複素数
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複素数 z = a + bi(a, b は実数)は、複素平面では、直交座標 (a,?b) に対応し、それはアルガン図上のベクトル空間である。"Re" は実軸、"Im" は虚軸を意味する符牒であり、i は虚数単位と呼ばれる i2 = −1 を満たす数である。

数学における複素数(ふくそすう、(: complex number)とは、2つの実数 a, b と虚数単位 i = √−1 を用いてz = a + bi

と表すことのできるのことである[注釈 1]。1, i は実数体上線型独立であり、複素数は、係数体を実数とする、1, i の線型結合である。実数体 R 上の二次拡大環の元であるため、二元数の一つである。

複素数全体からなる集合を、太字の C あるいは黒板太字で ? と表す。C は可換体である。体論の観点からは、複素数体 C は、実数体 R に √−1 を添加して得られる体の拡大である。代数学の基本定理により、複素数体は代数的閉体である。

複素数体はケーリー=ディクソン代数四元数八元数十六元数など)の基点となる体系であり、またさまざまな多元数の中で最もよく知られた例である。

複素数の概念は、一次元の実数直線を二次元の複素平面に拡張する。複素数全体に通常の大小関係を入れることはできない[5][6]。つまり、複素数体 C は順序体でない[注釈 2]

数学での分野、概念や構成において、考えている体構造が複素数体であるとき、それを、それらの概念等の名称に、多くは接頭辞「複素-」を付けることで反映させる。例えば、複素解析、複素行列、複素(係数)多項式、複素リー代数など。
概観
定義

i2 = −1 を満たす i を虚数単位という。実数 1 と i は実数体上で線型独立である。実数 a, b を係数として 1, i の線型結合で表される数 a + bi を複素数と呼ぶ[注釈 3]

任意の実数 a は a + 0i と表せるので複素数である(実数全体の複素数全体への埋め込みは、四則演算および絶対値を保つという意味で、位相体の埋め込みである)。bi = 0 + bi (b ≠ 0) の形の複素数を純虚数と呼ぶ。

複素数 z = a + bi (a, b ∈ R) に対して、a を z の実部 (real part) といい、Re(z), ?(z), Re z, ? z などで表す。b を z の虚部 (imaginary part) といい、Im(z), ?(z), Im z, ? z などで表す。虚部とは実数「b」を指し複素数「bi」ではないことに注意[7][8]

虚部が 0 でない、すなわち実数でない複素数のことを虚数という。

実部、虚部がともに整数のときガウス整数といい、その全体を Z[i] と書く。

実部、虚部がともに有理数のときガウス有理数といい、その全体を Q(i) と表す。

複素平面詳細は「複素平面」を参照複素数平面

複素数 z = x + iy(x, y は実数)は実数の対 (x, y) に 1: 1 に対応するから、複素数全体からなる集合 C は、z = x + iy を (x, y) と見なすことにより座標平面と考えることができる。この座標平面を複素平面という。カール・フリードリヒ・ガウスに因んでガウス平面、ジャン?ロベール・アルガン(英語版)に因んでアルガン図と呼ばれることもある。これと異なる語法として、C は複素数体上一次元のアフィン線型多様体であるので、複素直線とも呼ばれる。

複素数平面においては、x座標が実部、y座標が虚部に対応し、x軸(横軸)を実軸 (real axis) 、y軸(縦軸)を虚軸 (imaginary axis) と呼ぶ[9]

複素数 z, w に対してd(z, w) = |z − w|

とすると、(C, d) は距離空間となる。この距離は、座標平面におけるユークリッド距離に対応する。複素数平面は複素数の計算を視覚化でき、数直線の概念そのものを拡張した。
複素数球面詳細は「リーマン球面」および「射影直線」を参照リーマン球面の視覚化

複素関数論においては、複素数平面 C を考えるよりも、無限遠点を付け加えて1点コンパクト化した C ∪ {∞} を考える方が自然であり、議論が透明になることもある。複素数球面またはリーマン球面と呼ばれ、以下に示すように2次元球面同型 S2 と位相同型である。無限遠点にも幾何的な意味を与えることができる。

複素数平面 C を、xyz座標空間内の xy平面とみなし、z ? 0 に含まれ xy平面と原点で接する球面 x2 + y2 + (z − 1)2 = 1 を考える。この球における原点の対蹠点(英語版) (0, 0, 2) を北極と呼ぶことにする。任意の複素数 w に対し w と北極を結んだ線分はこの球面と、北極以外の一点で必ず交わり、それを f(w) と書けば f は単射連続写像である。f のは、球面から北極を除いた部分である。また、w → ∞ のとき f(w) → (0, 0, 2)(北極)である。そこで、f の定義域を C ∪ {∞} に拡張すると、f : C ∪ {∞} → S2 は同相写像になる。

この同相写像 f は、複素平面上の円を円に写し、複素平面上の直線を、無限遠点を通る円に写す。このことは、複素平面上の直線と円はほぼ同等であることを表している。
基本的な性質
相等関係

二つの複素数が等しいとは、それらの実部および虚部がそれぞれ等しいことである: z 1 = z 2 ⟺ ( Re ⁡ z 1 = Re ⁡ z 2 ) ∧ ( Im ⁡ z 1 = Im ⁡ z 2 ) {\displaystyle z_{1}=z_{2}\iff (\operatorname {Re} z_{1}=\operatorname {Re} z_{2})\land (\operatorname {Im} z_{1}=\operatorname {Im} z_{2})}

このことは、1, i が線型独立であることから示される。
四則演算二つの複素数の和は、複素数平面では、平行四辺形の対角線を作ることに当たる。

(a + bi) ± (c + di) = (a ± c) + (b ± d)i(複号同順)

(a + bi)(c + di) = (ac − bd) + (bc + ad)i

a + b i c + d i = a c + b d c 2 + d 2 + b c − a d c 2 + d 2 i {\displaystyle {\frac {a+bi}{c+di}}={\frac {ac+bd}{c^{2}+d^{2}}}+{\frac {bc-ad}{c^{2}+d^{2}}}i}

n, m は整数とする。

znzm = zn+m

(zn)m = znm

(zw)n = znwn

複素共役(共役複素数)詳細は「複素共役」を参照複素数 z の共役複素数 z を取る操作は、複素数平面では実軸対称変換に当たる。

複素数 a + bi に対して、虚部 b を反数にした複素数 a − bi を z の共役(きょうやく、conjugate, 本来は共軛)複素数といい、記号で z(または z*)と表す[9]。z = Re z − i Im z

z と z を複素共役あるいは単に共役という。

複素数の共役をとる複素関数 ・ : C → C ; z ? z は環準同型である。すなわち次が成り立つ。

z + w = z + w

zw = z w

複素共役は実数を変えない:

z が実数 ⇔ z = z

逆に、C 上の環準同型写像で、実数を変えないものは、恒等写像か複素共役変換に限られる。

複素共役変換 ・ : C → C ; z ? z は、C の全ての点で複素微分不可能である。

以下の性質が成り立つ。

z が実数 ⇔ z = z

z が純虚数 ⇔ z = −z ≠ 0

z ± w = z ± w(複号同順)

zw = z w

( z w ) ¯ = z ¯ w ¯ {\displaystyle {\overline {\left({\frac {z}{w}}\right)}}={\frac {\overline {z}}{\overline {w}}}}

z n ¯ = ( z ¯ ) n {\displaystyle {\overline {z^{n}}}=\left({\overline {z}}\right)^{n}} (n は整数)


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