観測可能な宇宙
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近赤外の全天概観により、銀河系(天の川銀河)から遠く離れた銀河の分布が分かる。この画像は、150万以上の銀河を掲載している2MASS Extended Source Catalog (XSC) と、銀河系内の5億の星を掲載しているPoint Source Catalog (PSC) から作成したもの。銀河にはUGC、CfA、Tully NBGC、LCRS、2dF、6dFGS、SDSSの調査(やNASA銀河系外データベース収集のさまざまな観察)で得られた、あるいはKバンド (2.2 μm) より推定された「赤方偏移」によって、色付けがなされている。青色は最も近い光源 (z < 0.01) であり、緑色は中間距離の光源 (0.01 < z < 0.04)、赤色は2MASSの分析中最も遠くの光源 (0.04 < z < 0.1) である。この分布図は銀河系を中心に据え、エイトフ正積図法により投影したものである[1](Thomas Jarretによる図:IPAC)。

ビッグバン宇宙論でいう観測可能な宇宙(かんそくかのうなうちゅう、observable universe)とは、中心にいる観測者が領域内の物体を十分に観測できるほど小さい、つまり、ビッグバン以後のどの時点でその物体から放出された信号であっても、それが光速で進んで、現在の観測者のもとに届くまでに十分な時間があるような球状の空間領域である。宇宙のどの場所にもその場所にとっての観測可能な宇宙があり、それは地球を中心とするものと重なる部分も重ならない部分もある。
概説

「観測可能」ということは、現代の技術でこの領域内の物体から放射されたエネルギーが検出できるかどうかとは無関係であり、その物体からの光やその他の放射エネルギーが地球上の観測者のもとに到達することが原理上可能だという意味である。実際に観察できるのは、宇宙が晴れ上がった「最終散乱面」にある物体までである。晴れ上がる前の宇宙は、光子に対して不透明であった。しかしながら、重力波(やはり光速で移動している)の検出によって、それ以前の情報を推定することもできないわけではない。重力波はインフレーション時代の遅くとも後期から発生しており、それによって数兆光年・あるいはそれ以上の遠方の宇宙を観測できる可能性がある(もちろんインフレーション時代の宇宙の姿の観測となる)。
観測可能な宇宙と全宇宙観測可能な宇宙を対数スケールで表した図。太陽系を中心としており、各天体には名称を付けている。太陽からの各天体の距離は、中心から端に向かって指数関数的に増加している。また、天体の形状が分かるように各天体を拡大している。


科学者から観測された事実として頻繁に発表・公表される宇宙の具体的な観測値は、あくまで観測可能な宇宙に関するものに限られている。

だが現代宇宙論の構築、宇宙のインフレーションなどの信頼できる多くの理論の説明では、観測可能な宇宙の外側に広がる広大な宇宙を含む、より巨大な全宇宙に関する考察が必要になる。

全宇宙が観測可能な宇宙よりも「小さい」ということも、もちろん可能である。その場合、非常に遠くにあるように見える銀河が、実は近くにある銀河の光が宇宙を一周してくることによって生じた複製像だということもあり得る。この仮説を実験によってテストするのは、銀河の異なる像がその一生の異なる時代を指すこともあり、結果として全く違うということにもなりかねないため、困難である。2004年のある論文[2]では、全宇宙の直径は、24ギガパーセク(780光年)が下限であると主張されており、その場合、観測可能な宇宙より少しだけ小さいということになる。この値はWMAPの観測をマッチング・サークル分析したものに基づいている。

仮に観測不可能な宇宙を含めた全宇宙が有限で閉じているとしても、観測可能な宇宙の範囲内では、曲率は無視できるほど小さいことから、宇宙全体の大きさは、光年単位を用いても「兆」等の日常的な数の尺度、あるいは命数法レベルの数の尺度ではなく、指数での表現が必要な大きさ、それもA×10Bといった単純な仮数指数表記ではなく、指数の上に指数を重ねた指数タワーでの表現が必要な大きさである。レオナルド・サスキンドは宇宙の直径を 10 10 10 122 {\displaystyle 10^{10^{10^{122}}}} と推定している。この推定値はグーゴルプレックスプレックスより大きいが、この見積もりにおいて単位は一切考慮されていない。桁数が非常に大きいため、単位が「ヨタパーセク」でも「光年」でも「メートル」でも「プランク長」でも、もはや誤差以下の違いでしかないためである(巨大数の項目も参照)。具体的に説明すると、単位付与は値に対して定数倍の効果を持つが、1ヨタパーセクは1プランク長の1.9×1075倍であり、 10 10 10 122 {\displaystyle 10^{10^{10^{122}}}} の値のオーダーの前には桁数が少なすぎて、議論の本質に影響を及ぼすことがないということである。

様々な予測は提唱されているものの、全宇宙の大きさがどれくらいなのかは2023年現在の観測技術を以てしても推定すら不可能であり、全くの未解明となっている。これは全宇宙がどれほど巨大であろうが現代宇宙論と矛盾しない為だ。インフレーション理論においては無限に近いスケールの膨張も許容されていて、理論上は大きさの上限が無い。観測可能な宇宙の範囲内の曲率が測定限界を下回って限りなく0に近い事や、磁気単極子が発見されていない事などの観測事実から、最低でも観測可能な宇宙より数十桁以上大きいと見られる程度である。全宇宙の広さは「ほぼ無限」と説明される事も多いが、これは決して大袈裟な表現ではない。
宇宙の大きさ

地球から「可視」宇宙(宇宙光の地平面)の端までの共動距離は、あらゆる方向に約14ギガパーセク(465億光年)である[3]。これによって、観測可能な宇宙の共動半径の下限が明確になる。もっとも、導入部で述べたように、可視宇宙は観測可能な宇宙よりやや小さいと考えられる。これは、再結合(宇宙の晴れ上がり)以後に放射された宇宙背景放射からの光しか見えないためである。この宇宙背景放射によって、われわれには天体の「最終散乱面」が見えているということになる(重力波によって、あくまで理論上は、この球体の外部領域から、再結合期以前の事象が観察できる)。つまり、可視宇宙は直径約28ギガパーセク(約930億光年)の球体だということになる。宇宙空間はだいたいユークリッド平面であるから、この大きさはおよそ

4 3 × π × R 3 = 4 × 10 32  ly 3 {\displaystyle {\frac {4}{3}}\times \pi \times \mathrm {R} ^{3}=4\times 10^{32}{\text{ ly}}^{3}}


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