草庵
[Wikipedia|▼Menu]

草庵(そうあん)とは、日本上古から中世期に出現する建築様式で、「草」は草葺ないし草壁を意味する。

古くから日本では農事用の仮小屋をイホ、イホリ、カリホと呼び、万葉集など上代の文学では「故郷を離れた孤独な住まい」という情趣を込めて詠み込まれている[1]

日本に寺院が造られるようになった飛鳥時代から奈良時代にかけて、本院とは別に人里離れた山林に庵を結んで修行を行う山林修行が行われていた[2]。山林修行は教学と併せて修めるべきものと考えられ、空海最澄も草庵を結んで修行を行っている。密教修験道が隆盛した平安時代には、山林修行はますます盛んとなった。

山林修行に使われた草庵も農事用の仮小屋と「仮初めの住宅」という共通する意味からイホと呼ばれた[1]。当時のもので現存する草庵はないが、廃寺となった山林寺院の遺跡や、現在山林にある寺院には草庵の系譜を引くものもあると考えられる[2]

中世にも出家した僧や隠遁者が人里離れて草庵に住んだ。鴨長明方丈記』などの文学や絵巻物に見られ、明恵一遍西行日蓮らが草庵を拠点とした宗教活動を行なっている。

撰集抄などの仏教説話に見られる草庵の描写では、木の枝や木の葉、竹、筵など粗末な材料で周囲を囲っただけの住処であったという。これは行者の生活が貧しいほど物欲や我執から遠く、聖性や陰徳が高いという仏教説話ならではの文学的な表象であり、実際の草庵が粗末な小屋ばかりということではない[1]小泉和子に拠れば草庵は宗教空間である持仏堂と日常生活を送る居間、世辞の三つの空間で構成されるという。
脚注^ a b c 小野 1992, pp. 115?125.
^ a b 山口県 2008, pp. 1047?1051.

参考文献

玉井哲雄「草庵と日本人」『朝日百科 世界の文学 日本U』

小野恭平 (1992). “中世初期の仏教説話にみる仏道修行者の庵 : そのイメージと評価について”. 日本建築学会計画系論文報告集 (日本建築学会) 436. doi:10.3130/aijax.436.0_115. 

山口県(編)『山口県史 通史編 原始・古代』山口県、2008年。 

関連項目

庵戸宮(古代日本の皇居)

草庵風茶室

方丈










建築史
古代

新石器時代建築 (en)

メソポタミア建築 (en)

古代エジプト建築

古代中国建築 (en)

ドラヴィダ建築 (en)

ヒンドゥー寺院建築 (en)

マヤ建築 (en)

古典建築 (en)

メソアメリカ建築 (en)

アケメネス朝建築 (en)

ギリシア建築メガロン

エトルリア建築 (en)

ローマ建築

インカ建築 (en)

サーサーン朝建築 (en)

ビザンティン建築

中近世

中世建築 (en)

カロリング朝様式 (en)

オットー式建築

ロマネスク建築

ノルマン様式建築


ゴシック建築

ルネサンス建築

北方ルネサンス建築

パッラーディオ建築


マニエリスム

バロック建築

ピョートル・バロック

モスクワ・バロック

ウルトラバロック


ロココ建築

新古典主義建築

帝政様式

ビーダーマイヤー

歴史主義建築

ネオ・ビザンティン建築

ゴシック・リヴァイヴァル建築

ネオルネッサンス建築

ロマネスク・リヴァイヴァル建築


地域別

ヴァナキュラー建築

トラディショナル・サクセション・アーキテクチャ

西洋

ハーフティンバー様式

チューダー様式

ハレンキルヘ

プラテレスコ (en)

ムデハル様式

マヌエル様式

第二帝政期建築

プロティロ

コロニアル

ソッド・ハウス

ビザンティン建築

東欧諸国のビザンティン建築

ロシア建築


アジア

イスラーム建築

サファヴィー建築

オスマン建築


ペルシャ建築 (en)

仏教建築

インド建築 (en)

ホイサラ建築 (en)

ヴィジャヤナガラ建築 (en)

後期チャールキヤ建築 (en)

ムガル建築

シク建築 (en)


ネワール建築 (en)

中国の建築

朝鮮の建築 (en)


日本

日本建築史

古代中近世

神社建築

神社建築

八幡造

日吉造

権現造

春日造

比翼入母屋造

流造

神明造

住吉造

大社造

中山造

祇園造


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:63 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef