欧州連合の著作権法(おうしゅうれんごうのちょさくけんほう)は、欧州連合における著作権法の骨子を説明する記事である。
欧州連合の著作権法はいくつかの欧州連合指令から成り、これらの指令が加盟国に欧州司法裁判所の解釈に従い法令を制定して国内法化することを義務付けている。欧州連合指令は欧州連合加盟国の法律を調和させるために可決される。直近に成立した指令は、2019年のデジタル単一市場における著作権に関する指令 (DSM著作権指令) である。 さらに、欧州連合における著作権は、欧州連合が加盟している国際条約(TRIPS協定や、すべての加盟国が締約国となっている条約(ベルヌ条約など))にも依拠している。その他の問題は、加盟国の国内法の一部である。 ヨーロッパにおいて(そしてそこを超えて)著作権法を調和させる試みは、1886年9月9日の文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約の署名にまで遡ることができる。欧州連合の全加盟国はベルヌ条約の締約国であり、今日では、その条項に従うことは加盟前の義務になっている。欧州経済共同体は、1991年にコンピュータプログラム指令
歴史
情報社会指令を国内法化しなかった事案に対する6件の判決 [1] に見られるとおり、著作権に関する各種指令の実施は、他の多くの主題よりも一層激しい議論を呼んできた。伝統的に、著作権法は加盟国間で大きく異なっており、特にコモン・ロー法域(キプロス、アイルランド、マルタ[2])と大陸法諸国との間で大きく異なっている。著作権法も、全般的に見れば、世界貿易機関とグローバリゼーションに対する抵抗と結びつきながら変化していっている。 著作権を対象とする欧州司法裁判所の初期の判断は、欧州経済共同体設立条約第6条(旧第7条)(差別待遇禁止条項)及び第36条(産業・商業財産権(著作権を含む。)の保護により正当化されるときは加盟国間の貿易の制限を認める条項)に基づいて行われていた[3]。 指令は、条約の域内市場条項、特に同条約第95条(旧第100a条)に基づき立法されていた。 欧州連合法は、以下の権利を保護する。
法源
保護される権利
著作者、実演家、レコード及び映画の製作者並びに放送機関の複製権[4]
著作者、実演家、レコード及び映画の製作者並びに放送機関の公衆送信権[5]
著作者[6]並びに実演家、レコード及び映画の製作者並びに放送機関[7]の頒布権
実演家及び放送機関の固定権[8]
著作者、実演家、レコード及び映画の製作者の貸与権
実演家、レコード製作者及び放送機関の放送権[12]
著作者、実演家、レコード製作者及び放送機関の公衆送信権[13]
著作者のコンピュータプログラムの複製権・頒布権・貸与権[14]
著作者人格権は、加盟国の国内法の問題と考えるのが通例であるが、加盟国の中には、上記の権利を、その中でもとりわけ公衆送信権を、著作財産権よりもむしろ著作者人格権に分類する例がある。 著作者の権利は、存命中及びその死亡のときから70年間保護される[15]。そこには美術家の追及権が含まれる[16]。映画その他の音声・映像作品については、加盟国の国内法で著作者と考えられていると否とを問わず、総監督(常に音声・映像作品の著作者になると考えられている。)、脚本の著作者、台本の著作者及び映画若しくは音声・映像作品で使用するために特に創作された音楽の作曲者の全てが死亡したときから起算して70年間という基準が適用される[17]。 実演家の権利は実演の頒布又は伝達から50年間存続するが、実演それ自体から50年間公衆に伝達されなかったときは、同期間が存続期間となる[18]。レコード製作者の権利は、レコードの発売から50年間存続するが、レコードが公衆に伝達されてから50年間発売されなかったときは、同期間が存続期間となり、レコードが公衆に伝達されなかったときは、その創作から50年間が存続期間となる[19]。 映画の製作者の権利は、当該映画の興収への伝達から50年間存続するが、その創作から50年間公衆に伝達されなかったときは、同期間が存続期間となる[20]。
保護期間