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「葉」のその他の用法については「葉 (曖昧さ回避)」をご覧ください。
葉の概略図(1?6までが葉)
葉先(葉尖、leaf apex)[1][2][注釈 1]

中央脈 (central vein)[4][注釈 2]

側脈 (lateral vein)[注釈 3]

葉身 (lamina)

葉縁 (leaf margin)[注釈 4]

葉柄 (petiole)

側芽(lateral bud、この場合特に腋芽 axillary bud)

(stem)[注釈 5]

葉(は、: leaf[注釈 6])は、陸上植物の植物体を構成する軸性器官であるに側生する器官である[7]維管束植物胞子体においてはおよびとともに基本器官の一つで、シュート頂から外生的に形成される側生器官である[8]。普通、茎に側生する扁平な構造で[8]、維管束からなる脈系を持つ[7]コケ植物茎葉体配偶体)が持つ扁平な構造も葉と呼ばれる[9][7]

一般的な文脈における「葉」は下に解説する普通葉を指す[10]。葉は発達した同化組織により光合成を行い、活発な物質転換や水分の蒸散などを行う[8]

葉の起源や形、機能は多様性に富み、古くから葉の定義やとの関係は議論の的であった[7][8]ゲーテ以降、葉を抽象的な概念に基づいて定義しようという試みが形態学者によりなされてきたが、ザックス以降、発生過程や生理的機能、物質代謝、そして遺伝子発現や機能などに解明の重点が置かれている[8]。茎と同様にシュート頂分裂組織に由来するが、軸状構造で無限成長性を持つ茎とは異なり、葉は一般的に背腹性を示し、有限成長性で腋芽を生じない[8]。維管束植物の茎はほぼ必ず葉を持ち、茎を伸長させる分裂組織は葉の形成も行っているため、葉と茎をまとめてシュートとして扱う[11]
進化的起源

葉の進化的起源は系統によって異なり、コケ植物の茎葉体(配偶体)が持つ葉 (phyllid)、小葉植物胞子体が持つ小葉[注釈 7]、そして種子植物の胞子体が持つ大葉は独立に進化してきた[7][9][12]。大葉は形態の変異に富み、針葉などもこれに含まれる[7]。また、大葉植物の内部系統でも、葉は最大で11回独立に進化してきたと考えられている[13]。特に、大葉シダ植物の胞子体が持つ羽葉トクサ類楔葉は被子植物の大葉とは異なる起源を持っていると考えられている[14]。大葉シダ植物の中ではマツバラン目では、葉を持たず、茎には葉状突起が側生する[15]

コケ植物の葉 (phyllid, phyllidium)[16]は配偶体にできる点で大きく異なり、普通1細胞層からなり、維管束がなく中肋という軸で支持され、維管束植物の葉とは起源も形態も本質的に異なるものである[7][17]

葉の起源を含む包括的な維管束植物の形態進化はヴァルター・マックス・ツィンマーマンが提唱した仮説、テローム説によって解釈される[18][19]。古典形態学の概念では生物がある「原型」を変形させることで進化したと考えらえており、テローム説もその流れに則っている[20]。陸上に進出した当時の陸上植物は二又分枝を行う軸により植物体が構成されていた[18]。ツィンマーマンはそれに基づき、そういった植物は形而上学的な単位である「テローム」及び「メソム」と呼ばれる軸から体が構成されていたと考え、それが癒合や扁平化などの変形をし陸上植物の根や茎や葉を形づくったと考えた[19][20]。二又分枝の末端の枝をテローム、それ以外のテロームを繋ぐ軸をメソムと呼び、二又分枝の体制はそれらの軸を単位として構成されていたとした[20]
大葉大葉シダ植物の基部で分岐したラコフィトン Rhacophyton の化石。主軸と側軸に分かれているが、枝は二又分枝を行っている。「羽葉」も参照

