艇長
[Wikipedia|▼Menu]

この項目では、船舶について説明しています。スペースシャトルについては「船長 (スペースシャトル)」をご覧ください。
船長の肩章の一例

船長(せんちょう)とは、特定の船舶の乗組員で、船舶の指揮者であるとともに船主の代理人として法定の権限を有する者[1]。日本では軍艦自衛艦)の長を艦長(英語: captain)と称している。ヨットにおいては艇長(ていちょう)あるいはスキッパー(英語: skipper)と称することもある。
目次

1 概説

2 日本の法令上の船長

2.1 船長の選任と解任

2.2 船長の権限

2.2.1 私法上の権限

2.2.2 公法上の権限


2.3 船長の義務

2.4 艦長


3 最後離船、最後退船の義務

4 脚注

5 関連項目

概説

船長は船舶の運航指揮者という航行組織上の地位と海上企業主体の代理人という企業取引組織上の地位の二面性を有する[1]

服制は、上着の袖章または肩章の四条の線をもって船長の職位を表すことが多い。

船長の席は通常ブリッジの右寄りにある[2]が、航空母艦ではアイランド(ブリッジ等の構造物)を右舷に寄せた設計となっているため、飛行甲板が見渡せる左側に寄せている。
日本の法令上の船長

この節は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。

船長の選任と解任

船長は海上企業主体(船主もしくは船舶賃借人)によって選任される[3]。船舶共有の場合は船舶管理人が選任を行う(商法700条)[3]。船長には航行区域と船舶の大きさに従って船舶職員及び小型船舶操縦者法に定める有資格者のうちから選任しなければならない[3]

船長がやむを得ない事由により自ら船舶を指揮することができないときは法令に別段の定めがある場合を除いて他人を選任して自己の職務を行わせることができ(商法707条前段)、これを代船長という[3]。この場合においては船長はその選任につき船舶所有者に対して責任を負う(商法707条後段)。

また、船長が死亡したとき、船舶を去ったとき、又はこれを指揮することができない場合において他人を選任しないときは、運航に従事する海員は、その職掌の順位に従って船長の職務を行う(船舶法20条)。これを代行船長というが、代行船長は厳密な意味での船長ではない[3]

船長は雇用契約の終了事由によりその地位を失うほか、船舶所有者は何時でも船長を解任することができる(商法721条1項本文)[3]。ただし、正当な理由なく解任したときは船長は船舶所有者に対し解任によって生じた損害の賠償を請求することができる(商法721条1項但書)。
船長の権限
私法上の権限

船長の代理権

船長には船主からの代理権授与契約に基づく代理権が認められている
[4]。船長の代理権に加えた制限は善意の第三者に対抗することができない(商法714条)。

船籍港内においては船主も直接指図できることから、船長は特に委任を受けた場合を除くほか、海員の雇入及び雇止をなす権限のみを有する(商法713条2項)[4]

船籍港外においては船長は航海のために必要な一切の裁判上または裁判外の行為をなす権限を有する (商法713条1項)。


船長が船舶の抵当、借財、積荷の全部又は一部の売却又は質入れをなすには、船舶の修繕費、救助料その他航海を継続するのに必要な費用を支弁する場合に限られる(商法715条1項)。

船籍港外において船舶が修繕不能に至ったときは船長は競売することができるが管海官庁(その港がある地域を管轄する官庁)の認可を得ることを要する(商法717条)


積荷の供用

船長は航海を継続するため必要なときは積荷を航海の用に供することができる(商法719条)。


公法上の権限

船舶指揮権

船長は船舶の運行責任者として船舶指揮権を有する
[5]。船舶指揮権は船主から授権されたものではなく船舶共同体の安全確保のために法律によって国から授権された権限である[5]

船舶指揮権の内容は以下参照。


指揮命令権

船長は指揮命令権を有し、海員を指揮監督し、かつ、船内にある者に対して自己の職務を行うのに必要な命令をすることができる(船員法第7条)。


懲戒権

船長は、海員が船員法21条の事項を守らないときは、これを懲戒することができる(船員法22条-24条)。


危険に対する処置

船長は、海員が凶器、爆発又は発火しやすい物、劇薬その他の危険物を所持するときは、その物につき保管、放棄その他の処置をすることができる(船員法25条)。

船長は、船内にある者の生命若しくは身体又は船舶に危害を及ぼすような行為をしようとする海員に対し、その危害を避けるのに必要な処置をすることができる(船員法26条)。

