血液型
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血液型(けつえきがた)は、血球の表面または内部にある血液型物質(抗原)の有無によってつける個人の区別であり、「ヒトの血清学的体質」、「血液の個人性」、「個人を血清学的に識別する方法」ともいえる。広義の血液型とは、血液にみられる遺伝形質の個体差によって、さまざまに区別される遺伝的多型、あるいはその分類様式をいう[1]。当初、血液型は赤血球を対象として研究されたが、近年、それ以外の各種血液成分についても多型性のあることが確認されるようになった[1]。(2019年時点で)ヒトの血液型として国際輸血学会が認定している型は37種類ある[2]

近年、血液型ごとに疾病の罹患率が異なることが明らかになってきている。→#血液型と各疾患の罹患率など

なお血液型と性格との関連性には科学的根拠がない[3]
主な分類方法

抗原は数百種類が知られており、その組み合せによって決まる血液型は膨大な数(数兆通り以上という説もあり)になる。世界を捜しても、一卵性双生児でもない限り自分と完全に同じ血液型をしている人はいないとすら言われる。この性質を利用して畜産、特にサラブレッド生産の分野において血液型が親子関係の証明に使われていた(現在は直接DNAを鑑定する手法が用いられる)。

輸血をする場合、ABO式血液型など一部の分類は自然抗体が形成され、型違いの血液を混ぜると凝集や溶血が起きるため、型合わせする必要がある。また、血液型によって、凝集や溶血反応はそれぞれである。

また、70万人に1人程度といわれている低確率[4]で一人の人間が複数の血液型を持っている場合は、「血液型キメラ」と呼ばれる(例:A型99% AB型0.1%等)。詳しくはキメラの項を参照。
赤血球の抗原を元に発見された型
ABO式血液型詳細は「ABO式血液型」を参照

本項ではボンベイ型に関わるため便宜上Hh式血液型にも触れる。

赤血球による血液型の分類法の一種。1900年から1910年ごろにかけて発見された分類法で、最初の血液型分類である。

A型は赤血球表面にA抗原を発現する遺伝子(=A型転移酵素をコードする遺伝子)を持っており、血漿中にB抗原に対する抗体が形成される。

B型は赤血球表面にB抗原を発現する遺伝子(=B型転移酵素をコードする遺伝子)を持っており、血漿中にA抗原に対する抗体が形成される。

O型はどちらの遺伝子も持っておらず、赤血球表面にA/B抗原はない。血漿中にA抗原、B抗原それぞれに対する抗体が形成される。

AB型は赤血球表面に両方の抗原(A抗原およびB抗原)を発現する遺伝子を持っており、血漿中の抗体形成はない[5]

Hh式血液型は1932年に発見され、ABO式血液型の元になるH物質(=フコース)が抗原。これがない場合(h型)はボンベイ型になり、A型やB型の遺伝子を持っていてもA抗原やB抗原が赤血球に結合できなくなる。
Rh式血液型詳細は「Rh因子」を参照

赤血球膜の抗原による分類法。1940年ごろから明らかにされた。現在は40種以上の抗原が発見されている。そのうち主要なものはC対c・D対d・E対eの3対6種類の因子[脚注 1][6]で、その中でも特に強い反応をするD抗原の有無についての情報を陽性・陰性として表示することが最も多い。すなわち、Rh+(D抗原陽性)とRh?(D抗原陰性)である。なお、抗原Dは「抗原Dがあれば大文字D、なければ小文字dの表現型。」になるため、Dとd双方の遺伝子を持つ場合は普通にD抗原が作られるので完全に優性遺伝をする(遺伝子がDDでもDdでもD型、ddのみd型)が、CやEの場合は「C (E) という種類の抗原がある」と大文字、「c (e) という抗原がある」と小文字の表現型になるので両方の遺伝子を持つと不完全優性遺伝をして、遺伝子型がCCとCcとcc、EEとEeとeeでそれぞれ表現型が異なるためCcやEeという表現型になる、このため基本6因子だけでも18通りの血液型がある[7]

Rh?型の人にRh+型の血液を輸血すると、血液の凝集、溶血などのショックを起こす可能性がある。Rh?型の女性がRh+型の胎児を妊娠することが2回以上になると病気・流産の原因となることがある。日本人の99.5%はRh+である[8]
MNSs式血液型

MN式は1927年ランドシュタイナーとレヴィンによってウサギを免疫して得られた血清より抗体が発見され、抗M、抗Nとの反応で表現型はM・MN・Nの3通りに分けられ[脚注 2][9]、この血液型は遺伝するが、ABOの遺伝子と異なりM遺伝子とN遺伝子に優劣はなく、両方ある場合はMN型となる。一方Ss型は1947年にワルシュとモントゴメリーらによって大文字S抗体、1951年にレヴィンにより小文字s抗体が新生児溶血性疾患の子供を持つ女性や頻繁に輸血を受けて副作用を起こした患者の血清中に発見された、表現型はS・Ss・sの3通りに分けられる[脚注 3]。白人190人で調べたところS因子はM因子に明確な相関性があり、S陽性の比率がM型は73.4%なのに対し、MN型は54.1%、N型は32.3%となる[10]

後に本来は別々の血液型だが遺伝子の位置が染色体上で近く、見かけ上一緒に遺伝することがわかったため、現在は一緒に扱うようになっている[11]

