蜂蜜
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「ハチミツ」はこの項目へ転送されています。その他の用法については「ハチミツ (曖昧さ回避)」をご覧ください。
蜂蜜とアメリカンビスケット

蜂蜜(はちみつ)とは、ミツバチ[注釈 1]を採集し、の中で加工、貯蔵されたものをいう[2]。約8割の糖分と約2割の水分によって構成され、ビタミンアミノ酸ミネラル類などの栄養素をわずかに含む[3][4]。味や色は蜜源植物によって様々である[5]

本来はミツバチの食料であるが、しばしば他の生物が採集して食料としている[6]。「蜂蜜の歴史は人類の歴史」ということわざがある[7]ように、人類も、古来、食用や薬用など様々な用途に用いている。人類は初め、野生のミツバチの巣から蜂蜜を採集していたが、やがてミツバチを飼育して採集すること(養蜂)を始めた。

人類による蜂蜜の生産量は、世界全体で年間約120万トンと推定される[8][9]

後述のように、乳児に与えるのは危険なので、絶対に与えてはならない食料である。
採集
ミツバチによる花の蜜の採集「ミツバチ」も参照花の蜜を採集するセイヨウミツバチ

蜂蜜のもととなる花の蜜は、メスのミツバチによって採集される。採集された花の蜜はショ糖液、つまり水分を含んだスクロース(ショ糖)の状態で胃の前部にある蜜嚢(蜜胃[10])と呼ばれる器官に貯えられる。蜜嚢が花の蜜で満たされると、ミツバチは巣へ戻る[11]

一般にはミツバチが採集した花の蜜のことを蜂蜜と呼ぶと考えられがちである[12]が、花の蜜が巣の中で加工、貯蔵されたものが蜂蜜であり[2]、両者の性質には物理的、化学的な違いがある[13]。まず、花の蜜は蜂蜜よりも糖濃度が低い。一般に花の蜜の糖度はミツバチが採集した段階で40%未満であるが、巣に持ち帰られた後で水分の発散が行われる結果、蜂蜜の糖度は80%前後に上昇する[14]。また、水分を発散させるための作業の一つとして、ミツバチは巣の中で口器を使って蜜を膜状に引き延ばすが、この際ミツバチの唾液に含まれる酵素インベルターゼ、転化酵素)が蜜に混入し、その作用によって蜜の中のスクロースがグルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)に分解される[13]

また、本来は花の蜜に含まれない物質がミツバチの口器から混入する。一例としてコリンが挙げられる。コリンはミツバチの咽頭腺から分泌されるローヤルゼリーに含まれる物質であり、ミツバチが花の蜜の水分の発散と並行して同じく口器を用いて咽頭腺から分泌されたローヤルゼリーを女王蜂の幼虫に与える作業を行うため、ローヤルゼリー中のコリンが蜂蜜に混入すると考えられる[15]

ちなみに、中国の明代の薬学書『本草綱目』は「臭腐神奇」という霊的な作用によって大便から蜂蜜が生成されると説いており、この説は同じく明代の産業技術書『天工開物』や日本の江戸時代の類書『和漢三才図会』に受け継がれた。日本ではこの説に対し、江戸時代の本草学貝原益軒が蜂蜜は花の蜜から作られると反論した。日本初の養蜂書『家蜂畜養記』[16]の著者久世敦行も同様に反論を行った[17]
人による蜂蜜の採集詳細は「養蜂」を参照.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{display:flex;flex-direction:column}.mw-parser-output .tmulti .trow{display:flex;flex-direction:row;clear:left;flex-wrap:wrap;width:100%;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{margin:1px;float:left}.mw-parser-output .tmulti .theader{clear:both;font-weight:bold;text-align:center;align-self:center;background-color:transparent;width:100%}.mw-parser-output .tmulti .thumbcaption{background-color:transparent}.mw-parser-output .tmulti .text-align-left{text-align:left}.mw-parser-output .tmulti .text-align-right{text-align:right}.mw-parser-output .tmulti .text-align-center{text-align:center}@media all and (max-width:720px){.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{width:100%!important;box-sizing:border-box;max-width:none!important;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow{justify-content:center}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{float:none!important;max-width:100%!important;box-sizing:border-box;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow>.thumbcaption{text-align:center}}蜂蜜採集の様子を描いたアラニア洞窟の岩壁彫刻の模写ミツバチを捕獲する養蜂家

エバ・クレーン(英語版)の研究によれば、1万年前には既に人類による採蜜が始まっていた[18]。人類は当初、野生のミツバチの巣から蜂蜜を採集していた[19]1919年に、スペインのアラニア洞窟で発見された新石器時代の岩壁彫刻は人類と蜂蜜の関係を示す最古の資料とされ、片手に籠状の容器を持って縄梯子を登って天然の洞穴に近づき、蜂蜜の採集を試みる人物が描かれている[20]。この壁画では洞穴とミツバチが非常に大きく描かれており、古代人の蜂蜜への関心の高さとミツバチに対する恐怖の大きさを表していると解釈することができる[21]

やがて人類は養蜂、すなわちミツバチを飼育して蜂蜜を得る方法を身に付けた。古代エジプトではおよそ5000年前に粘土製の管状の巣箱を用いた養蜂が始められ、巣箱を移動させながら蜜を採集させること(転地養蜂)も行われた[19]ギリシア神話には養蜂の神アリスタイオスが登場する[22]

養蜂は、閉鎖空間の中に巣を作るというミツバチの習性を利用し、内側をくり抜いた丸太や土管、わら縄製のスケップ(ドイツ語版)、木製の桶などを用いて行われる[23]。かつては巣を切り取り、押し潰して蜜を搾り取る方法が採用されていたが、これはミツバチに大きなダメージを与えるものであった[24]。現代的な養蜂では木製の枠の中に巣を作らせ、蜜が貯まると蜂蜜分離器(英語版)(遠心分離器)にかける方法が採用されている[25]。遠心分離器による採蜜法は1865年に、オーストリアのフルシュカによって考案された[26]。遠心分離機の活用によってミツバチ一群あたりの蜂蜜の採集量はおよそ5倍ないし10倍に増加した[25]

採集した蜂蜜には微量の花粉[注釈 2]や巣の破片が含まれている。市場に流通している蜂蜜の多くは、それらを濾過した後で容器に詰められている[27]が、濾過には限界があり、若干の不純物が残留する[28]

蜂は基本的に植物由来の蜜を集めるが、天候不良などによって蜜の収集が捗らない場合は、様々な糖を集める習性がある[29]。ゴミ箱の空き缶からジュースの飲み残しを集めたり、食品工場の廃棄物を集めたりといった事例が知られ、その場合は材料に由来した色彩の蜜となる[29]。例えばチョコレート工場やマラスキーノ・チェリー工場からの廃棄物を集めた蜂によって、赤色や青色の着色剤入りのカラフルな蜜ができることがあるが、こういった蜜は商品価値がほとんどない[29]
成分と性質
成分ハチミツの栄養価の代表値

蜂蜜100 gあたりの栄養価
エネルギー1,272 kJ (304 kcal)

炭水化物82.4 g
糖類82.12 g
食物繊維0.2 g

脂肪0 g
飽和脂肪酸0 g
一価不飽和0 g
多価不飽和0 g

タンパク質0.3 g


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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