観測天文学
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キットピーク国立天文台のメイオール望遠鏡

観測天文学(Observational Astronomy)は、理論天文学に対して、データの記録に関連する天文学の一分野である。望遠鏡やその他の機器を用いた天体の観測の実践である。

科学としての天文学は、遠い宇宙の性質の直接的な実験が不可能であることが、いくらか妨げになる。しかしこれは、膨大な量の恒星現象の観測結果があることで部分的に緩和される。これにより、観測データをグラフにプロットすることが可能となり、一般的な傾向が導かれる。変光星等の特定の現象の近くの例は、より遠い場所での現象の振る舞いを推測するのに用いられる。
望遠鏡詳細は「望遠鏡」を参照

ガリレオ・ガリレイは、空に望遠鏡を向け、観測結果を記録した最初の人物として知られている。それ以来、観測天文学は、望遠鏡の技術の発達により着実に進展してきた。

観測天文学の伝統的な分類は、観測に用いた電磁波周波数に依る。

光学天文学は、鏡、レンズ、固体検出器等を用いて近赤外線から近紫外線の波長の光を観測する天文学の一分野である。人間の眼で検出可能な400から700nmの波長を用いる可視光天文学は、この真ん中の領域に当たる。

赤外線天文学は、赤外線(ケイ素の固体検出器の検出限界である1μmを超える)放射の検出と分析を扱う。最も一般的な機器は反射望遠鏡であるが、大気からの熱放射が問題になる波長では宇宙望遠鏡も用いられる。

電波天文学は、mmから10mの波長の放射を検出する。受信機はラジオ放送に用いられるものと似ているが、遙かに感度が良い。電波望遠鏡も参照。

高エネルギー天文学には、X線天文学ガンマ線天文学紫外線天文学が含まれ、ニュートリノ宇宙線を観測する。

光学天文学や電波天文学は、その波長では大気は比較的透明であるため、地上の天文台で行われる。天文台は、地球の大気による吸収や歪みを最小限にするため、通常は標高の高い場所に設置される。赤外線領域の周波数は、水蒸気にかなり吸収されるため、赤外線天文台の多くは乾燥地や標高の高い場所、または宇宙に設置される。

X線天文学やガンマ線天文学、紫外線天文学、遠赤外線天文学に用いられる波長では、いくつかの波長の「窓」を除き、大気は不透明である。そのため、観測はバルーンを用いるか宇宙で行う必要がある。しかし、強力なガンマ線は、大規模な空気シャワーとして検出され、宇宙線の研究は天文学でも急速に発展する分野である。
光学望遠鏡詳細は「光学望遠鏡」を参照

観測天文学の歴史のほとんどにおいて、ほぼ全ての観測は光学望遠鏡を用いて可視光領域で行われた。地球の大気はこの波長では比較的透明であるが、望遠鏡による観測のほとんどは、シーイングの条件や大気の透明度に依存し、通常は夜間に限られる。シーイングの条件は、大気中の乱流や熱変動に依存する。雲や乱流の発生が多い地域では、観測の解像度が制限される。満月が反射光で空を輝かせるのと同様に、暗い天体の観測には妨げとなる。

観測の目的には、光学望遠鏡にとって最適な場所は間違いなく宇宙空間である。宇宙空間では、望遠鏡は大気の影響を受けることなく観測ができる。しかし、現在は軌道に望遠鏡を打ち上げるには多額の費用がかかるため、次善の場所として、曇りの日が少なく大気の状態が良い山頂に設置される。マウナケアラ・パルマの山頂はそのような条件を備え、また、数は少ないが内陸にもこのような場所はあり、チリにはチャナントール天文台パラナル天文台セロ・トロロ汎米天文台ラ・シヤ天文台等がある。これらの場所には、開発に数十億ドルも要するような強力な望遠鏡が集まっている。

夜空の暗さは、光学天文学にとって重要な要素である。街や人口の多い地域の拡大に伴い、夜の人工光の量は増えている。このような人工光は希薄な背景光となり、暗い天体の観測を非常に難しくする。アリゾナ州イギリスでは、このような光害の削減を訴えるキャンペーンが行われている。街灯に覆いをかぶせることは、地面に向かう光の量を増やすだけではなく、空に向かう光を減らす効果も持つ。

大気の効果は、望遠鏡の解像度を大きく低下させる。大気によるぼやけ効果の補正なしには、口径15から20p以上の望遠鏡は、可視光波長での理論的な解像度を達成できない。結果として、超大口径の望遠鏡を用いる一番の利点は、集光容量の増大により非常に暗い天体が観測できることである。しかし、補償光学スペックル・イメージング開口合成等の技術により、解像度の低下も克服され始めている。

天文学者は、天体を観測するための様々な観測機器を持っている。太陽や地球に比較的近い天体には、より遠い背景に対して、直接的で非常に正確な位置天文学を用いることができる。この手の初期の観測は、いくつかの惑星の非常に正確な軌道モデルを作るのに用いられ、またそれらの相対質量や重力による摂動を決定した。またそのような測定は、天王星海王星、そして間接的ではあるが冥王星の発見に寄与し、間違ってはいたが、水星の軌道の内側にバルカンが存在することを予測した。
その他の機器

可視光領域の他に、電磁波の別の領域から得られる情報も増えてきた。そのような測定の最初期のものは、太陽の熱的性質について行われ、日食の時にコロナからの放出の測定が行われた。

電波の発見に伴い、天文学の新しい分野として電波天文学が生まれた。長い波長の電波は、良い解像度の画像を得るためにより大きな集光アンテナを必要とし、後に高解像度の合成開口画像を得るための複アンテナ干渉計の開発に繋がった。マイクロ波受信機の開発は、ビッグバンに関係する宇宙マイクロ波背景放射の発見を導いた。

電波天文学は、地球の大きさよりも大きい干渉計を作るための電波天文衛星はるかの活用等でさらにその範囲を拡大した。しかし、別の目的への電波の利用の拡大により、恒星からの電波のシグナルは徐々に弱くなっており、将来の電波天文学は、月の裏のような電波から保護された場所で行われるようになるかもしれない。

20世紀末には、天文機器の技術が急速に発達した。


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