褒章
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褒章の旧デザイン(1881年から2003年まで)と新デザイン(2003年以降)および綬の各色

褒章(ほうしょう)は、日本栄典の一つ。社会公共の福祉文化などに貢献した者を顕彰するため、天皇から授与される。

顕彰の対象となる事績により、紅綬褒章緑綬褒章黄綬褒章紫綬褒章藍綬褒章紺綬褒章の6種類が定められている。授与の対象者は、日本国籍を持つ個人のみならず、外国人および法人を含む。

英訳名は、褒章全体が"Medals of Honour"であり、各章はそれぞれ、"Medal with Red Ribbon"、"Medal with Green Ribbon"、"Medal with Yellow Ribbon"、"Medal with Purple Ribbon"、"Medal with Blue Ribbon"、"Medal with Dark Blue Ribbonとされている[1]

日本国政府による英訳では、勲章は"order"であり、褒章は記章記念章および従軍記章)と同様に"medal"とされている。欧米で日本の勲章、褒章および記章に相当するものには、英語で"order"、"decoration"、"Cross"、"medal"と名付けられたものがある。

しかし、日本と欧米ではこれら「勲章等」(勲章等着用規程(昭和39年4月28日総理府告示第16号)第1条)の分け方が異なっており、日本には無い“Cross”の扱いは.mw-parser-output ruby.large{font-size:250%}.mw-parser-output ruby.large>rt,.mw-parser-output ruby.large>rtc{font-size:.3em}.mw-parser-output ruby>rt,.mw-parser-output ruby>rtc{font-feature-settings:"ruby"1}.mw-parser-output ruby.yomigana>rt{font-feature-settings:"ruby"0}区々(まちまち)であり[注釈 1]、“medal”と称されるものの一部は記章ではなく勲章とされることもある。一方、日本の法令上は、他国の褒章に相当するものは記章として扱われる(勲章等着用規程(昭和39年4月28日総理府告示第16号)第11条第1項4号)。
概要褒章伝達式にて章記(褒章の記)を伝達する厚生労働副大臣桜井充

褒章は、天皇が授与する栄典である。法的には、戦前は大日本帝国憲法第15条の「其ノ他ノ栄典」であり、戦後は日本国憲法第7条7号に該当する国事行為(同7条柱書き)であることに基づく。詳細は褒章条例(明治14年太政官布告第63号)により定められ、同条例1条において各褒章の授与対象が規定されている。

勲章は長年にわたる功績に注目する側面が強く、人命救助のように功績顕著であっても一過性の行為は叙勲対象となりにくいのに対して、褒章は叙勲対象とはなりにくいが、顕著な功績と認められるものに対しても授与される。

褒章は、授与された本人に限り終身これを佩用(はいよう)(公的な場で着用)することができる(条例4条)。褒章を佩用する際は、「左肋ノ辺」(左胸のあたり)に着ける(条例8条)。ただし受章者が、懲役刑・禁錮刑・死刑に処された場合、褒章は没収されて受章者としての地位は褫奪(ちだつ)される(勲章褫奪令第1条・第6条)。なお、褒章は独立行政法人造幣局が製造している(独立行政法人造幣局法3条2項、11条1項4号)。

褒章条例により表彰されるべき者が団体である場合には、でない団体はメダルを着けられないため、褒状が授与される[2](条例2条)。なお、個人に授与される場合にも褒章(メダル)とともに褒章の記が授与される。褒状、褒章の記ともに、受章者・表彰者の氏名または名称、受章・表彰理由、授与・表彰の年月日と記号番号、天皇の名で授与・表彰する旨が記されて国璽が捺され、内閣総理大臣内閣府賞勲局長が署名・押印する[注釈 2]。日本の法令・行政上の扱いでは、褒章とは「○綬褒章」の名称をもつ褒章のみを指す。褒状、賞杯を含めるときは「褒賞」の表現を用いる(例: 受章・受賞者を掲載する官報の欄名)。

褒章の授与とともに、金銀木杯(賞杯)を授与することもある(条例5条)。特に、公益のために私財を寄附した者に授与される紺綬褒章を授与する場合には、合わせて授与される木杯の基準がその寄附額によって定められている[3]。また、本条例によって表彰されるべき者が死亡したときは、金銀木杯または褒状をその遺族に授与し、これを遺族追賞という(条例6条)。

すでに褒章を授与されている者が再度同様の理由によって褒章を授与されるべきときは、その都度、銀色の飾版のみを1個授与され、すでに授与されている褒章の綬(リボン)に附加して標識とする(条例第3条第1項)。この飾版が5個(5回の受章)以上に達したときは、5個ごとに金色の飾版を1個と引き替える(同条2項)。

