蛍光灯
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さまざまな蛍光灯

蛍光灯(けいこうとう)または蛍光ランプ(fluorescent lamp)、蛍光管(けいこうかん)は、放電により飛び出した電子が、ガラス管内に封入された水銀の原子に衝突することで発生した紫外線を、ガラス管内面に塗布した蛍光体に当てて可視光線に変換する光源である。

方式は熱陰極管(HCFL; hot cathode fluorescent lamp)方式と冷陰極管(CCFL; cold cathode fluorescent lamp)方式とに大別される。一般照明用に使用される蛍光灯は一部の例外を除いてほとんどが熱陰極管方式である。冷陰極管方式は液晶モニターのバックライト用途として1990年代に開発が進み、2000年代には液晶テレビなどで大規模に使用されたが、一般照明用としての普及が進む前にLEDの普及期に入ったため、ほとんど利用されないまま淘汰された。

本稿では主に照明用途で用いられる熱陰極管方式の蛍光灯について記す。冷陰極管方式の詳細については冷陰極管を参照されたい。

最も広く使われている方式は、電極ガラス管内に置き(内部電極型)、低圧水銀蒸気中のアーク放電による253.7 nm線を使うものである。ガラス管内面に蛍光物質を塗布せず、紫外線をそのまま放出すると殺菌用蛍光灯(殺菌灯)になる。

水銀含有製品ながら、2010年代までは白熱電球などとともに家庭用の代表的な光源として広く使われていた。他の方式の光源ともども、2010年代以後に次第にLEDに置き替えられているが、蛍光灯はあまりに普及していることから、LEDへの置き換えが完了していない。

水銀含有製品であることから、RoHS指令および水銀に関する水俣条約(水俣条約)において早期の廃止が議論されて来たが、日本などの反対により、2023年現在まで、例外的に生産が継続されている[1]。2023年現在、水俣条約の第5回締約国会議に基づき、世界における電球型蛍光灯およびコンパクト蛍光灯の製造終了は2025年、直管蛍光灯を含む全ての蛍光灯の製造終了は2027年と想定されている。
原理

蛍光灯は低圧にしたガラス管内の水銀蒸気中に放電を行い、発生した紫外光(波長253.7 nm)を蛍光体で可視光に変換するもので、蛍光体の種類ごとに異なる光源色や演色性の光を得ることができる[2]
構造

蛍光灯は、蛍光物質が管内に塗布されたガラス管(白く見えるのは蛍光物質のため)と、両端に取り付けられた電極とで構成されている。電極はコイル状のフィラメントにエミッター(電子放射性物質)を塗装したもので、これが両端に2本ずつ出ている4本の端子に繋がっている。ガラス管内には、放電しやすくするために2–4 hPa(1気圧は1013.25 hPa)の封入ガス(アルゴンあるいは混合希ガス)と少量の水銀の気体が封じ込まれている。発光時の内部温度は1万 °Cに達するが、気圧が非常に低いため、ガラスが溶けることはない。

蛍光灯に使用される水銀は、金属水銀(無機水銀の一種)である[2]。水銀封入量は、1975年には40 W直管形で約50 mgだったが、2007年には約7 mgにまで削減されている[2]
点灯の仕組み

電極(陰極)に電流を流すと加熱され、高温になったエミッターから大量の熱電子が放出される。放出された電子はもう片方の電極(陽極)に移動し、放電が始まる(通常は交流を流すため、陰極・陽極は同じ形状である)。放電により流れる電子は、ガラス管の中に封入されている水銀原子と衝突する。すると水銀原子が電子のエネルギーを受け、紫外線を発生させる。発生した紫外線はガラス管内に塗布されている蛍光物質に照射され、可視光線が発生する。

白熱灯と比べると、同じ明るさでも消費電力を低く抑えられる。消費したエネルギーの変換比率は、可視放射25 %、赤外放射30 %、紫外放射0.5 %で、残りは熱損失となる。

白熱灯と違い、点灯には安定器(インバータ含む)が必要なため、直接電圧を掛けただけでは使用できない。ただし電球形蛍光灯では安定器を内蔵しているため、直接ソケットに差すだけでよい。

蛍光灯の点灯開始に当たってはフィラメントの予熱が必要なため、始動専用回路が必要である。
用途

全般照明

シーリングペンダントなどのタイプがある。家庭用72 W以上の商品はほとんどがインバータ式である。施設用・業務用は以前、磁気安定器式が多かったが、インバータ式の高周波点灯タイプが現在は広く使用されている。


局部照明(電気スタンドなど)

磁気安定器式からインバーター式に代わっている。


懐中電灯

乾電池直流をインバータで交流にし、変圧器で昇圧し点灯する。携帯できる。


液晶パネルバックライト


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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