大葉(だいよう、または大成葉、megaphyll, macrophyll)は葉身に多数の葉脈が形成される葉である[21]。種子植物の大葉と大葉シダ植物の羽葉(うよう、frond)、そして大葉シダ植物のうち基部トクサ類がもつ楔葉(けつよう、sphenophyll、または輪葉[22]、輪生葉[23]とも)が大葉に含まれる[24]。これらの葉はかつては相同であると考えられたこともあったが[24]、現在では何れも進化的起源や性質が異なると考えられている[12]。大葉植物(特に被子植物と大葉シダ植物)の葉跡[注釈 8]の上側の髄と皮層を繋いでいる部分には一次木部細胞に接して柔細胞が形成されている[25]大葉シダ植物羽葉では茎から葉原基に向かって葉跡が伸長する[25]。羽葉の葉跡の上にある柔組織を葉隙(ようげき、leaf gap)と呼ぶ[25]。それに対し、被子植物の葉は葉跡が葉原基から茎に向かって伸長する求基的葉である[25][26]。被子植物の葉跡の上にある柔組織は空隙(くうげき、lacuna)と呼ぶ[25]。それぞれの葉の起源も形成過程も異なるため、葉隙と空隙は相同ではないと考えられている[25]。葉隙や空隙の存在は小葉との識別点とされてきたが、葉隙の有無は完全に系統を反映しているわけではない[21]トクサ類種子植物真正中心柱では葉柄に入る葉跡が多数あり、それぞれが茎の維管束から仮軸分枝によって供給されるため葉隙はなく、メシダ科など薄嚢シダ類でも網状中心柱が小型化すると葉跡が仮軸分枝するため、見かけ上葉隙がなくなる[21]。また、トクサ類の楔葉は節に輪生し、小葉のように葉跡は1本であるが、古い時代のものでは脈が又状分岐するのもある[22][27]。構造が単純化した現生のトクサ属のものは葉緑体を持たず光合成は行わないようになっており、葉の基部が隣同士で融合して状の葉鞘を作るものがある[22][28]。しかし化石植物の楔葉はそれより大型であり、プセウドボルニア Pseudobornia では2回二又分枝した軸に細かい葉片が鳥の羽状につく形態であった[28]。かつては葉隙の有無に焦点が当てられていたこともあり、葉隙ができないトクサ類の楔葉は小葉であるとされていた[29]

大葉植物の葉はテローム説における癒合および扁平化により形成されたという解釈がなされている[30][31]。大葉の完成には、テローム軸が癒合および扁平化することに加えて背腹性と左右相称性の獲得が必要であった[32]。現生大葉植物のステム群であるトリメロフィトン類 Trimerophytopsida では、二又分枝の2本の枝に強弱が生じ不等二又分枝を行うか、無限成長をする主軸と側軸の分化が起こり、単軸分枝するようになった[30][31]。また、側軸が平面に展開する傾向がある[31]。この2つの性質は大葉の形成途上と考えることができ[31]、葉の祖先である軸が側生器官の特徴を獲得した段階であると考えられる[32]。軸の癒合による葉面形成はトリメロフィトン類ではまだ進んでおらず、そこから派生した各系統で葉面形成が起こったと考えられている[13]

テローム説では二又分枝を行っていた植物が持つテローム軸が癒合し、扁平化することで大葉植物が持つ扁平な葉が形成されたと考えられているが、すでに出来上がった枝が癒合することはないため、テローム説を現代的な生物学に対応させて考えれば、複数の器官の集まりである枝系を作っていた発生遺伝子系が1つの器官である葉を作る発生遺伝子系へと進化したと解釈できる[30]。しかし、現生植物の葉でシュート頂分裂組織で機能する遺伝子制御系が機能していても、葉にシュート頂分裂組織の遺伝子系が流用されているだけかもしれないという可能性が否定できず、側枝から葉が進化した証拠としては乏しい[33]。また上記の通り、大葉は多数回起源であり、それぞれの葉形成の仕組みが共通しているとは必ずしも言えない[34]

中期デボン紀から後期デボン紀にかけての種子植物の祖先における扁平な葉身の獲得は、葉の進化において鍵となるイベントであった[35]。この扁平な葉身は光の捕捉効率を最大化させるとともに、背腹性を獲得し、葉に向軸側背軸側の2領域を作り出した[35]。向背軸極性を決めるのはYABBY遺伝子群とKANADI遺伝子群である[36]。YABBY遺伝子群は被子植物の葉形成に関わり現生裸子植物でも保存されているが、種子植物以外には存在しない[34][37]。そのため、大葉形成の遺伝子系は種子植物か木質植物の共通祖先でできあがった可能性がある[37]

大葉シダ植物においては、化石植物群であるコエノプテリス類 Coenopteridales のスタウロプテリス科とジゴプテリス科では茎と羽葉の分化が不十分で、不完全な背腹性を獲得していた[38]。葉柄に当たる部分の維管束はまだ放射相称で葉態枝と呼ばれ、分枝が進んだ頂端付近の羽軸や小羽軸で背腹性が生じる[38]。現在の大葉シダ植物が持つ羽葉では背腹性および左右相称性を獲得している[26]
小葉突起仮説に基づく小葉の起源。

小葉(しょうよう、または小成葉、microphyll)は原生中心柱や板状中心柱から葉隙を形成せず生じ、通常1本のみの葉脈が通る葉である[39][21]。小葉植物の葉の起源は、突起仮説に基づいた解釈が有力だと考えられている[39][19]。ほかにテローム説の1つであるテローム軸の退縮説、胞子嚢を頂生する軸の退化説がある[19][40]。後二者の仮説は証拠に乏しいが、完全に否定されたわけではなく、今後の小葉類の分子発生学的研究による解明が俟たれる[19]


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