茅ヶ崎映画祭(ちがさきえいがさい)は、2012年6月より神奈川県茅ヶ崎市で開催されている映画祭。 キャッチコピーは「街と人がつながる、手作りの映画祭」。映画館やホールでの上映のみならず、市内の旅館や飲食店などを上映会場としているのが特徴。過去には美容室や保育園、ゴルフ場、海岸でも上映された。 茅ヶ崎映画祭実行委員会が主催している。2023年10月に第12回が開催された。 茅ヶ崎映画祭の発起人は市内で自主上映会を行なっていた天野茂明[1]。さらに映画祭実行委員として祖父が残した土地で貸農園を営み、自然に触れる場所を街に残そうとしている熊澤弘之が加わった。映画祭開催の前年、天野は国の登録有形文化財で小津安二郎監督が脚本を執筆した定宿として知られている「茅ヶ崎館」の5代目当主森浩章に「映画祭を開きたい」というフェイスブックメッセージを送った[2]。森は自分よりも若い人が思い立ったことを嬉しく思いながらも、「どれだけの覚悟があるのか」と文化継承に関する意識を確かめた。そして映画祭を継続していくという意志が確認できたため参加を決めた[3]。 プロデューサーの天野茂明の「今年は少し余裕を持ってイベントを盛り上げていきたい」という思いから、プレイベントとしてドキュメンタリー映画「happy?幸せを探すあなたへ」を、会員制の貸農園「リベンデル」で上映。プレイベントでの上映作品を同作品に決めた理由は、映画を通して幸せについて考えるきっかけになってほしいからと、3月20日が国連が定めたハピネス向上の日ということから[6]。
概要
開催のきっかけ
上映作品とその年のトピック
第1回(2012年6月1日?6月10日)
第1回茅ヶ崎映画祭のオープニングを飾ったのは前年の2011年12月に亡くなった森田芳光監督の擬似ドキュメンタリー『ライブイン茅ヶ崎』。劇場デビュー前の若き監督が、”生まれ故郷”茅ヶ崎で自主制作した8ミリ映画で、上映される機会はめったになかった作品。森田監督のファンと地元の人で満員の会場は何かが始まる期待感に包まれていた[4]。
脚本執筆などを行う際の小津の定宿「茅ヶ崎館」で行われた『麦秋』の上映も満席であった。上映に訪れた市内に住む女性は、公開された小津監督の仕事場「二番の部屋」に座り、「いつかは来てみたいと思っていた。鳥肌が立ちました」と語っている[5]。
「ライブイン茅ヶ崎」(森田芳光)森田は東京出身だが、出生地は母親の実家のある茅ヶ崎市である。
「麦秋」(小津安二郎)
「ヒラツカニアン」
「僕らのミライへ逆回転」(ミシェル・ゴンドリー)
「地球にやさしい生活」(ラウラ・ガバート/ジャスティス・シェイン)
「うまれる」(豪田トモ)
「扉をたたく人」(トム・マッカーシー)
「海の上の君は、いつも笑顔。」(喜多一郎)
「シェーナウの想い」(フランク=ディーチェ/ヴェルナー=キーファー)
「葦牙―あしかび―」(小池征人)
「eatrip(イートリップ)」(野村友里)
第2回プレイベント(2013年3月20日)
「happy?幸せを探すあなたへ」(ロコ・ベリッチ)
第2回(2013年5月24日?6月16日)
第2回のオープニングも前年に引き続き森田芳光監督作品。デジタル上映が主流になった中、35ミリフィルムで上映された[7]第66回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で審査員特別賞を受賞した是枝裕和監督が茅ヶ崎館での『誰も知らない』の上映後にトークショーのゲストとして招かれ、受賞作『そして父になる』』の脚本をここで執筆したことを明かした[8]。
「家族ゲーム」(森田芳光)
「希望の国」(園子温)
「ちいさな哲学者たち」(ジャン・ピエール・ポッツィ、ピエール・バルジエ)
「祈り?サムシンググレートとの対話?」(白鳥哲)
「ワンダーウォール」(ジョー・マソット)
「エンディングノート」(砂田麻美)
「誰も知らない」(是枝裕和)
「戦艦ポチョムキン」(セルゲイ・エイゼンシュテイン)
「早春」(小津安二郎)
「はだしのゲン」(真崎守)
「はだしのゲンが伝えたいこと」(石田優子)
「未来の食卓」(ジャン・ポール・ジョー)
「FANTASTIC SESSION」(原田岳)
「僕のうしろに道はできる」(岩崎靖子)
「食べることでみえてくるもの」(鈴木七沖)
「何が彼女をそうさせたか」(鈴木重吉)
第3回(2014年10月10日?11月3日)
「TOKYO TRANSFER」(リッチ・アドラー)
「ブルーハワイ」(ノーマン・タウログ)
「怪盗グルーのミニオン危機一発」(クリス・ルノー/ピエール・コフィン)
「マカロニ」(エットーレ・スコラ)
「Shaun of the Dead」(エドガー・ライト)
「うまれる」(豪田トモ)
「遺言 ―原発さえなければ―」(豊田直巳/野田雅也)(共同監督)
「A2-B-C」(イアン・トーマス・アッシュ)
「の・ようなもの」(森田芳光)
「ファインディングジョー ?英雄の法則」(パトリック・タカヤ・ソロモン)
「ブルー・ゴールド 狙われた水の真実」(サム・ホッゾ)
「In Transition2.0」(エマ・グード)
「レオニー」(松井久子)
「市民ケーン」(オーソン・ウェルズ)
「秋刀魚の味」(小津安二郎)
第4回(2015年6月3日?6月26日)[9]
茅ヶ崎市美術館では版画家・棟方志功の没年に製作、1975年に公開されたドキュメンタリー『彫る 棟方志功の世界』を展示室の壁に吊るした布に映写して上映。同作品はベルリン国際映画祭短編部門グランプリなど数多く受賞した映画[10]。
「かもめ食堂」(荻上直子)
「シンプル・シモン」(アンドレアス・エーマン)
「りんごのうかの少女」(横浜聡子)
「スーパーローカルヒーロー]」(田中 トシノリ)
「サマータイムマシン・ブルース」(本広克行)
「日本と原発」(河合弘之)
「彫る・棟方志功の世界」(柳川武夫)
「山本慈昭 望郷の鐘 満蒙開拓団の落日」(山田火砂子)