英雄コナン
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ウィアード・テイルズ』誌の表紙の「英雄コナン」

英雄コナン(えいゆうコナン、蛮人コナン、キンメリアのコナンとも)は、1932年からロバート・E・ハワード(一部作品はディ=キャンプ、ビョルン・ニューベリイらの補作)により著されたヒロイック・ファンタジーのシリーズであり、その主人公である。本シリーズは、典型的なヒロイック・ファンタジーの先駆けとなった。

アーノルド・シュワルツェネッガーを主演とし『コナン・ザ・グレート』(1982年)および『キング・オブ・デストロイヤー』(1984年)として映画化された。彼をターミネーターへと続く一連のスターダムへ導いたことでも知られ、現在でも彼の出演した主要な作品の一つとして記憶されている。2011年には再起動として『コナン・ザ・バーバリアン』が映画化された。
物語

1万2千年前、アトランティス大陸が海に没し、現存の歴史が記されるまで空白の時代、ハイボリア時代(英語版)があった。各国の民族が入り乱れて争い、怪物や古の妖術の名残が点在する曠野にアトランティス人の末裔だが未開人に身を落とした北方のキンメリア出身の屈強な大男コナンは、粗にして野だが卑ではない豪放磊落な誇り高い戦士であった。

彼は、故郷キンメリアを離れ、あるときは傭兵、あるときは将軍、あるときは一攫千金を狙う冒険者、あるときは荒くれ船乗りを束ねた海賊となる。コナンの無宿渡世の旅路には、常に異郷の民や怪物との戦い、驚くべき冒険に美しい女たちがつきまとう。やがて故郷に帰ったコナンはキンメリア、そして周辺諸国を支配するアキロニアの大帝王となるが、それでもなお彼の行く手には戦いが待ち受ける。

なお、一見男性的な作品に見えるが、登場するゲストヒロインにはかなりの存在感があり、時に意外な活躍を見せ、時にヒロイン視点で物語が進められることもある。最初からコナンに従順で献身的なヒロインもいれば、打算からコナンを利用しようとしたり、時には保身に走って裏切ろうとするなど行動も多様で、コナンと純粋に愛し合う者もいれば、コナンに救われこそすれど彼と愛し合うわけではないヒロインも登場している。
コナン

基本的には、ハワードの〈コナン〉シリーズの主人公だが作品によって異なる。

コナンは、キンメリア人でありアトランティス人の末裔。彼の名前は、ゲール語で「賢明」に由来する人名だが、これはキンメリア人がケルト人の祖先として設定されているためである。

鍛冶屋の息子として生まれたコナンは、15歳で大人と変わらない体型に成長し、陰鬱とした深い森の故郷を離れ、ノルドヘイムのエーシル人に混じって戦役に参加した。それ以来、各国を放浪し、海賊、盗賊、傭兵、コサックの頭領、山岳部族のリーダーなどを経験し、やがて将軍として軍隊を指揮すると40代でアキロニア王を玉座の階段の上で、その手で絞め殺すと王位を奪った。

ハワードによるコナンの物語は、40代以降のアキロニア王時代とそれ以前の放浪時代に別けられる。アキロニア王コナンは、「宝石をちりばめた地上の玉座の数々をサンダルを履いた足で踏み躙っていた」とされているものの、不平の声を上げる民衆に悩まされ、家臣の反乱や邪悪な魔術師との対決しか描かれず、ひたすら鬱屈してその一文に当たるコナンが諸国を外征する物語はない。ハワードは、コナンにとって諸国との戦いは、自主的な征服運動ではなく防衛戦争だったとしている。青年のコナンは、諸国を放浪し、海賊時代の異名として「獅子のアムラ」があり、コサックのズアキル族の頭領、イラニスタン山岳部族のリーダーになり、ミトラの信託によってコラジャ王国の指揮官になったこともある。

