花崗岩
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花崗岩火成岩
黒雲母花崗岩の断面。灰色が石英、茶色がカリ長石、白色が斜長石、黒色粒子が黒雲母及びまたは角閃石
構成物
石英カリ長石斜長石黒雲母白雲母普通角閃石
プロジェクト:地球科学Portal:地球科学
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深成岩のQAPF図;
Q:石英、A:アルカリ長石、P:斜長石、F:準長石

花崗岩[注釈 1](かこうがん、英語: granite)とは、火成岩の1種で、ガラス質は含まないが流紋岩に対応する成分の深成岩である。

なお、石材として「花崗岩」と呼んだ場合には、必ずしも学術的な花崗岩とは一致しない。また、石材の場合は御影石(みかげいし)とも呼ばれるが、やはり「御影」と付いても、学術的な意味での花崗岩ではない岩石も含まれる。
概要

地下深部で形成された深成岩の中で、下記2条件を満たす岩石を指して、花崗岩と呼ぶ。ガラス質を含まず全体が細粒結晶の集合体であるため、流紋は見られない。

黒雲母などのような有色鉱物を1割程度含むものの、主成分が石英長石であり、全体的に白っぽく見える物[注釈 2]

成分中にナトリウムカリウムの含量が少ない、非アルカリ岩質である[注釈 3]

大陸や島弧などの陸地を構成する岩石として、花崗岩は非常に一般的であり、各地で見つかる。花崗岩の平均密度は通常2.75 (g/cm3)付近である。しかし、産地や品種によっては1.74 (g/cm3)から2.80 (g/cm3)と幅が見られる。

花崗岩の英語名 granite の語源は、ラテン語で種子や穀粒を意味する granum である。数mm径の結晶が寄り集まった、粗い斑点状の構造を有するため、命名された。

なお、日本語の「花崗岩」という名称は、恐らく17世紀から19世紀頃に作られた名称で、19世紀中頃に英名のgraniteに当てられた[1]。なお英名のgraniteは岩石学・石材双方に使われる。
花崗岩の種類様々な種類の花崗岩
含まれる鉱物による分類

花崗岩の主要構成鉱物は、石英カリ長石斜長石黒雲母白雲母普通角閃石である。磁鉄鉱柘榴石ジルコン燐灰石のような、副成分鉱物を含む場合もある。稀に輝石を含む。産地によって、その含有鉱物の種類や比率が様々に異なる。含まれる有色鉱物の名前を、少ない物から順に「花崗岩」の前に付けて呼ぶ。副成分鉱物の場合は「含?」と付ける。
黒雲母花崗岩 (biotite granite)
黒雲母・石英・カリ長石(正長石または微斜長石)・灰曹長石から成る。なお、カリ長石が分解してカオリナイト化し桃色を呈した物は、桃色花崗岩と呼ぶ。
両雲母花崗岩 (two mica granite)
黒雲母・白雲母・石英・カリ長石(正長石または微斜長石)・灰曹長石から成る。
閃雲花崗岩 (hornblende biotite granite)
角閃石・黒雲母・石英・カリ長石(正長石または微斜長石)・灰曹長石から成る。
鉱物粒子の大きさによる分類

一般に花崗岩中の鉱物の結晶の大きさは数mm程度で、大きくとも数cmまでである。それ以上の大きさの結晶を有する場合は、巨晶花崗岩(花崗岩ペグマタイト[注釈 4])と呼ぶ。巨晶花崗岩はマグマがゆっくりと冷却固結する際に最後まで残った部分と考えられ、微量しか析出されない珍しい鉱物が包含されている場合が多い。また、大きな鉱物粒子の間に空洞が存在する場合もあり[注釈 5]、水晶(石英の結晶)や、蛍石トパーズ電気石(トルマリン)、柘榴石などの結晶を含む場合もある。

