうるし、薬物が原因となって生じる可能性は高く、ほかに頭部外傷なども原因となりやすい[5]

ICD-10では、「他の神経症性障害」 (F48) の中に「離人・現実感喪失症候群」 (F48.1) として分類されている。DSM-IV-TR での定義とはニュアンスが異なっており、DSM-IV-TRの離人症性障害には、解離特有の離人症の構造がある[6]
解離性健忘/解離性遁走

普通の物忘れでは説明できないほどに、ストレスに満ちた出来事の記憶に空白があったり、すっかり思い出せない[7]。DSM-IV-TR では解離性健忘 (300.12) と解離性とん走 (300.13) は分かれていたが、2013年のDSM-5では解離性健忘に統合された。1990年代には抑圧された記憶が回復されたとする人々が多くあらわれたが、時には宇宙人に強姦されたなど信じがたいものも含まれ、また訴訟や逮捕が行われ過剰な診断の流行によって悲惨な結果が生じた[7]

一般に解離性健忘は過去の一時期の記憶を失っていることが多いが、全生活史についての記憶を失うこともある。解離性遁走(フーグ)では、全生活史についての記憶を失ったままいわゆる「蒸発」してしまい、全く別の場所で全く別の人間として生活を始めているところを発見されることもある。

DSMでの診断基準には上記の他に以下の2つの条件がある。

それにより本人が著しい苦痛を感じ、または社会的・職業的な領域で支障をきたしている。

薬物とか別の精神疾患、例えば心的外傷後ストレス障害急性ストレス障害、または解離性同一性障害身体化障害ではなく、その他の生理学的作用によるものではない。

診断には、他との鑑別が必要であり、急性ストレス障害ではストレスに満ちた出来事だけを忘れ、薬物中毒が原因となる可能性はありふれており、ほかに頭部外傷なども原因となりやすい[7]。とん走は治療者によっては見たことがないというほどまれである[7]。アルコールは一時的な健忘を引き起こす。

はっきりと他と区別される別人格も確認されれば解離性同一性障害となる。
解離性同一性障害詳細は「解離性同一性障害」を参照

明確に区別できる複数の人格が同一人に存在し、それらの複数の人格が交代で本人の行動を支配する。記憶については過去の記憶でも最近の記憶でも空白がある。その記憶の空白の大きさは、人格によっても異なる場合もある。本人にとっては忘れたい程の辛い過去や、人格が解離するに至った要因がある時期の記憶であるケースが多いが、その信憑性には議論がある。

臨床例では日常的に記憶喪失が顕著な者よりも、同一性の混乱を自覚する者が数的には多くを占める。後者の場合、日常的な記憶には問題がないため、おかしいとは思いながらも長い間、それが障害であると気づかなかったという者も少なくはない。他人格には本人の渇望する、自由奔放さや強さ、甘えられる存在を代理する者が主であることが特徴で、そのために幼児や異性の他人格等もよくみうけられる。

DSM-IV-TRでは「重要な個人的情報の想起不能」が要件であるので、それを厳密に適用すれば、上記の後者の例の多くは「特定不能の解離性障害」に分類される。
特定不能の解離性障害

解離性障害ではあるが、解離性健忘、離人症性障害、解離性同一性障害などの基準を満たさない症例のための分類である。著しい苦痛が生じればこれが診断されうる[5]。DSM-5では、他の特定される解離性障害(以下で「他」とする)と、特定不能の解離性障害が分かれ、特定不能の方には細かい解説はない。以下、DSM-IVにおける例における数字番号である。


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