この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。
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この項目では、契約の解除について説明しています。
契約の解除のうち特に携帯電話における解約については「解約 (携帯電話)」をご覧ください。
宗教行事における解除(げじょ)については「解除 (行事)」をご覧ください。
ウィキペディアにおける投稿ブロックの解除についてはWikipedia:投稿ブロック解除依頼作成の手引きを、保護の解除についてはWikipedia:保護解除依頼をご覧ください。
解除(かいじょ)とは、広義には、当事者間に有効に締結された契約関係を終了させること。この広義の解除は、講学上、さらに解除(狭義の解除)、解約告知、解除条件、失権約款、解除契約などに細分される。
このうち狭義の解除は、民法540条以下に規定される一方当事者の意思表示によって有効に締結された契約を解消し、契約によって生じていた債権債務関係を契約成立前の状態(原状)に回復する制度を意味する(ただし、解除の効果については直接効果説と間接効果説があり考え方に相違がある)。通常、講学上において「解除」といえばこの狭義の解除を指す。
以下、この項目で単に「解除」と言う場合には狭義の解除を指すこととし、狭義の解除、解除類似の制度の順に述べる。 狭義の解除は、一定の事由の発生によって契約当事者の一方に解除権が発生し、その者が解除権を行使することで、契約が遡及的に消滅し、契約当事者双方に原状回復義務を発生させる制度である。 解除をなし得る権利を解除権といい、解除は解除権の発生原因により、法律の規定によって解除権が発生する法定解除と契約の内容によって解除権が発生する約定解除の2種類分けられる(540条 解除のうち、解除権の発生根拠が法定の事由であるものを法定解除という。法定の事由とは(1)債務不履行の場合及び(2)各契約類型が特別に定めた解除権の発生事由である。これによって発生する解除権を法定解除権と呼ぶ。 解除のうち、解除権の発生根拠が予め一定の場合に解除権が発生させることを内容とする当事者間の約定(主に契約に付随してなす特約)であるもの。これによって発生した解除権を約定解除権と呼ぶ。手付解除(557条 契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする(相手方のある単独行為、540条
民法は、以下で条数のみ記載する。
目次
1 狭義の解除
1.1 概要
1.2 解除権の発生
1.2.1 法定解除
1.2.2 約定解除
1.3 解除権の行使
1.4 解除の効果(解除権行使の効果)
1.5 解除権の消滅
2 解除類似の制度
2.1 解約(解約告知、告知)
2.2 解除条件
2.3 失権約款
2.4 合意解除(解除契約、反対契約)
3 脚注
4 関連項目
狭義の解除
概要
解除権の発生
法定解除
債務不履行によって発生する場合
履行遅滞(541条
履行不能(543条)債務者の責に帰すべき事由によって、売買の目的物であった建物が焼失するなど、履行が不能になったときは、債権者に解除権が発生する。履行遅滞のケースと異なり、催告は不要である。
不完全履行個別具体的に決定される。
付随的債務の債務不履行本体債務ではなく、付随的債務について債務不履行があった場合に、本体契約を解除できるかは解釈上の問題がある。付随的債務の債務不履行が契約目的の達成に重大な影響を与えるものであるときは、解除できるとした判例がある[1]。
各契約類型の特則によって発生する場合
停止条件付双務契約における危険負担に基づく債権者の解除権(535条3項)
手付解除(557条)
他人物売買における売主の担保責任に基づく買主の解除権(561条)
他人物売買における善意の売主の解除権(562条)
権利の一部が他人に属する場合における売主の担保責任に基づく善意の買主の解除権(残存部分だけなら買受けなかったであろうとき)(563条2項,564条)
数量不足又は一部滅失の場合における売主の担保責任に基づく善意の買主の解除権(残存部分だけなら買受けなかったであろうとき)(565条)
用益権の有無に関する売主の担保責任に基づく買主の解除権(566条)
担保権がある場合における売主の担保責任に基づく買主の解除権(567条1項)
競売における担保責任に基づく買受人の債務者に対する解除権(568条1項)
売主の瑕疵担保責任(570条)
売主の買戻しによる解除(579条)
使用貸借の借主の目的物の用法・性質に反した使用・収益による貸主の解除権(594条)
賃借権の無断譲渡・賃借物の無断転貸による賃貸人の解除権(612条2項)
賃貸人の担保責任による解除
賃借人の意思に反する保存行為による解除
賃借物の減収による解除
賃借物の無承諾転貸・賃借権の無承諾譲渡による解除
請負人の担保責任による解除
約定解除
解除権の行使
解除権は契約当事者の地位に伴うものである(解除権の随伴性の有無につき大判大14・12・15民集四ノ七一〇)。解除権を行使する者は契約当事者でなければならず、その地位の移転を受けなければ、代金債権の譲受人は解除権を行使することはできない。また、契約が解除されると、それにより発生した債権も遡及消滅することから、その債権を譲渡しているときは、解除権の行使に、債権の譲受人の同意が必要とされる(大判昭3・2・28)。
解除権は不可分である(解除権の不可分性)。当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から又はその全員に対してのみすることができる(544条1項)。また、解除権が当事者のうちの一人について消滅したときは、他の者についても消滅する(544条2項)。ただし、共有物を目的とする賃貸借契約の解除については各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決することができる(252条本文。544条解説参照)。
原則として、他の単独行為同様、条件・期限をつけることはできないが、「相当期間内に履行しなければ」解除するという条件を含む催告は、相当期間を定めた催告と同じ意味であるので、認められる(大審院判決明治43年12月9日)。
なお、解除の意思表示は、撤回することができない(540条2項)。 解除の効果は545条 時効消滅や解除権の放棄等一般的な原因のほか、以下の特有の原因によって、解除権は消滅する。なお、時効期間は10年である(167条
解除の効果(解除権行使の効果)
当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う(545条1項本文)。この場合、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない(545条2項)。
直接効果説(判例・通説)によると、解除権が行使されると契約が遡及的に消滅し、その結果、未履行債務については法的拘束から解放され(契約の遡及消滅につき大判大9・4・7)、既履行債務については545条1項による原状回復義務が発生すると考える。
間接効果説によると、既履行債務の復帰を内容とする新たな物権変動が生じると捉える。
解除は第三者の権利を害することはできない(545条1項但書)。
解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない(545条3項)。
直接効果説(判例・通説)によると、契約は当初から存在しなかったとするため、債務不履行責任も生じないが、解除権者を保護するため特に3項で損害賠償責任を認めたと考える。
解除権の消滅
催告による解除権の消滅解除権の行使について期間の定めがないときは、相手方は、解除権を有する者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に解除をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができ、その期間内に解除の通知を受けないときは、解除権は、消滅する(547条)。
解除権者の行為等による解除権の消滅解除権を有する者が自己の行為若しくは過失によって契約の目的物を著しく損傷し、若しくは返還することができなくなったとき、又は加工若しくは改造によってこれを他の種類の物に変えたときは、解除権は、消滅する(548条1項)。ただし、契約の目的物が解除権を有する者の行為又は過失によらないで滅失し、又は損傷したときは、解除権は、消滅しない(548条2項)。
当事者の一方が数人ある場合の解除権の不可分性による消滅(544条2項)については#解除権の行使参照。 解除に類する用語として「解約」(解約告知、告知ともいう)がある。これは賃貸借(620条
解除類似の制度
解約(解約告知、告知)
解除条件詳細は「条件#停止条件と解除条件」を参照