薄膜太陽電池
[Wikipedia|▼Menu]
.mw-parser-output .hatnote{margin:0.5em 0;padding:3px 2em;background-color:transparent;border-bottom:1px solid #a2a9b1;font-size:90%}

この項目では、狭義の太陽電池、つまり太陽電池のひとつのセルについて説明しています。

太陽電池を複数集めて枠に入れパネル状にしたものについては「ソーラーパネル」をご覧ください。

発電方式については「太陽光発電」をご覧ください。

単結晶シリコン型太陽電池色素増感太陽電池

太陽電池(たいようでんち、: solar cell)は、光起電力効果を利用して、光エネルギー電気エネルギー電力)に変換する[1]電力機器である。主に、太陽光から電力を得る目的で使用される。"電池"と表現されるが、電力を蓄える蓄電機能は持っていない。タイプは大きく分けてシリコン系、化合物系、有機系がある。
用途結晶シリコン型太陽電池の代表的構造

太陽電池の用途と、採用されている理由を以下に挙げる(太陽光発電の項も参照のこと)。

電池の交換が不要となる ⇒電卓腕時計携帯電話の充電器、懐中電灯ラジオ

給電線(外部商用電源との接続)の配線工事が不要となる ⇒道路標識、庭園灯、街路灯、駐車券発行機、自動販売機太陽熱温水器、カーバッテリーの充電器

系統連系不要で発電できる ⇒海洋や山岳地帯の観測機器、人工衛星宇宙ステーション、離島、非常用電源など

化石燃料の消費による環境負荷を低減できる ⇒家庭用太陽光発電設備、産業用太陽光発電所、ソーラーカーソーラープレーン、太陽熱温水器

長期間使用する場合に電気料金上のメリットが出る ⇒家庭用太陽光発電設備、産業用太陽光発電所

種類

光吸収層の材料、および素子の形態などにより、多くの種類に分類される。それぞれ異なる特徴を持ち、用途に応じて使い分けられている。
シリコン系

シリコンを用いる太陽電池は、a.材料の性質の観点からは、大きく結晶シリコンとアモルファスシリコンに分類することができる。またそのb.形態の観点から、薄膜型や多接合型などを分別することができる。その形式や性能は非常に多様であり、近年は複数の型を複合させたものも実用化されている。このため、ここに挙げた分類法も絶対のものではないことを付記しておく。太陽電池に用いられるシリコンの純度、格子欠陥は集積回路用に比べて基準がゆるく、これまでは集積回路用のシリコンが用いられてきたが、太陽電池の生産量が増加するに従い、ソーラーグレードのシリコン材料の供給が望まれてきた。シリコンの高純度化には従来、水素とシリコンを反応させて蒸留して純度を高める化学的な手法が使用されていたが、近年は冶金的な手法により、真空中で電子ビームを照射する事によってシリコン中の不純物の気化精製、凝固精製を行い不純物を除去する事により、純度を高めるプロセスも開発されている[2]
材質の観点による分類

