血友病(けつゆうびょう、Hemophilia[1])は、血液凝固因子のうちVIII因子、IX因子の欠損ないし活性低下による遺伝性血液凝固異常症である。
第VIII因子の欠損あるいは活性低下によるのは血友病A、第IX因子の欠損あるいは活性低下によるのは血友病Bである。 男児出生数の5000?1万人に1人が血友病患者である。血友病Aは血友病Bの約5倍である。 性染色体であるX染色体上にある、血液凝固因子の第VIII因子、第IX因子をコードする遺伝子に変異が入ることによって引き起こされる。伴性遺伝。劣性遺伝子であるため、X染色体が二本ある女性の場合には、もう一方のX染色体に異常がなければ機能が補完されるため、発症する事がない。そのため血友病患者のほとんどが男性であり、女性は全血友病患者の1%以下である。かつては血友病遺伝子は致死遺伝子と考えられていたが、女性患者の存在が確認されているため、現在では致死遺伝子であるとは考えられていない。 基本的には遺伝病であるが、突然変異により非保因者の女性から血友病の子供が生まれる場合もある。実際には血友病患者の25%前後が、家族歴が不明の突然変異と言われている。ただし母親の保因/非保因の検査、判断が難しく、最終的にはDNA検査を要する。 A型もB型も症状は同じで、血液凝固因子の不足により血液の凝固異常が起こる。出血様式は深部出血が中心で、特に関節内や筋肉内で内出血が起こりやすく、進行すると変形や拘縮を来たす。また、一度止血しても、翌日?一週間後に再出血を起こすことがある。稀に頭蓋内(帽状腱膜 一般的に因子活性率が1%未満を重症、1?5%を中等症、5%以上を軽症と慣例的に呼んでいる。 血友病は幼児期までに大部分が発症するが、軽症患者の場合は非血友病の人と変わらない生活を過ごし、抜歯のときに止血出来ないことから、初めて判明することもある。
疫学
病因
症状
検査
血小板機能は正常なので、出血時間は正常。
第VIII, IX因子共に内因系凝固因子なので、プロトロンビン時間(PT)正常・活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)延長を来たす。
ビタミンK欠乏 or ワルファリン延長変化なし または やや延長変化なし変化なし
播種性血管内凝固症候群延長延長延長減少
ヴォン・ヴィレブランド病変化なし延長 or 変化なし延長変化なし
血友病
アスピリン変化なし変化なし延長変化なし
血小板減少症変化なし変化なし延長減少
急性肝不全延長変化なし変化なし変化なし
末期肝不全延長延長延長減少
尿毒症変化なし変化なし延長変化なし
無フィブリノーゲン血症
欠損している血液凝固因子を体内に注入する因子補充療法が行われる。現在ではこの補充療法により、健常者とほぼ同じ生活が可能となっている。補充は欠損因子の活性が20%以上になる程度を目標とする。治療の問題点としては、血液凝固因子に対する抗体、インヒビターの発生がある。患者は免疫が構築される胎児期に欠損因子を持っていなかったので、免疫寛容が起こっていない。
このため、治療で投与した欠損因子にインヒビターができ、循環抗凝固因子となって治療に抵抗するため注意を要する。インヒビターはどの血友病患者にも一定の確率で発生するが、発生しない患者とする患者の差分、メカニズムなど、正確なところは現在も解明されていない。
最新の血液製剤は、製造工程中に一切のヒト由来・動物由来のタンパク質を使用しない「遺伝子組み換え製剤」が供給されており、日本では50%近くの患者に使用されている。
第VIII, IX因子は、共に肝臓で生成されることが分かっており、生体肝移植により血友病が完治した例も存在する。
遺伝について