若手アニメーター育成プロジェクト
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若手アニメーター育成プロジェクト
イベントの種類人材育成事業
通称・略称あにめのたね(2021年度 - )
旧イベント名PROJECT A(2010年度)
アニメミライ(2011年度 - 2014年度)
あにめたまご(2015年度 - 2020年度)
初回開催
2010年
企画制作文化庁
運営日本アニメーター・演出協会(2010年度 - 2013年度)
日本動画協会(2014年度 - )
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若手アニメーター育成プロジェクト(わかてアニメーターいくせいプロジェクト)[注 1]は、文化庁より委託を受けた団体(後述)が実施する、日本におけるアニメーター等の人材育成事業である。委託事業者は初年度から2013年度までは日本アニメーター・演出協会(JAniCA)が、2014年度より日本動画協会(AJA)が行っている。

プロジェクトには愛称が付けられており、開始してから現在に至るまで何回か変更されている。

2010年(開始初年)度:「PROJECT A」(プロジェクト・エー)

2011年度 - 2014年度:「アニメミライ」

2015年度 - 2020年度:「あにめたまご」[1]

2021年度 - :「あにめのたね」

事業の目的とその経緯

文化芸術振興基本法第7条に基づき閣議決定された「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第2次基本方針)」(2007年 - 2010年)により実施された「若手クリエイター創作支援事業」への申請数が少なかったため、文化庁は、2010年度以降は、広くメディア芸術[注 2]人材の育成支援をする方向に転換することとした。若手アニメーター育成プロジェクトは、その際に新規制定された人材育成事業の1つである[2]

背景として、有能なアニメーター、特に有能な原画マンが育ちにくくなっている日本アニメーション業界の厳しい現状がある。すなわち、制作本数の増加、デジタル化に伴うスケジュールの悪化、過度の海外委託といった要因により、先輩から後輩への指導というOJT(オン・ザ・ジョブトレーニング)を行う余裕や機会が制作現場から失われ、アニメ人気によりアニメーターを志望する若者は多いにもかかわらず、彼らを有能な人材に育てることができず、いわば若手アニメーターの使い捨てのような常況に陥っているのである。

また、若手アニメーターの低収入・長時間労働[注 3]も、磨けば有能なアニメーターになったであろう人材の喪失に拍車をかけている。

そのため、アニメーター人材の枯渇・高齢化は深刻な問題となっており、それがさらに制作現場を苦しい状況に追い詰めており、このままではアニメーション制作自体がままならなくなる危機がある[3]

その対策として、商業用オリジナルアニメーションを十分な予算と余裕を持ったスケジュールで実際に制作し、将来を嘱望される若手アニメーターに対して作画監督などによる適切なOJTおよびJAniCAによるOff-JTが行われることにより次世代を担うアニメーターの育成を行うほか、事業遂行によって得られる知見により育成方法論の確立を計ろうと立案された事業である。

また、アニメ制作会社のいわゆる「脱下請化」、一線級監督によるオリジナル作品制作機会の創設、コンプライアンスによる制作工程の正常化・円滑化、アニメ制作に関わるモデル契約書策定やその運用プロセスの確立、スケジュール悪化問題への対処のための意識改革といった目的も有している。

こうして有能なアニメーターを少しでも多く育てあげることにより、世界に誇る日本のアニメーション文化の向上と発展に資することが本事業の最終目的である。
事業の概要

制作会社の応募資格は「原則として日本国内に本拠があり、商業アニメーションに関する十分な制作実績およびアニメーター育成に対する意欲を有する法人等」とされた。

育成の対象となるアニメーターは、事業の趣旨に則り、以下の者に限定された。

3年以内程度の原画マン経験を有しており、中堅以上への成長を志す若手アニメーター(原画マンとして十分な技能を有するアニメーターに成長させる)

1年未満程度の動画マン経験を有する新人アニメーター(動画マンとして十分な技能を有するアニメーターに成長させる)

これ以外にも若手アニメーターの定義として以下の2つが提示されており、実質的な限定条件となっている。

原画マン経験6か月 - 3年以内程度で、かつ応募時30歳以下であるアニメーター

原画マン経験6か月未満だが、育成担当の作画監督の強い推薦があり、かつ応募時27歳以下であるアニメーター

これ以外に主だったもので、下記のような契約条件・契約基準が提示された。

制作するアニメーションは、監督が創作の主体であるオリジナル作品に限る。

監督が書いた脚本などであること(制作会社との共著は可)。マンガ原作・過去に制作されたアニメの続編は不可。小説や民話原作は個別に条件あり
[注 4]

