西遊妖猿伝
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『西遊妖猿伝』(さいゆうようえんでん)は、諸星大二郎著の漫画作品。また、それを原作としたラジオドラマ
概要

双葉社漫画雑誌月刊スーパーアクション』(1983年6月号から1987年9月号)、『コミックアクションキャラクター』(1988年5月27日号から1989年4月28日号、1990年増刊4月30日号諸星大二郎大特集)、潮出版社の漫画雑誌『コミックトム』(1992年3月号から1997年8月号)に連載された後、11年の中断を挟んで講談社の漫画雑誌『モーニング』に、2008年47号から2012年31号までの不定期連載を経て、同社『月刊モーニングtwo』にて2013年9月号から連載されている。

講釈師による講談という体裁を採り、末から初の時代、「斉天大聖」の称号を持つ少年・孫悟空仏教の原典を求める僧・玄奘や不良僧・八戒らと共に天竺取経の旅をするという『西遊記』をモチーフとした内容だが、あくまで史実とフィクションを織り交ぜた別の物語である。第1部大唐篇・第2部西域篇・第3部天竺篇の3部構成となる予定[1]だが、西域篇を前に長期に渡って連載が中断、再開が待たれていた。

2000年、第4回手塚治虫文化賞マンガ大賞受賞。
ストーリー

隋末の大乱によって天涯孤独の身となった少年・孫悟空は、強大な妖怪「無支奇」より「斉天大聖」の称号を授かり、民衆の怨念のために権力者と戦うことを宿命づけられる。群雄劉黒闥の配下の若者・紅孩児や「斉天玄女」の称号を持つ美少女・竜児女との出会いによって、金角・銀角兄弟率いる山賊や唐の李世民らとの戦いに巻き込まれていく。唐の太子の暗殺を目論む紅孩児らとともに宮城にて破壊活動を強行しお尋ね者となる悟空だが、その間運命的な因縁により旅の僧玄奘と幾度か顔を合わせ、国禁を犯してまで天竺取経を目指す玄奘の信念に惹かれるようにその後を追うのだった。
登場人物
主要人物
孫悟空(そん ごくう)
本編の主人公。河南地方・福地村で暮らしていたが、妖怪「無支奇」より斉天大聖の称号とその象徴である金環と金箍棒を授かり、常に戦いの火種となる宿命を負わされた少年。太古の昔より天?三十六星に対応する地?七十二星の一人として数えられており、乱を起こして滅びる運命にあるとされているが、宿命を変えて真の自分自身へと還るため玄奘とともに天竺を目指す決意をする[2]。怒りによって体内に眠る大聖の力が激発し、数百人規模の盗賊団を単独で壊滅させるほどの超常的な戦闘力を発揮するが、虐げられて死んでいった民衆の怒りや怨念に呑まれると自意識までが封印されるため周囲にいるものを無差別に殺し続けるようになってしまう。玄奘が経を唱えるとその状態が中和されることに気づいてからは、正気を保ちながら大聖の力を引き出す要領をつかんで利用する様になる。無支奇によって称号を授けられた時には10歳になるかどうかという年齢。西域篇でもようやく10代半ばといった年齢なので「小僧」「小童」と、よく呼ばれる。唐朝廷の関係者には李世民が戯れに付けた厩の番人の役職名である弼馬温(ひつばおん)の名で呼ばれる。冷静沈着に見えてその実きわめて気が短く、些細な揉め事でも金箍棒を振り回すことによって解決しようとしてかえって事態を悪化させてしまうことが多々あるが、玄奘には非常に頼りにされている。端整な顔立ちで少女から大人まで幅広い年代の女性から好意を寄せられることが多い。後述の易者・袁守誠の立てた卦によると陽の気が強い性質で常に動くことを宿命づけられている。
金環、金箍棒
悟空が斉天大聖の称号を授かった際に与えられた帽子に付いていた金環と五行山で手に入れた金色の箍が嵌った1mほどの金属製の棒。金環は被った途端に悟空の頭を締め付け、その痛みによって記憶を失った悟空は半年ほどの間、山中で野人のように暮らしていた。怨霊の声や大聖からの呼びかけを受けた際には反応するほか、根を張ったようになっており、無理やり外そうとしたり法力持ちの僧侶が唱える経を聞くと頭痛を引き起こす。金箍棒は五行山に満ちる氣が凝り集まってできた神珍鉄製の棒。悟空の内に眠る大聖の力を存分に振るえるだけの強度を持つ業物だが、他者には重い棒にすぎない[3]。強度は建物が崩落した際にも支えとして立てておけば隙間を確保できるほど。双葉社版ではもともと竜児女の得物であり彼女の死後悟空が受け継いで使用した。
玄奘(げんじょう)
元は長安で学ぶ見識豊かな僧だったが、経典の不足により百家争鳴する仏教界の腐敗を糺し、世界の真実を知るために原典である十七地論を求め国禁に背いて天竺取経の旅を断行する。出立の許可を得られず悩んでいた時に偶然耳にした皇帝暗殺計画を董彦思に密告したことから、紅孩児の恨みを買い命を狙われる。恵岸行者のように法力に優れる訳ではないが、彼の読む経は大聖(闇)に囚われた悟空を光に引き戻す効果がある。精悍な顔立ちの二枚目であり、悟空同様本人にその気はないのに女性に迫られることがままある。一見すると真面目一辺倒の堅物の高僧だが、目的を果たすためならなら多少の無茶は目をつぶり融通の利く一面も持ち、八戒を誤って殴り倒してそれを追及されそうになった時には当時敵であった沙悟浄にその罪をなすりつけて難を逃れている。困難が続くと気が滅入り時に弱気になることもこともあるが、それを撥ね退けるだけの強靭な精神力と信念を備えており、析易居士の蜥蜴蠱に憑かれた際には悟空の助力を待たずに自力で討ち破っている。
八戒(はっかい)
本名・猪悟能。好色で食い意地の張った破戒僧。長安の仏寺に入門したその日のうちに殺生・盗み・姦淫・妄語・その他の8つの戒めをすべて破ったことから八戒と呼ばれる。長安から逃げ出して秦州の属仏寺という寺に潜り込んでいたが、近隣の村・高老荘で村長の娘とマッチポンプによる憑き物騒ぎを起こして荒稼ぎしていた。だが、玄奘と共に村を訪れた兄弟子に事実が発覚。醜聞を恐れて秘密裏に追い出される。その後、珍妙な巡り合わせが重なり、はからずも悟空や玄奘と同道する。およそ計画性と言う物がなく、その場その場で食欲・性欲・金銭欲の赴くままに行動して騒ぎを起こして逃亡するという、悟空とは別の意味の真性のトラブルメーカー。黄花村で偶然手に入れた紫金鈴を持ち逃げした途上でもいちいち騒ぎを起こしており、悟空に容易に追跡された。人間の欲望を増長させる類の魔物にとり憑かれた際など、普段と大して行動が変化しないので気付かれず、悟空の対応が後手に回った。時々、彼のその行動が良い方向に実を結ぶこともあるが、なぜ玄奘に追従するのか疑問に思われることもある。
沙悟浄(さ ごじょう)
本名を忘れていた胡人で玄奘の供になる最後の一人。幼いころから盗賊の父親と流沙河に隣接する廃墟に暮らし、父が消えた後は遭難した旅人の財物を奪って暮らしてきた。河西回廊篇終盤で「瓜州の石槃陀(せきはんだ)」と名乗り、玄奘に受戒してもらい道案内を買って出るが莫賀延蹟手前で怖気づいたかのように装い[4]、玄奘と別れて引き返したふりをして流沙河に先回りし、仮面を被って玄奘一行を襲う。悟空の大暴れがきっかけで流沙河の遺跡は崩壊し、母の亡骸と対面することになり、呪縛から解かれ己の名を思い出す。


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