結晶シリコンの禁制帯幅は 1.12 eV であり、太陽電池に用いた場合、近紫外域から 1.2 μm 程度までのを吸収して発電できる。間接遷移型の半導体であるため光吸収係数が低く、実用的な吸収量を得るには最低200μm程度のシリコン層が必要とされてきた。しかし表面テクスチャなどを用いた光閉じ込め技術が発達してきており、近年は結晶シリコンであってもシリコン層が数 μm?50 μmなどと非常に薄く、薄膜太陽電池に分類できるものも開発されている。c-Siなどと略記される。
単結晶シリコン型
高純度シリコン単結晶ウエハを半導体基板として利用するもので、最も古くから使われている。変換効率は高いが高純度シリコンの利用量が多く、生産に必要なエネルギーやコストが高くなる。そのため近年は下記の多結晶シリコンや薄膜シリコン太陽電池に移行が進んでいる。
多結晶シリコン型
結晶の粒径が数mm程度の多結晶シリコンを利用した太陽電池。他のシリコン半導体素子の製造過程で生じた端材やオフグレード品のシリコン原料を利用して製造できる。単結晶シリコンに比べると面積あたりの出力(変換効率)は落ちるが、生産に必要なエネルギーは少なく、エネルギー収支やEPT、GEG排出量の面では単結晶シリコンより優れる。コストと性能のバランスの良さから、現在の主流となっている。近年はウエハを薄型化するコスト削減技術の競争が進んでおり、2004年の300μm厚から、2010年には150μm厚に半減すると予想されている[3]。また、ガラス上に非常に薄い多結晶シリコン太陽電池を形成する、CSG(またはSOG)技術の普及も有望視されている[4]化学気相成長により成膜するため生産過程でSiH4、NH3、H2などのガスを使用する。
微結晶シリコン型
微細な結晶で構成された薄膜をCVD法などにて製膜するものである。多結晶型の1種と見なせるが、製膜条件によってはアモルファス的な性質も併せ持つ。μc-Si などと略記される。比較的新しい技術で、インゴットを切断する手間が省け、資源の使用量も削減できるほか、製法によっては200℃程度の低温での製膜が可能で基板を選ばない、などの特長がある。今後、広範囲な応用が期待されている[5]化学気相成長により成膜するため生産過程でSiH4、PH3、B2H6,GeH4、H2などの気体を使用する。
アモルファスシリコン型
シランガスから化学気相成長 (CVD) させてできるアモルファスシリコンを利用した太陽電池で、a-Si などと略記される。形態的には薄膜シリコン太陽電池にも分類できる。アモルファスシリコンは、タウツギャップと呼ばれる通常 1.75?1.8 eV 程度のエネルギーギャップと、それより小さな裾準位を介したエネルギーギャップを持つ。結晶シリコンに比べてエネルギーギャップが大きいため、高温時も出力が落ちにくい特性を持つ。太陽電池にそのまま用いた場合は主に 700 nm 以下の短波長の光が利用され、見た目には赤っぽく見える。結晶構造の乱れにより、光学遷移にフォノンの介在を必要とせず、光吸収係数が高い。このため 0.5 μm 程度の厚さでも実用になり、使用するシリコン原料が少なく、エネルギーやコスト的にも有利である。極端な低照度下での効率が高いことや、蛍光灯の短波長光に感度があることから、主に電卓など室内用途に使われてきた。太陽光で劣化しやすいのが欠点だったが、技術の進歩により長寿命化され(アモルファスシリコンの光劣化参照)、近年は屋外用にも市販されている。エネルギー変換効率が10%以下と低い(設置面積が大きくなる)のも欠点だったが、多結晶シリコン等と積層した多接合型とすることで高性能化されている。また、タウツギャップの大きさはドーピングによって1?2eV程度の範囲で可変であり、これを利用してアモルファス層のみで構成された多接合型太陽電池も実用化されている。近年は下記の薄膜太陽電池の一種として論じられることも多い。化学気相成長により成膜するため生産過程でSiH4、PH3、B2H6、GeH4、H2などの気体を使用する。また、アモルファスシリコン太陽電池の開発過程で培われた大面積ガラス基板上での半導体製膜技術はTFT液晶ディスプレイパネルの生産技術にも役立った。
形態の観点による分類
薄膜シリコン型
シリコン層の厚みを薄くすることで、使用原料、生産に要するエネルギー、コストなどの削減をはかったもの。比較的新しい技術で、様々な形態が存在するためひとくくりにするのは難しい。広義には省資源化の意味で、従来の数百μmよりも薄いもの全般(例えば 100 μm 以下)を指す。狭義には柔軟性なども充分に得られる厚みの意味で、例えば 10 μm 以下のものを指す。シリコン融液から表面張力でリボン状に引き出すストリングリボン法
[6]を用いた型や、CVD法などを用いる微結晶型などが代表的である。厚みは生産方法の選択によって100nm(0.1μm)単位から数百µm以上まで連続的にカバーでき、目的に応じて使い分けられる。インゴットから切断したウエハを用いて製造する場合は通常数百 μm 単位になるのに対し、融液から直接薄膜の形にするリボン法などでは100 μm 以下、CVD法などを用いた場合(アモルファス型や微結晶型など)では0.5?数μmまで薄くなる。薄膜のままでは充分に入射光を吸収できないため、表面テクスチャや中間層を用いて光学的特性を制御し、入射光の利用率を高める工夫が施される(ライトトラッピング)。効率の低下分よりも生産時の使用エネルギーやコストが多く削減できるため、環境負荷の観点から優秀なものが多い
ハイブリッド型(HIT型)
結晶シリコンとアモルファスシリコンを積層した太陽電池である。通常の結晶シリコンに比して変換効率が高く、温度特性も良いなどの特長を有する[7][8]。シリコンの使用量が減らせる他、両面受光型にも出来る。日本の三洋電機が主な製造者である。なお、吸収波長域の異なる材料同士を積層するという点では下記の多接合型太陽電池に似るが、pn接合は1つ(単接合)である。
多接合型(タンデム型)
吸収波長域の異なるシリコン層を積層したもの。アモルファスシリコンと各種の結晶シリコンを積層したものの他、通常のa-Siに吸収波長域の異なるa-SiCやa-SiGeを積層したものなどが開発・実用化されている。高効率で温度特性などに優れるものが多い。多接合型太陽電池の項を参照。
球状シリコン型
球状シリコン型太陽電池とは、無数の球状シリコン粒子(直径1mm程度)と、集光能力を上げる直径2?3mmの凹面鏡(電極を兼ねる)を組み合わせた太陽電池のことである[9]。一般的な結晶シリコン型の1/5程度のシリコン使用量で、アモルファスシリコンよりも高い変換効率が期待できる方式である。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:87 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef