裁かるゝジャンヌ
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裁かるるジャンヌ
La Passion de Jeanne d'Arc
アメリカ版ポスター(1929年)
監督カール・Th・ドライヤー
脚本カール・Th・ドライヤー
出演者ルネ・ファルコネッティ
撮影ルドルフ・マテ
編集カール・Th・ドライヤー
製作会社ソシエテ・ジェネラール・ドゥ・フィルム
公開 1928年4月21日
1928年10月25日
1929年10月25日(ただし第二版)
上映時間96分(20fps)
製作国 フランス
言語サイレント映画
デンマーク語インタータイトル
フランス語インタータイトル(フランス公開版)
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『裁かるるジャンヌ』または『裁かるゝジャンヌ』(: La Passion de Jeanne d'Arc、ジャンヌ・ダルクの受難)は、1928年に公開されたフランスサイレント映画である。監督はデンマークカール・Th・ドライヤーで、主演はルネ・ファルコネッティである。ジャンヌ・ダルク異端審問裁判の様子とその後の火刑までを扱った作品で、実際の裁判記録をもとに脚本が書かれ、ジャンヌを英雄視せず、あくまで尋問調書から読み取ることができる一人の人間として描いている。物語の中心となる法廷での審問官とジャンヌの問答の場面は、極端な顔のクローズアップと会話字幕の多用でつないでいる。
あらすじ

鎖でつながれたジャンヌが兵士に伴われて姿を現す。異端審問官たちの前に連れてこられたジャンヌに次々と質問が投げかけられる。ジャンヌはそれにひとつずつ答えていく。審問官たちは巧みに彼女の答えを誘導する。彼らはジャンヌに神と取引をしたと言わせ、それは神への冒涜だと返す。フランス王シャルル7世からジャンヌへの親書だと偽りの手紙をあたえることにより審問官の一人を彼女に信用させる。それを利用し誘導尋問を進め、ジャンヌから教会の存在意義を否定する言葉を引き出そうとする。

拷問室へ連れてこられたジャンヌは、さらに強迫をうける。ジャンヌが見たのは神ではなく悪魔であること。自らが悪魔の手先であること。それらを認めたうえで悪魔の教えを捨て去ること。その証明として、異端放棄の宣誓書に署名をするよう迫られる。ジャンヌは気絶する。治療のため医師がジャンヌに瀉血を行なう。それにより、さらに体力を失ったジャンヌは死への恐怖におののく。コーションはジャンヌが求めていたミサの準備をする。しかし、聖体拝領の段に至り、彼らはそれを遮ってジャンヌに異端放棄の署名をするよう迫る。コーションは、逡巡するジャンヌにミサの中止と死刑の準備を告げる。ジャンヌは処刑場に引き出される。心身ともに衰弱したジャンヌは死への恐怖からついに審問官たちに屈する。火刑を許され、終身刑を宣告される。牢獄に戻され髪を剃られたジャンヌは処刑場でのことを後悔する。審問官を呼び、署名の撤回を求める。死を免れるために嘘をついたと告白する。火刑の準備が始まる。

マシューはミサを手配し、ジャンヌの告解を聞く。火刑を聞きつけた群衆が城に押し寄せる。ジャンヌは生きたまま火で焼かれる。ジャンヌの死刑を批難する群衆が暴動を起こすが、兵士たちがそれを鎮圧する。
キャスト

ジャンヌ - ルネ・ファルコネッティ(フランス語版)

ピエール・コーション - ウジェーヌ・シルヴァン(フランス語版)

ニコラ・ロワズルール - モーリス・シュッツ(フランス語版)

ジャン・マシュー - アントナン・アルトー

ジャン・ル・メートル - ジルベール・ダリュー(フランス語版)

ジャン・デスティヴェ - アンドレ・ベルレイ(フランス語版)

ジャン・ボーペール - ルイ・ラヴェ(フランス語版)

(役名不明) - ジャン・ディドゥ

(役名不明) - ミシェル・シモン(フランス語版)

スタッフ

監督・脚本・編集:カール・Th・ドライヤー

撮影:
ルドルフ・マテ

美術:ヘアマン・ヴァルム、ジャン・ユーゴー

衣装:ヴァレンティヌ・ユーゴー

製作

監督第1作『裁判長』以来、主に家族の物語を描いてきたドライヤーは、フランスを舞台に歴史劇に取り組むことになる。『あるじ』(1925年制作)の世界的な成功を受け、ドライヤーのもとにフランスの映画会社ソシエテ・ジェネラール・ドゥ・フィルムから映画製作の依頼が舞い込んだ。当初、マリー・アントワネットカトリーヌ・ド・メディシス、ジャンヌ・ダルクの3つの企画案があった。ドライヤーとソシエテ・ジェネラールとの間で幾度かの会談がもたれたが決定を見なかったために、最終的に籤引きによりジャンヌ・ダルクを扱うことが決められた[1]。ソシエテ・ジェネラールは、ジャンヌ・ダルクの小説を書いて注目を集めていたジョゼフ・デルテイユ[注 1]と契約、デルテイユは映画脚本を仕上げるがドライヤーはその脚本を使用しなかった。彼がこの映画で描こうとしたのは、聖なるジャンヌとしての神話化された英雄物語ではなく、実際の裁判記録に基づいた裁判の再現であった。歴史学者ピエール・シャンピオンの助力を得て、裁判記録を詳細に研究したドライヤーは、古文書が明らかにする異端審問官たちの裁判テクニックに注目した。それは、審問官による簡潔な質問と、短く明快なジャンヌの答えであった。簡単な問答を繰り返しつつ、徐々に審問官たちの有利な方へと答えを誘導しようとする。その一言一言がジャンヌをいたぶり苦痛となって彼女を苦しめる。その裁判テクニックを映画の中に移し入れようとした。その両者の問答を映像で表現する手段としてクロース・アップが用いられた。極端なアップと仰角撮影(地面に穴を掘ってその中にカメラマンが入り込んだ)によって、ジャンヌが受けた言葉による拷問と同じ衝撃を見るものに与えようとした。結局、脚本はドライヤーが自身の手で完成させた。


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