観光地の発展周期
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観光地の発展周期(かんこうちのはってんしゅうき、英語: The Tourism Area Life Cycle, TALC)とは、リチャード・W・バトラー(Richard.W.Butler)が1980年に提案した、観光地ライフサイクルに関するモデルである[1]。このモデルは、観光地域の発展プロセスの説明の観点で高評価を受けている[2]
概要

このモデルは、製品ライフサイクルの概念に基づき[3]、観光地の成長を、1. 探検段階(exploration)、2. 参加段階(involvement)、3. 発展段階(development)、4. 完成段階(consolidation)、5. 停滞段階(stagnation)、6. 衰退段階(decline)または再生(rejuvenation)の6段階として表現し[4]、観光客数と時間の関係性を示している[5]。横軸を時間、縦軸を観光客数としたグラフをかくとき、グラフがS字カーブをかくように観光客数が増加していく[5]

探検段階では、観光地の訪問者数は少なく、観光客を対象とした施設も限られている[2]。参加段階になり観光客数が増加すると、観光客向けの施設の整備も進み[6]、発展段階になると外部資本による大規模な開発が行われ、観光客数が急増する[2]。このとき、観光における現地住民の影響力は低下していく[3]。その後、完成段階に移行し観光客数の増加率が低下するようになり、停滞段階に至ると観光客数が一定値をとるようになる[2]。停滞段階になると維持費が増大するが、投資のやり方によりその後の動向が変わってくる[6]。新たな観光資源の形成により観光客数が増える場合(再生)、停滞状態のまま変化しない場合(安定)、観光地の魅力が低下する場合(衰退)の3つが考えられる[2]

バトラー自身も述べているが、S.W.Plogモデル心理学的市場分割にヒントを得ている。また、PLC(Product Life Cycle)のS字カーブを観光学的に具体化したモデルとも読み取れる。P.コトラーは、Marketing for Hospitality and Tourism で PLCの概念で代用し、さらにPlogモデルによるディスティネーションの分類で対応し、TALCモデルの活用を避けている。しかし具体的実務レベルでは、開発モデルのTALCとマーケティングの実用化理論(P.コトラーの研究)との接点が求められている。欧米では、一般的なこのモデルも、日本の観光系の書物では散見されない。近年アメリカでは、TALCの密度を上げる研究が散見され、モデル分析がその方法として、挙げられている。

2010年TTRA(Travel and Tourism Research Association)41回(USA)の年次大会で北海商科大学商学部の中鉢が、知床と軽井沢の事例報告をしている。

また、TALCについて流通経済大学社会学部の中崎茂は『観光地域の発展と衰退』と訳している。
影響

このモデルを提唱した論文は、1980年の公開から四半世紀以上にわたり引用され、議論の対象となった[7]

このモデルを再検討した論文集[注釈 1]が2006年に刊行されている[7]。@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}観光開発では重要な論理であるが、日本ではまだ知られていない。[要出典]翻訳本は皆無である。
原著論文

R.W. Butler (1980). "The Concept of A Tourist Area Cycle of Evolution: Implications for Management of Resources
". Canadian Geographer / Le Geographe canadien 24:5-12 doi:10.1111/j.1541-0064.1980.tb00970.x

中崎茂 1998. ⇒観光地域の発展と衰退 : バトラーのライフ・サイクルモデルの紹介 流通経済大学社会学部論叢 8:97-111 (日本語訳)

毛利公孝・石井昭夫 2002. 観光地の発展周期に関する考察 立教大学観光学部紀要 4:98-103 (日本語訳)


脚注
注釈^ Richard W. Butler ed. 2006. The Tourism Area Life Cycle - Applications and Modifications. Clevedon: Channel View Publications.

出典^ ピアス・内藤 2001, p. 51.
^ a b c d e 呉羽 2015, p. 54.
^ a b ピアス・内藤 2001, p. 52.
^ 石井 2002, p. 55.


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