ABO式と異なりMN式の抗体は体温で反応しにくいため輸血時に問題を起こしにくいが、まれに抗M抗体が不適合妊娠・輸血時に問題を起こす場合があることと、一緒に持っているSs式抗体は元々新生児溶血性疾患の子供を持つ女性や頻繁に輸血を受けて副作用を起こした患者の血清中に発見されたことからもわかるように、自然抗体ではないが問題を起こす[11]
P式血液型

(便宜上関係のあるGloboside式血液型についてもここで触れる、また古い資料によっては「Q式血液型」の名前で詳しく乗っているものもあるのでそれも説明する。)

1927年にランドシュタイナーらによってウマの血清より抗体が発見された型で、表現型はP1、P2、P1K、P2K、pとあり、P1型=P1抗原とP抗原、P2型=P抗原、P1K型=P1抗原とPK抗原、P2K型=PK抗原、p型=抗原なしという組み合わせだが、P1KとP2K(いずれも稀血)は本来はGloboside式血液型による型で、こちらの遺伝子を持っていないとP抗原が完成されずに不完全なPK抗原ができてしまうため、P抗原を異物として自然抗体を持つようになる[12]。このため本来のP式は大半の人にあてはまる抗P1抗体に反応する(P1型、日本人の35%)かしない(P2型、同65%)であり、このため表現型をP(+) (= P1)、P(?) (= P2) と書く場合もある。

Q式はUM型とも呼ばれ[13]1935年に日本の今村昌一がブタの血清から抗体を発見し、ブタ血清の抗体に反応するこの抗原を「Q」と名付け、Q抗原を有する血球を大文字のQ型、持たぬ血球を小文字のq型とした[14]

今村や古畑自身も文献を調べた際にこのQ式がランドシュタイナーらのP式に似ていることには気が付いており、念のためランドシュタイナーからP式の凝集素(Pn)をもらって比較した所、被験者38名中両方の凝集素が凝集する(もしくは両方凝集しない)人が6割強ほどであったものの、片方だけ反応する例外が合計して3割弱(11人)あった[脚注 4]ため、お互い別物と考えたという。その後ドイツのダールも1940年にP式とQ式は似ているが別の血液型という意見を支持していた[15]が、その後PとQの抗体抗原は同じものであるという考えが主流となり[脚注 5]、現在は先に発見されたP式にまとめられている(P1=Q、P2=qになる)。

遺伝的にはP1 (Q) が優性遺伝する(P1P2遺伝子の表記型はP(+)になる=Qq遺伝子型はQ型になる)ため、P1 (Q) 型が片方でも親にいる場合は両方の型が生まれる可能性があるが、P2 (q) 型同士の子供は基本的にP2 (q) 型になる[16]

P2型の抗P1抗体は体温では反応しにくい(摂氏30度以上では反応が減じ、37度ではほとんど作用しない[15]。)ため通常は輸血時に問題は生じないが、遅延型輸血副作用を招いた例があるほか、他の型 (p, P1K, P2K) は多数派のP1型やP2型の輸血で不適合問題を起こす[11]
ルセラン (Lutheran) 式血液型

キャレンダーとレースによって1946年瀰漫性紅斑性狼瘡の患者の血液から抗体を発見される。

この患者は何度も輸血を受けていたが既存血液型と無関係の反応であったため抗ルセラン抗体と呼ばれるようになり、抗体に反応する物をLua、反応しないものをLubとしたが、1956年カットブッシュなどによってにLub内でも別の抗体(後の抗Lub抗体)に反応する人がいたため、抗原が2種類あることが判明する。このため当初はLuaがLubに対し優性遺伝する(=Lub型はLu抗原がない型で1つでもあればLua型になる)と考えられていた[17]が、その後の調べでABO式のA型とB型のように複数の抗原があるため、表現型はLu(a+b?)、Lu(a+b+)、Lu(a?b+)、Lu(a?b?)と4通りに分けられるようになった。

日本人ではほぼ100%がLu(a?b+)でごく少数(1%以下)がLu(a?b?)だが、Lua遺伝子は未発見[13]
ケル (Kell) 式血液型

(便宜上関係のあるKx式血液型とGerbich式血液型についても触れる)

クームスらによって1946年にケラッヘルという一児を産んだ女性の血液中に抗体(抗ケル抗体)を発見される。

抗ケル抗体で凝集される血球をK+もしくは大文字K、凝集されない血球をK?もしくは小文字kとして表し、Kはkに対し優性遺伝するため表現型のK+はKKとKkが存在するが、K?はkkのみとなる。

日本人ではK遺伝子は未発見でほぼ全員がK?である[13]

Kx式は1975年に発見されたX染色体上に遺伝子があり(ケル式は7番染色体)、ケル抗原の元になるKx物質(赤血球と白血球上にある)を抗原とする血液型で、Kx抗原の欠落を起こしたMcleod型ではケル関係抗原の減少に加え[12]、赤血球や白血球の機能不全や低下が起きる[18]

Gerbich式は1960年に発見された型で、大半の人の抗原はGE2・GE3・GE4だが、GE2とGE3がない人(GE4はあってもなくてもよい)はK抗原の発生が抑制され50%ほどになる。日本人では稀血だが、GE2とGE3がなくGE4はある(?2,?3,4)型はマラリア耐性を持つのでパプアニューギニアでは50%もいる[12]
ルイス (Lewis) 式血液型

1946年、イギリスのムーラントによって溶血性疾患にかかった新生児を産んだ母親2名から抗体が発見され[脚注 6]、2年後の1948年に、ムーラントとは別にデンマークの血液学者アンドレセンは新しい抗体2種類を発見し、後にムーラントの報告と同じ物とわかったのでアンドレセンは2種類の抗体・抗原をLea・Lebと命名した。


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