外見は、「不機嫌な」あるいは「火山のようにくすぶった」灰色がかった青い瞳、黒い総髪、四角い額を見せるたてがみのような髪型をしていて時々、髪留めを着けている。残忍な外見に反してユーモアを好み、数十の国の言葉で歌い、アルコールを好む。体型は、「巨大」とだけ表現されるがハワードがピーター・スカイラー・ミラーに宛てた1936年の手紙によると14歳の時点で6フィート/ 183 cm、体重180ポンド(82 kg)であると説明されている。肌は、赤銅色で浅黒い。筋肉質で豹のように俊敏でしなやか、足音を立てずに歩き、垂直の壁を登攀する。またハイボリア時代のあらゆる言語に精通する。他にも鋭敏な感覚や文明人にはない屈強な生命力を備えている。

ただし、超人的な能力こそあれ魔法や超能力の類は、備わっていないために多くの場合、魔法を使う敵に対しては、魔術師や魔女の助けを借りる。

宗教面では、伝統的にキンメリア人が信仰するクロムを仰いでいるが「俺は神の影を踏まないように気を付けている」と話したようにクロムは、厳格な神で軟弱な人間を嫌い、人が人を殺す時に獰猛な勇気を与えてくれると信じている。また死後の世界には関心がないと答えている。多神教は、物事を複雑にすることで事実から逃避する文明人の悪習とし、多くの神を信じるべきでないと考える一方、「人には好きな神を拝ませてやればいい」としている。また文明人にないほど迷信深い一方で悪魔や怪物のような剣で殺せる相手には、どれほど強力な相手でも恐れたりすることはない。さらにザモラの賢者の話を盗み聞ぎして宇宙から怪物たちがやってくることを学んでいる(宇宙的恐怖)。

騎士道精神に従って相手に非がない限り、コナンから先に裏切ったり、見捨てたりはしない。ただし〈キング・カル〉と比べると複数の女性と関係を結ぶなど多情であることが指摘される。特に魅力的な女性に対しては、興味を露わにする。また冗談とはいえ女でも殴るなど荒々しい面もあり、女だからと言って殺さないということもない。
ハイボリア時代

ハワードが交流のあったクラーク・アシュトン・スミスがギリシア神話から着想を得て太古の地球にあった架空の土地ハイパーボリアを舞台としたシリーズを作ったことを真似て失われた歴史という設定で疑似歴史を創作した。コナン以前に執筆していた〈キング・カル〉シリーズとリンクしていてカルの時代から後、アトランティス大陸が海中に没した後の時代ということになっている。ハワードは、歴史を愛好していたが商業作品を書き続ける上で歴史を詳しく調べるのは、困難でありハイボリア時代を作ったのは、これらを解決するためだった。

ハイボリア時代は、現実の地球の出来事だが今、知られている歴史が始まる前に起こった失われた歴史であり、実在の地名や神、様々な名称が借用されている。例えばスティギアは、現在のエジプトになり、ヒルカニア人は、タタール人、フン人、モンゴル人、トルコ人の祖先、キンメリア人は、古代ブリテンのキムリック(ウェールズの別名)諸部族の祖先ということになっている。このため現実では時代の異なる文明・集団、例えばヴァイキングや騎馬民族、ガレオン船を操るコルセア海賊、古代エジプト王国風、古代ギリシア風、アラビア風の架空の国が並立している。

ハイボリア大陸は、現在のユーラシア大陸だが地中海が陸地になり、アフリカ大陸と一体化し、また一部が海中に沈んでいる。ピクト人とアトランティス人は、大変動によって原始生活に逆戻りし、キンメリア人は、アトランティス人の末裔である。逆に立ち遅れていたボリ人が文明を築き、大陸の大部分を占めてハイボリア帝国を建設した。ハイボリア最終期には、氷河期が迫り、また地中海やキンメリア、ハイボリア大陸の西海岸が再びの大変動で海に没するとハイボリア時代の歴史は、失われてしまった。

[※ 1]
主な諸国・集団
ハイボリア人

ハイボリア人あるいは、ハイボリ。名称の由来は、主神ボリに由来し、彼らの太古の首長であったがその記憶は、忘れられている。

現在の西ヨーロッパにあたる地域と地中海の上に住んでいる。


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