航空計器
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双発の軽飛行機に装備されている6つの基本的な計器。左上から時計回りに対気速度計、姿勢指示計、高度計、昇降計、方位計、傾斜計 グラスコックピットの例 6つの基本的な計器が一画面に収められている

航空計器(こうくうけいき)とは、航空機に装備されており、機体の各種情報を操縦士に知らせる機器のことをいう。
目次

1 重要な事項

2 保守

3 航空計器の生産

4 航空計器の特徴

5 航空計器の外箱

6 工場封印

7 照明

8 計器の種類

9 計器盤での配置

10 関連項目

11 外部リンク

重要な事項

航空機の安全、信頼、経済性は計器のみが負うべきはないが、その恩恵は極めて大きいものである。計器を使用するだけではなく、計器の指示が意味することを的確に判断し、運用できる人がいてはじめて達成できるものである。航空計器は技術の発達により常に進歩しているものであり、航空従事者はそれら全般の知識を持つことが要求される。また、知識を持っているがために陥りやすい不用意な取り扱いなどは厳に慎まなければならないといえる。
保守

計器を知るには、装備される航空機の諸系統の内外部構造や機能、運航に関することにも関連がある。諸系統に関する理解や運航に関する知識も要求される。計器自体も、電子計器、電気計器、機械計器、ジャイロ計器、などがあり当然のことながら取り扱いに関する知識も必要である。検査、修理、試験、維持に関しての作業にも精通していることが望ましい。日本の航空法では計器の修理は航空機の大修理に該当する重要な項目である。このような、広範囲の知識をもって初めて計器の保守ができるのであり、安易な保守などは現に慎まなければならない。
航空計器の生産
生産
生産された航空計器は、航空機の安全性確保の観点から、
国土交通省の立ち合い検査なしではこれを航空機に装備することができない。指定された機器については、国土交通省の製造証明がなければ売渡せないよう、特殊精密産業に対する産業行政の面から規制がかけられている。
規格
計器の生産規格として準拠される規格はJISの航空関係規格が制定されている。国内には米国製の機体も数多く存在するため、これらの航空機に装備される計器が製造された場合のため、MIL規格(米国軍用仕様書)やAS規格、TSO規格なども用いられる。
型式承認
前述の規格に対する検査を行い、これに合格した製品と同程度の品質が保たれて、継続的に生産できると判断された場合にのみ型式認証を与え、生産された計器には各個検査(製品検査)のみの立会検査を行い航空機に装備しても良いことになっている。
航空計器の特徴
信頼性
航空機の場合、地上の良好な条件下での信頼性以外に温度・姿勢・実効重力・気圧などの外的条件が大幅に変化する。これら過酷な環境下でも充分な信頼性が要求される。
重量
小型、軽量であることが要求される。航空機の有効積載量(
ペイロード)を大きくすることは経済運航にとって好ましい。従って軽量化は、航空機では大命題となっている。
大きさ
多発エンジンの機体などでは、計器の数が多くなり安全運航に不可欠な航法計器の種類も増加する傾向にある。しかし、計器盤のスペースには限界があり計器は小型化する必要がある。一般的に表示面の小型化が行われるのであるが、計器の種類によってはある程度以上に小型化が困難な物もある。そこで同一表示面内に多くの機能を組み込んだ計器が用いられるようになった。ブラウン管液晶ディスプレイ(画面)に多くの表示と機能を持たせた物(グラスコックピット)も用いられている。
耐久性
長期間その精度を保持することが望ましいが、計器により耐久性には長短がある。製造者は品質や耐久性の向上に努めており、耐久試験を行っている。過去の実績から使用期間を定めている場合もあるが、一般的に使用者側は耐久試験は行わない。

安全使用期間
一定期間ごとにオーバーホールを行い、信頼性を保持してゆくもの。

一定期間ごとに精度点検を行って、信頼性を保持してゆくもの。

計器の種類によっては日常の運用で精度や機能が確認できるものもあり、このような場合は定期的な整備は行わない。
環境条件
航空機は激しい動きの大気中で運用されるため、気圧、振動、温度、加速度、姿勢、などの影響が少ないことが要求される。
常温器差
製造時に高温、低温による温度誤差試験を行い、温度による影響が一定の範囲内に収まる事を確認する。その後特別な修理作業などを行わない場合、常温での誤差や機能を知り、指示誤差の確認作業を行うことが多い。
漏れ
航空計器は周囲の気圧が大きく変化するため、受感部分の外側のケース(外箱)の漏れも誤差の原因となる物がある。速度計、高度計、昇降計などの場合は使用できない状態となる。機内与圧がなされている場合は、特に注意が必要となる。
摩擦
機械的な軸受けや歯車(ギア)を使用している計器では摩擦による誤差を完全になくすことはできない。器差試験を行う場合は機器に振動(軽打)を与えるか、軽振動台の上で検査を行う。ピストンエンジン機は、エンジンの振動が大きいため計器盤に防振装置を装着して計器盤への振動を軽減している。完全に振動を除去できるわけではないので、摩擦誤差を取り除くという点では何ら問題はない(かえって好都合である)。しかし、タービンエンジン機では振動が少なく、計器によっては摩擦誤差が問題となる場合がある。この場合、計器盤や計器に加振装置を取り付けることもある。
温度補正
航空機は運用上、炎天下の酷暑から急に高空の零下数十度の場所に置かれる、というように動作環境が大きく変化する。このため、一般の計器とは異なる温度補正が必要となる。計器の装着場所や航空機の性能によって左右されるが、航空用計器では一般的にマイナス65℃からプラス70℃が用いられている。この135℃にも及ぶ温度変化に対して、計器は自動的に補正され作動するように設計制作されているのであるが、これも完全ではなく経済面、実用面からある程度の誤差は許容されている。さらに遭遇する条件として気圧の変化に対しても検査が必要な計器もある。
湿度
航空機が雨中での飛行を行った、野外係留を行った、温度変化があった、以上の直接的、間接的な湿度から影響を受けることがないように、計器の内外部に防錆処置が施され外箱によって密封されている。また、完全密封にして不活性ガスを充填した計器もある。
塩霧
水上飛行機飛行艇ではもちろんであるが、海に近い飛行場などでは絶えず潮風にさらされるなど、航空機に対する影響は大きい。航空計器には塩霧に対する影響が最小限になるように製作される。
カビ
航空機は広範囲にわたって運用されるため、胴体内や翼内は密閉された状態にある。このため多くのカビ類が繁殖しやすい環境であるとも考えられる。過去の経験上からカビ類が電気的故障や精密機器に悪影響を与えたことが知られている。このため、航空計器では主要箇所や、外側に抗菌塗料を塗装してカビ類の被害を防止している。
気圧の変化
航空計器は大幅な気圧変化にさらされるため、その影響がないように製作されている。不完全な密閉であると、気圧変化による呼吸作用で計器内に湿度やカビ類が吸入され、面ガラスの曇りや内部の電気絶縁の低下による不具合が発生する。


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