虫食い算
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虫食い算(むしくいざん、: cryptarithm, : arithmetical restorations[1], : digital puzzle, : restoration problem, : missing figure puzzle, : dotty puzzle[2])は、いくつかの数字が伏せられた計算式を与えられ、明らかになっている部分から伏せられた数字が何であるかを推理し、完全な計算式を導き出すパズルである。解き手のヒントになるように、計算式は筆算の形で与えられることが多い。
名称

「虫食い算」という名称は、計算式が虫に食われたように穴があることに由来する。他に「暗号算」「幽霊算」などの名称もあるが、1946年(昭和21年)に出版された佐野昌一1897年(明治30年) - 1949年(昭和24年))の著書『虫食い算大会』に使用された「虫食い算」の名称が最も広く使用されている。

「虫食い算」は広義には覆面算などを含む計算式を復元する問題全般をさすが、本稿ではことわりのない限り□に数字を入れる問題のみを表す。
歴史

虫食い算の具体的な起源ははっきりしていないが、日本では、江戸時代和算書や算額などにも残されている。日本で記録に残っている古い問題としては、中根彦循の『竿頭算法』(1738年元文3年))に掲載されている問題が挙げられる[2][3]。また、欧米でも古くから計算の練習問題として使用されていた。

1906年(明治39年)にイギリスの数学者ウィリアム・ベリック1888年-1944年)は「7つの7」という作品を発表した。これは、ヒントとなる数字が7個に対して72個もの□があるという作品であり、見た目に美しく知的な虫食い算の元祖ともいわれる[4]。7つの7            □□7□□
□□□□7□)□□7□□□□□□□
       □□□□□□    
       □□□□□7□   
       □□□□□□□   
         □7□□□□  
         □7□□□□  
         □□□□□□□ 
         □□□□7□□ 
           □□□□□□
           □□□□□□
                0

意味のある単語を使用した覆面算(ワード覆面算)に関しては、ヘンリー・アーネスト・デュードニー1857年 - 1930年)が1924年に発表した SEND+MORE=MONEY という作品が最初といわれる[5]。  SEND
+ MORE
 MONEY

1931年にベルギーで数学遊戯雑誌"Sphinx"(fr)が創刊される。「虫食い算」に相当する英単語の1つであるCryptarithmeticsは同誌によって提唱された[6]

1940年代になると、主流は虫食い算からワード覆面算に移行していく。1947年にアメリカのアラン・ウェインは最初の数詞覆面算を発表している[6]。その後カナダのJ.A.ハンターがワード覆面算をAlphameticsと命名して普及に努めた[6]
戦後の日本

日本においては和算による虫食い算も存在したが、昭和初期には西洋の虫食い算が紹介されている。戦前から戦中に虫食い算を紹介した人物として高木茂男は藤本幸三郎、楠本虎四郎、佐野昌一、江口雅彦の4人を挙げている[7]。このうち、楠本以外の3人は当時紹介のみで創作を行っていなかったとされる。
1946年(昭和21年)
佐野昌一虫食い算大会』が出版される。
1947年(昭和22年)
文部省発行の算数・数学の教科書に虫食い算が掲載される[7]
昭和20年代
大学入試の進学適性検査の問題として毎年のように虫食い算が出題された[7]。この時期に創作を開始した人物としては泉行蔵、森本清吾、夏目康男、江口雅彦、佐藤米吉らの名前が挙げられる[7]。高木茂男が「年賀虫食い算」を始めたのもこの時期である[7]
1964年(昭和39年)
雑誌『数芸パズル』創刊。虫食い算を含む様々なパズルの発表の場が与えられた。
1976年(昭和51年)
雑誌『詰将棋パラダイス』に「虫食算研究室」のコーナーができる。読者から問題・解答を募る形式のため、多くの作品が寄せられた。丸尾学・山本行雄・浅尾和義が担当を勤め、22年続いた。
1980年(昭和55年)
雑誌『パズル通信ニコリ』創刊。創刊当初から虫食い算・覆面算に数ページを割いており、17号からは「スージーコーナー」という独立したコーナーとなっている(71号まで)。5号より毎号テーマを決めて覆面算を募集していたが、投稿数低下のため107号(04年夏号)からは不定期連載となった。着順発表と呼ばれる覆面算の解答競争も行われていた(現在でも同コーナーは存在するが、パズルは覆面算に限らなくなっている)。
ルール

□には一つの数字が入る
[8]

最上位の□には0は入らない。ただし、小数点で始まる小数の場合は最上位に0が入ることがある。また、小数点で始まる小数の場合は最下位に0が入らない[8]

1桁の□があった場合、最上位の条件を満たすので0を入れないとする考え方が一般的である。

狭義の虫食い算の問題では1つの□に入る数字は1つであるが、広義の虫食い算には空欄に複数の数字が入ることもある。筆算でない問題[注釈 1]が多いが、筆算でも上位または下位の数字をまとめて隠すことがある[9]

解答は1つに定まる場合が大原則であり[8]、これを.mw-parser-output ruby.large{font-size:250%}.mw-parser-output ruby.large>rt,.mw-parser-output ruby.large>rtc{font-size:.3em}.mw-parser-output ruby>rt,.mw-parser-output ruby>rtc{font-feature-settings:"ruby"1}.mw-parser-output ruby.yomigana>rt{font-feature-settings:"ruby"0}一意解(いちいかい)ということがある。2つ以上の解がある場合に詰将棋の用語を借りて余詰(よづめ)のある虫食い算という。解が1つもない場合には詰将棋の用語を借りて不詰(ふづめ)の虫食い算という[10]
例題

虫食い算大会 第三会場(2)の問題 [11]   □7□6□ 
 ×     7 
  3□29□6 

特別な虫食い算

虫食い算の中には、ヒント・形状・制約等から特別な名前を冠される物がある。
孤独のn

ヒントとして数字が1個のみ提示されているものを総称して「孤独のn」と呼ぶ[12]。割り算において割り切れたことを示す最下段の0は除いて考える。この呼称は、1923年頃にE・F・オドリングが発表した作品「孤独の7」に由来する[13]。孤独の7       □7□□□
□□□)□□□□□□□□
    □□□□    
      □□□   
      □□□   
      □□□□  
       □□□  
        □□□□
        □□□□
           0

完全虫食い算

ヒントとして数字が全く提示されていないものを完全虫食い算と呼ぶ。まったく条件のつかない完全虫食い算の例としては、□+□+□+□+□+□+□+□+□=□

がある[14]。しかし、通常は何らかの制約条件(小数点・循環小数・使用数字の制限など)が加えられる。このとき、制約条件の一つとして割り算において割り切れたことを示す最下段の0はあってもよい[14]。例題 □には0以外の偶数が入る。 □□□
×  □□
 □□□
□□□ 
□□□□

小町虫食い算

□の中に1?9(あるいは0?9)の数字が1つずつ入るように指定したものを小町虫食い算と呼ぶ。この呼称は、1?9を使い100を表す小町算にちなんでいる[15]。例題 小町虫食い算 ――1から9までの9種の数字をはめこむ(9と4はすでに使いずみ)[16] 94 ◻ ◻ ◻ ◻ ◻ ◻ ◻ = 100 {\displaystyle 94{\frac {\square \square \square \square }{\square \square \square }}=100}

0?9を2個ずつ・3個ずつ使用する問題もあり、それらは「ダブル小町」「トリプル小町」などとも呼ばれる。1943年にオランダの数学者Fred. Schuh(1875年 - 1966年)はダブル小町完全虫食い算という条件作を発表している[17]。ダブル小町完全虫食い算 ―― □のなかには0から9までの数字が2つずつ入る。


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