なお、岩石名の先頭に「細粒」(fine-grained)、「中粒」(medium-grained)、「粗粒」(coarse-grained)、「斑状」(porphyritic) などを付けて、粒子サイズによって区分する場合もある。
分布ヨセミテ国立公園ハーフドーム宮島弥山山頂の花崗岩と真砂土。

花崗岩は造山帯か否かを問わず、大陸地殻の全域にわたって広く分布している。深成岩ゆえに、地表に露出している部分より、地下深くに多く分布していると考えられ、大陸の表面を覆う比較的薄い堆積岩の下に横たわる基盤岩の大半を占めていると考えられている。これらの大規模な物(100 km2以上)をバソリス(batholith、底盤)と呼び、100 km2以下の比較的狭い範囲の物をストック(stock、岩株)と呼んでいる。

花崗岩は、恐らく完新世を除く、あらゆる地質年代にわたって地殻に貫入してきた。世界的には先カンブリア時代に生成した物が多いようだが、日本列島では茨城県日立市カンブリア紀の物が最も古く、中生代に生成した物が最も広い面積を占める。日本の地表では、阿武隈高地関東北部、飛騨山脈木曽山脈美濃高原近畿地方中部、瀬戸内海から中国山地北九州などに広く分布している。

このように地球上で花崗岩は、ごくありふれた存在だが、太陽系の地球以外の岩石天体には、ほとんど見い出されない。その理由は、花崗岩の形成に水の関与が必要であり、水の海の存在する地球でのみ花崗岩が大量に作られてきたためだろうと考えられている[2]
起源

花崗岩の起源について、かつては2つの学説間で論争が見られた。しかし、現在では“マグマ説”が一般に支持されている。
マグマ説(火成岩説)
花崗岩は、玄武岩質マグマの地殻内での結晶分化作用により形成された流紋岩質マグマ、あるいは玄武岩質マグマが周囲の壁岩(一般に堆積岩等から成る)を溶融して形成された流紋岩質マグマが、地上へは噴出せずに、ゆっくりと冷却されてできるという説である。放射性元素同位体比や微量元素の含有量、また花崗岩体の規模が大きい点などから、多くの花崗岩マグマは後者の成因によって形成されたと考えられている。
花崗岩化作用論(変成岩説)
砂岩泥岩などの堆積岩が地下深部で、高温高圧による変成作用を受け、液体の状態を経ずに花崗岩が形成されたという説である。
主化学組成

例として産業技術総合研究所による岩石標準試料の1つであるJG-2(岐阜県蛭川村の苗木花崗岩)の組成を示す(単位は重量%)[3]

JG-2の化学組成 含有量
SiO276.830
TiO20.044
Al2O312.470
Fe2O30.330
FeO0.570
MnO0.016
MgO0.037
CaO0.700
Na2O3.540
K2O4.710
P2O50.002
H2O+0.330
H2O?0.120

密度は約2.6 g/cm3、圧縮強さは15?20 kgf/cm2である[注釈 6]
花崗岩の風化レンソイスは風化した花崗岩で構成された砂丘である。

花崗岩は固くて緻密である。しかし、花崗岩は結晶粒子が大きく、かつ、鉱物の種類によって結晶の熱膨張率が異なるため、温度差の大きい所では鉱物の境界線の部分で結合が弱まり、次第にひび割れてゆき易い。例えば、直射日光などで直接加熱される花崗岩の表面などは、ボロボロになって崩れてゆき、いわゆる風化した状態へと変化し易い。さらに、花崗岩中の斜長石や黒雲母も、比較的風化を受け易い鉱物である。これに対して、花崗岩中の主成分である石英の結晶は、非常に風化し難いため、花崗岩の風化が進むと、構成鉱物の粗い粒子を残したまま、バラバラの状態になり、非常に脆く崩れ易くなる。このようにして生成した白から黄土色の粗い砂を、真砂土、あるいは単に真砂と呼ぶ。


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