虫の音
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鳴いているツクツクボウシ。2013年9月東京

虫の音(むしのね)とは鳴き声のことである[1]。虫を飼ってその鳴き声を楽しむ文化は古代ギリシャまで遡ることができ、ヨーロッパアジアなど世界各地で見られる[2]

日本では、1978年のベストセラー本の影響で「日本人には虫の声が聞こえ、外国人には雑音として聞こえる」という神話が広く浸透し、専門家から否定された後も繰り返しメディアに取り上げられている[3][4][5][6]

この項では、セミコオロギキリギリスなどの昆虫成虫が同種個体間でのコミュニケーションのために発する音、ならびにそれら虫の音を聞き分け、季節や情緒を感じ、鑑賞する文化についても述べる。.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}.mw-parser-output .listen .side-box-text{line-height:1.1em}.mw-parser-output .listen-plain{border:none;background:transparent}.mw-parser-output .listen-embedded{width:100%;margin:0;border-width:1px 0 0 0;background:transparent}.mw-parser-output .listen-header{padding:2px}.mw-parser-output .listen-embedded .listen-header{padding:2px 0}.mw-parser-output .listen-file-header{padding:4px 0}.mw-parser-output .listen .description{padding-top:2px}.mw-parser-output .listen .mw-tmh-player{max-width:100%}@media(max-width:719px){.mw-parser-output .listen{clear:both}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .listen:not(.listen-noimage){width:320px}.mw-parser-output .listen-left{overflow:visible;float:left}.mw-parser-output .listen-center{float:none;margin-left:auto;margin-right:auto}}ツクツクボウシの鳴き声(ソロ)川崎市 早野聖地公園2011年9月18日午後4時50分頃採音。再生時間 36秒、466KB。この音声や映像がうまく視聴できない場合は、Help:音声・動画の再生をご覧ください。ツクツクボウシの鳴き声(合唱、ほかのオスの妨害音「ジー!」が入る)川崎市 早野聖地公園、2011年9月18日午後4時40分頃採音。再生時間 39秒、500KB。この音声や映像がうまく視聴できない場合は、Help:音声・動画の再生をご覧ください。
鳴く虫の種類

よく知られる鳴く虫の種類として、コオロギ・キリギリスの仲間(バッタ目)と、セミの仲間がいる[7]。種類によって鳴き声に特徴があり、昼に鳴くものと夜に鳴くものがいる[7]。人間の可聴域は20 - 20000Hzの周波数帯域であり、一部の昆虫は非常に高周波で鳴くため人間の耳にはほとんど聞こえない[7]。約10,000Hz前後の高周波の鳴き声は、人間にはジーッというノイズに感じる[8]。年をとると高い音が聞こえにくくなるが[9][10]、低いカンタンの声は高齢者にも聞きやすい[11]

日本には良い声の多様な鳴く虫が生息し[12][13]、どの県でも90 - 100種の鳴く虫がいる[14]。音を出すキリギリス類は129種、コオロギ類は110種が知られる[14]
虫が鳴く目的フタホシコオロギの誘因歌(左)と求愛歌(右)の周波数スペクトル

オスが鳴くことが多く、メスを引き付けて繁殖することを主な目的とする[15][16][17]。他にセミが鳴く目的には、「仲間を呼び寄せ、大きな音にすることで外敵に狙われにくくする[15][17]」、「危険を仲間に知らせる[15]」などがあり、コオロギには「縄張りを知らせる[18]」、「喧嘩の際の威嚇[18]」などがある。
虫が鳴く仕組み

羽などをこすり合わせる、音を共鳴させる、体を振動させる、外骨格を打ち付けるなど、様々な方法で鳴き声が作られている[19]

セミは、オスの腹部に発音膜という鳴き声を出すためだけの器官があり、その発音膜を筋肉でふるわせて音を出し、腹部の空っぽの空間で音を共鳴させて大きくする[20][21]。鳴き声の周波数は2,000 - 9,000Hzと言われ、ほとんどが10,000Hzを下回る[22][23]ウンカはセミと同様の発音器を持ち、腹部の振動で乗っている草を振動させて交信するが、人間の耳には聞こえない[24][21][25]

コオロギ・キリギリスの仲間は羽同士または羽と肢をこすりあわせて鳴き声を出す[22]。羽の一方にはヤスリ状のギザギザがついており、もう一方にはとがったツメがあり、ツメをギザギザにこすりつけることで、羽全体が振動して音がでる[26]。鳴く時は羽を立てるので、腹部と羽との間に大きな空間ができ、音が共鳴して大きくなる[22]。鳴き声の周波数はカンタンが約2,000Hz、スズムシは4,500Hz[27][28]、他のコオロギ類は4,000 - 5,000Hz、キリギリスは9,500Hz、クサキリクビキリギスなどは10,000Hz以上と言われている[22][23]
日本の鳴く虫文化江戸時代の虫聞きの名所・道灌山(江戸自慢三十六興、歌川広重駕籠(かご)型の虫籠、1850年頃

万葉集(8世紀後半、奈良時代)にはコオロギの歌が7首ある[29]。11世紀末(平安時代)ごろから、鳴く虫を採り宮中へ献上する「虫撰(むしえらみ)」が始まり、捕らえた虫を庭に放して声を楽しむ「野放ち」や、野に出て鳴き声を聴く「虫聞き」などが行われた[29]。『源氏物語』(1008年)には採ってきたスズムシやマツムシの鳴き声を楽しむ様子が書かれている[2]

江戸時代になると、貴族や大名の鳴く虫を楽しむ文化が庶民にも広がり[30]、日本各地の虫聴きの名所に人が集まるようになる[2]。飼育技術も進歩し、江戸時代の中期には竹細工の虫かごに入れたキリギリス、マツムシ、スズムシ、クツワムシ、セミなどが「虫売り」たちによって庶民に売られるようになった[30][31]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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