キャラクターデザインも、既存の挿絵・イラストは不可。アニメーターのオリジナルデザインであること、キャラクターデザイナーはアニメーターであることなどの条件が付された。


民放フォーマット(OP+ED=3分、本編20分30秒、合計23分30秒)、総カット数380カット前後、総動画枚数11,000枚前後(いずれもOP,ED分を含む)で制作すること。

テレビシリーズ以上劇場版未満の、出来の良いテレビスペシャル程度を想定しているとされている。


制作は、動画・仕上げを含め日本国内で処理されること。すなわちメイドインジャパンであること。

国の予算を使っているからである。事業目的からみても、日本国内で人材が育たないと意味がない。再委託(孫請け)に出す場合も、日本国内の制作会社でなければならない。


事業年度末(通常は募集された年の翌年2月)に予定される試写会までに完成させること。また、個々のスケジュールを厳守すること。

制作したアニメーションの著作権などは、制作会社に帰属する(ただし、ちゃんとプロジェクトを無事完了させることが条件となっている)。

パッケージ販売、テレビ放映、ネット配信、グッズ制作許可や続編制作などが、制作会社の判断で行うことができる。ただし、これら商業展開で収入が生じた場合は、制作予算額の半額程度になるまで、その収益のいくらかをJAniCAに上納しなければならないとされている。

また、監督、キャラクターデザイナー、作画監督などへの二次配当権を、制作会社と各スタッフ間で別途契約設定することも求めている。


JAniCAが行う講座(Off-JT)へのアニメーター参加協力義務。

監督以外の原画工程スタッフの、約3か月間のプロジェクト専念義務。この期間中は、他のアニメ制作に関わってはいけない。

人材育成が目的であるので、兼務してしまっては効果的なOJTが望めない。

監督は、特に第一線級となると数年先までのスケジュールが既に埋まっているなど極めて多忙であることが多いため、専念義務は課せられていない。


原画ギャラへのランク制の導入。

原画マンの報酬は、カット1枚いくらの歩合制であるが、ほとんどの場合、そのカットの難易度に関わらず報酬額は一定である。このプロジェクトでは、カットの難易度に応じてカット単価に3?5段階のランクを設定し報酬額に差を設けることとしている[注 5]


事務局は制作される作品の内容や事業終了後の展開に関する干渉は、原則として[注 6]一切行わない。

その他、各種調査への協力や報告書などの提出義務が課せられている。

制作予算

制作会社には、1社当たり総額3,800万円の制作予算が支給される。もし制作実費が3,800万円を超えた場合は、制作会社の持ち出しとなる。

制作予算は、一般的なテレビアニメ1話あたりで1,000万?1,200万円、テレビスペシャルで2,000万?3,000万円とされている[4]ので、それらと比すると潤沢な予算ともいえるが、この制作予算にはアニメ作画制作にかかる予算だけではなく、企画・音響制作・声優のギャラ・広告宣伝などの費用を含んでいることに留意しなければならない。また、予算の一部はその用途が定められている。

作画監督などには、若手アニメーター指導料が別立てで報酬計上されているのが、一般のアニメ制作予算にはない特徴である。これは、本来作画監督と育成指導は別の業務であることと、指導料を別立てにすることにより指導もちゃんとした「業務」であるという意識を明確に持ってもらうためである。
事業の成果

国の公共事業であるので、事業年度は基本的に1年単位である。事業の性格上、数年にわたって継続する必要性がある事業と文化庁は位置づけている。
PROJECT A(2010年度)

2010年度の文化庁の予算には、2億1,450万円が計上され、文化庁より事業の委託を受けたJAniCA[注 7]が制作会社の公募を行い、16社の応募の中から以下の4社の各作品が選定された。作品の概要は個々の記事を参照されたい。

作品アニメーション制作監督
キズナ一撃アセンション本郷みつる
おぢいさんのランプテレコム・アニメーションフィルム滝口禎一
万能野菜 ニンニンマンピーエーワークス吉原正行
たんすわらし。Production I.G黄瀬和哉

沿革


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