船長は、必要があると認めるときは、旅客その他船内にある者に対しても、前二条に規定する処置をすることができる(船員法27条)。


強制下船

船長は、雇入契約の終了の届出をした後当該届出に係る海員が船舶を去らないときは、その海員を強制して船舶から去らせることができる(船員法28条)。


行政庁に対する援助の請求

船長は、海員その他船内にある者の行為が人命又は船舶に危害を及ぼしその他船内の秩序を著しくみだす場合において、必要があると認めるときは、行政庁に援助を請求することができる(船員法29条)。


水葬

船長は、船舶の航行中船内にある者が死亡したときは、国土交通省令の定めるところにより、これを水葬に付することができる(船員法15条)。


司法警察権

遠洋区域、近海区域又は沿海区域を航行する総トン数20トン以上の船舶の船長は、他の一定の海員と共に特別司法警察職員に指定されている(司法警察職員等指定応急措置法(昭和23年法律第234号)第1条及び司法警察官吏及司法警察官吏ノ職務ヲ行フヘキ者ノ指定等ニ關スル件 (大正12年勅令第528号))。


船長の義務

善管注意義務

船長は善管注意義務を負い、船長はその職務を行うにつき注意を怠たらなかったことを証明しなければ船舶所有者、傭船者、荷送人その他の利害関係人に対して損害賠償責任を免れることができない(商法705条1項)。船長は船舶所有者の指図に従ったときであっても船舶所有者以外の者に対しては前項に定めた責任を免れることができない(商法705条2項)。また、海員がその職務を行うにあたり他人に損害を加えた場合において船長は監督を怠らなかったことを証明しなければ損害賠償責任を免れることができない(商法706条)。これは民法715条2項と同じ趣旨である[6]


商法上の書類備置義務

船長は属具目録及び運送契約に関する書類を船中に備え置くことを要する(商法709条1項)。


発航前の検査

船長は、国土交通省令の定めるところにより、発航前に船舶が航海に支障ないかどうかその他航海に必要な準備が整っているかいないかを検査しなければならない(船員法8条)。


航海の成就

船長は、航海の準備が終ったときは、遅滞なく発航し、かつ、必要がある場合を除いて、予定の航路を変更しないで到達港まで航行しなければならない(船員法9条)。


甲板上の指揮

船長は、船舶がを出入するとき、船舶が狭い水路を通過するときその他船舶に危険のおそれがあるときは、甲板にあって自ら船舶を指揮しなければならない(船員法10条)。


在船義務

船長は、やむを得ない場合を除いて、自己に代わって船舶を指揮すべき者にその職務を委任した後でなければ、荷物の船積及び旅客の乗込の時から荷物の陸揚及び旅客の上陸の時まで、自己の指揮する船舶を去ってはならない(船員法11条)。


船舶に危険がある場合における処置

船長は、自己の指揮する船舶に急迫した危険があるときは、人命の救助並びに船舶及び積荷の救助に必要な手段を尽くさなければならない(船員法12条)。

なお、旧船員法第12条では「船長は船舶に急迫した危険があるとき、人命、船舶および積荷の救助に必要な手段をつくし、かつ、旅客、海員、その他船内にあるものを去らせた後でなければ、自己の指揮する船舶を去ってはならない。」とあり、違反した場合は5年以下の懲役という罰則が規定されていた。

1970年に船員法が改正がされて、現船員法第11条・第12条に置き換えられ、自己の指揮する船舶に急迫した危険には必要な手段を尽くす一方で、やむを得ない場合には己の指揮する船舶を去ることを可能とする規定となった。


船舶が衝突した場合における処置

船長は、船舶が衝突したときは、互に人命及び船舶の救助に必要な手段を尽し、且つ船舶の名称、所有者、船籍港、発航港及び到達港を告げなければならない。但し、自己の指揮する船舶に急迫した危険があるときは、この限りでない(船員法13条)。


遭難船舶等の救助

船長は、他の船舶又は航空機の遭難を知ったときは、人命の救助に必要な手段を尽さなければならない。但し、自己の指揮する船舶に急迫した危険がある場合及び国土交通省令の定める場合は、この限りでない(船員法14条)。


異常気象等

国土交通省令の定める船舶の船長は、暴風雨流氷その他の異常な気象、海象若しくは地象又は漂流物若しくは沈没物であって、船舶の航行に危険を及ぼすおそれのあるものに遭遇したときは、国土交通省令の定めるところにより、その旨を附近にある船舶及び海上保安機関その他の関係機関に通報しなければならない(船員法14条の2)。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:24 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef