西尾駅
東口(2022年5月)
にしお
NISHIO
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西尾駅(にしおえき)は、愛知県西尾市住吉町にある、名鉄西尾線の駅である。駅番号はGN10。西尾市の代表駅であり全列車が停車する。
本項ではかつて駅に併設されていた西尾車庫(にしおしゃこ)についても記述する。 1911年(明治44年)10月30日に岡崎(岡崎新駅)と幡豆郡西尾町とを結ぶ西三軌道が開業[2]。西尾駅はその終着駅として現在地より西方の永吉町(現・吾妻町)に設置された[3]。西三軌道は翌1912年(明治45年)1月に西尾鉄道へ改称[4]。1914年(大正3年)には平坂線港前駅、1915年(大正4年)8月には吉田線吉良吉田駅まで延伸し、西尾駅は岡崎・平坂・吉田を結ぶ西尾鉄道の結節点となった[5]。 当時は一駅岡崎新寄りの天王門駅が西尾駅よりも本町、須田、肴町といった西尾の中心市街地に近く、旅客成績は天王門駅が上回っていた[6][7]。中心市街地と西尾駅とを結ぶルートも当初は未整備で迂回路しかなかったため、西尾町は西尾駅前を通る三間道路と本町南端部とを結ぶ塩町線を計画し、道路整備に努めた[8]。 軌間762 mm の蒸気鉄道として開業した西尾鉄道だったが[9]、輸送量が順調に増加した大正中期頃より軌間1,067 mm への改軌と電化が検討されるようになった[10]。開業当初の西尾駅は平屋建ての木造駅舎だったが[11]、手狭な駅舎の改築も電化改軌構想と前後して計画され、1925年(大正14年)7月に竣工した[12]。旧駅舎の北側に建設された2代目駅舎は塔屋付きの2階建て駅舎で、2階には西尾鉄道の本社事務所が入っていた[10]。 資金不足で電化改良計画が滞るなか、大正末期に至って西方からは電化された三河鉄道が、北方からは愛知電気鉄道(愛電)傍系の碧海電気鉄道(碧電)が、それぞれ西尾鉄道の営業圏である幡豆郡へ進出してきた[13]。会社の前途を危惧した西尾鉄道の経営陣は愛電との合併を選び、協議の結果、1926年(大正15年)12月に合併が成立[14]。西尾鉄道は愛電西尾線となり、改良計画も同社に引き継がれた[12]。 一方、西尾町では1925年(大正14年)3月に花ノ木耕地整理組合が設立され、東郊外の区画整理が計画されていた[15]。西尾駅から天王門駅にかけての市街地区間は曲線が多く、改軌するための路盤拡張のゆとりもなかったため、愛知電気鉄道は西尾町の都市計画と提携し、区画整理された路地に線路を引き直すことにした[16]。ルート変更で急曲線区間の天王門駅は廃止となり、西尾駅も東(現在地)へ移転することになる[17]。西尾駅は2代目駅舎の新築から間もないこともあり、移転に反対する意見もあった[18]。また駅西の本町、須田の商店街からも移転反対の陳情が出されたが[19]、町民の多くは将来を見据えた移転に肯定的であった[20]。 西尾駅の移転について、西尾町、花ノ木耕地整理組合、愛電の間で以下10か条の契約が交わされた[21]。 西尾駅の移転を含む周辺の線形変更は1928年(昭和3年)10月1日に実施された[22]。線形変更によって吉良吉田方面は旧線よりもカーブが緩和されたが、平坂方面は区画整理された地区を出てからカーブする形になったため、旧線よりも急曲線となった[23]。線形変更区間の手前に碧電西尾口駅(仮駅)を置き仮の終着駅としていた碧海電気鉄道(碧電)も、同日に西尾駅まで延伸開業[18]。愛電西尾線との合流地点には西尾口駅(仮駅)が置かれ、西尾口(仮)・西尾間は両社の路線が単線で並走。碧電線は将来の複線化も見据えて2線分の用地が確保されていた[24]。 碧電の架線電圧は当初直流1500 V だったが、直流600 Vで電化された愛電西尾線に合わせて降圧を行い、碧電線今村駅 - 西尾駅 - 愛電線吉良吉田駅間の直通運転を開始した[25]。1928年(昭和3年)10月1日時点では岡崎新駅 - 西尾口駅(仮)間が未だ非電化であり、当初は西尾口駅(仮)で乗換えを必要としたが、翌1929年(昭和4年)4月に残区間の電化が完了し、岡崎新駅 - 西尾駅 - 港前駅間の直通運転も開始[22]。西尾駅は4方面の運転拠点となり車庫も新設された[18]。2面4線のホームは駅舎側から順に岡崎新行き、今村行き、吉良吉田行き、港前行き列車が発着し、1935年(昭和10年)頃は毎時53分頃に全方面の列車が西尾駅に集結するダイヤが組まれていた[26]。 西尾口駅・碧海西尾口駅 - 西尾駅間 配線略図(1943年)[27] 移転先に作られた3代目駅舎は急傾斜の屋根とドーマーをもつ洋風建築で、食堂や売店を併設していた[28][29]。区画整理された駅前からは道路が放射状に伸び、新市街地造成の基礎となった[18]。
歴史
西尾駅の開業
初代駅舎(1913年)
2代目駅舎(1928年)
西尾駅の移転2代目駅舎から移転後の西尾駅を望む。写真左上に3代目駅舎が見える。旧駅跡地には待合室に転用された客車が置かれている。
1. 西尾駅移転に要する費用57,486円85銭のうち43,000円を西尾町が負担し、工事後2回にわけて愛電に支払う。
2. 現在の西尾駅本屋は西尾町に寄付する。
3. ルート変更に要する用地買収、家屋移転・撤去等の費用は西尾町が負担し、2ヶ月間のうちに裸地にして愛電に提供する。
4. 西尾町は社宅その他の付属建物の敷地として8,000坪を愛電に提供する。
5. 西尾町は踏切番小屋三ヶ所分の用地を愛電に提供する。
6. 駅舎移転による異議、損害の申立ては西尾町が責を負う。
7. 県道西尾吉田線(現・西尾市道)との踏切は1ヶ所とする。
8. 西尾町が提供した用地が10ヶ年以内に不要となった場合、愛電は西尾町または花ノ木耕地整理組合に無償で返却する。
9. 移転後の駅舎は12,000円以上の費用をかけて建設する。
10. 12間道路(現・県道310号)の踏切の幅員は6間(約10.9 m)とする。