紅綬褒章・緑綬褒章・黄綬褒章・紫綬褒章・藍綬褒章については、勲章と同様、毎年4月29日昭和の日)および11月3日(文化の日)に発令される。各回、約800名に授与され、それぞれ「春の褒章」「秋の褒章」、併せて「春秋褒章」と呼ばれている。紺綬褒章は、表彰されるべき事績の生じた都度、各府省等の推薦に基づき審査をし授与を行うこととされ、毎月末の閣議で決定される。春秋褒章の授与は、衆議院議長参議院議長国立国会図書館長最高裁判所長官、内閣総理大臣、各省大臣会計検査院長人事院総裁宮内庁長官および内閣府に置かれる外局の長が、候補者を内閣総理大臣に推薦して行う[4]。内閣総理大臣は、推薦された候補者について審査を行い、褒章の授与について閣議の決定を求める。褒章の伝達は、「内閣総理大臣の命を受け、内閣府賞勲局長が所管大臣に伝達し、所管大臣が適宜受章者に伝達する。」と定められている[5]。褒章の授与は、官報に掲載される。
沿革

1875年明治8年)7月 - 太政官達第121号において、篤行者・奇特者へ賞与を与えることが定められる。

1880年(明治13年) - 賞勲局から褒章制度制定について上申される。

1881年(明治14年) - 褒章条例(明治14年12月7日太政官布告第63号)が制定される。当初は紅綬褒章、緑綬褒章、藍綬褒章の3種であった。これにより、褒章制度が確立した。

1882年(明治15年)1月1日 - 褒章条例施行。

1887年(明治20年) - 黄綬褒章臨時制定ノ件(明治20年勅令第16号)により黄綬褒章(旧制度)が制定された。

1918年大正7年) - 褒章条例中改正ノ件(大正7年9月19日勅令第349号)により紺綬褒章が制定された。

1921年(大正10年) - 褒章の略綬が制定された(大正10年4月26日勅令第147号および第148号)。

1927年昭和2年) - 同じ褒章を5回以上受章した者のための金色飾版が制定された(昭和2年2月1日勅令第6号)。

1947年(昭和22年) - 内閣官制の廃止等に関する政令(昭和22年5月3日政令第4号)により明治20年勅令第16号が廃止されたのに伴い(同第1条)、黄綬褒章が廃止された。

1955年(昭和30年) - 昭和30年1月22日政令第7号の改正により紫綬褒章および新規の黄綬褒章が制定された。

1978年(昭和53年) - 同年春以降、黄綬褒章・紫綬褒章・藍綬褒章は毎年4月29日および11月3日に授与することとした。

2002年平成14年) - 平成14年8月12日政令第278号(平成15年栄典制度改正に伴う改正)により、緑綬褒章の授与対象を変更。また、褒章の制式の細目は内閣府令により別途定める旨が規定された(条例第9条)。

2003年(平成15年) - 同改正により新設された条例第9条に基づく平成15年5月1日内閣府令第55号(褒章の制式及び形状を定める内閣府令)により、新しい褒章のデザインが定められた。また、平成15年5月20日閣議決定により褒章の授与要件が緩和され、対象が広がった。

制式現行の褒章、飾版および略綬

褒章の制式については褒章条例第7条に規定されており、形状等の細目は内閣府令によって定めるとされている(同9条)。そして、現行の細目は「褒章の制式及び形状を定める内閣府令」(平成15年5月1日内閣府令第55号)で規定されている。一方、旧黄綬褒章の制式は「黄綬褒章臨時制定ノ件」第3条により規定されていた。

褒章はメダル本体の“章”、章を吊るして衣服に取り付けるための“綬”(リボン)、章と綬を繋ぐ“鈕”、および綬に取り付ける“飾版”からなる。ただし、旧黄綬褒章には鈕と飾版は無く、環により章と綬が繋がれている。また、常服時に着用するための略綬も制定されている。

製。桜花紋円形で中心に「褒章」の2字が置かれている。平成15年改正前は直径9分だったが、改正により30ミリメートルとなった。また、表面の意匠は、改正前は銀のみで「褒章」を交差した桜の枝花で囲む図であったが[注釈 3]、改正により流水文を表した金色の円形に「褒章」を浮彫りにし、その外縁を桜花を散りばめた銀地とする意匠となった。裏側は紺綬褒章の場合を除いて「賜」の文字と氏名が記される。改正前の条例では、図の備考により、後述の金色飾版が授与される場合は引き替えられた銀色飾版の授与年月日も記すとされていたが、改正により図とともに削除された。旧黄綬褒章は金および銀の円形で、表面は上から菊花紋章、横書きの「褒章」の文字、大砲の図が配され、裏面には「賛成防海事業」の字が鋳出されていた。

銀製。

綬の色は褒章の種類に応じて、紅、緑、黄、紫、藍、紺と変わる。綬の幅は当初1寸とされていたが、改正により36ミリメートルとなっている。旧黄綬褒章の綬は橙黄色で、瑞宝章のように逆三角形に折られていた。
飾版

既に褒章を授与されている者が、2度以上、同様の理由で褒章を授与されるときは、その都度、飾版(しょくはん、金属の板)を授与し、その褒章の綬に付加して標識とする(褒章条例3条1項)。また、この飾版(銀色)が5個以上に達したときは、5個ごとに別種の飾版(金色)と引き替えて授与される(同条2項)。


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