航空母艦(こうくうぼかん、英: aircraft carrier)は、航空機を多数搭載し、海上での航空基地の役割を果たす軍艦[1]。略称は空母(くうぼ)。
第一次世界大戦で登場し、その当時は飛行機母艦の名称も使われた[2][注 1]。艦内に格納庫を有し、飛行甲板より艦載機(艦上機)を発着させることが可能な、海洋を移動する飛行場にして根拠地である[注 2]。
航空機の性能が低かったこともあって補助艦艇として扱われていたが、後に航空機の性能が向上して航空主兵論が台頭するとともに、機動部隊の中核となる主力艦としての地位を確立していった。 1921年のワシントン軍縮会議では、「水上艦船であって専ら航空機を搭載する目的を以って計画され、航空機はその艦上から出発し、又その艦上に降着し得るように整備され、基本排水量が1万トンを超えるものを航空母艦という」と空母を定義している[5]。1930年のロンドン海軍軍縮条約で基本排水量1万トン未満も空母に含まれることになった[6]。 アメリカ海軍では、当初、航空母艦(Aircraft carrier)には一括してCVの船体分類記号が付与されていた。その後、第二次世界大戦に伴う需要激増に対応し、特に船団護衛に投入するため、1941年には商船の船体を利用した小型・低速の空母として航空機護衛艦(Aircraft escort vessel)が登場し、AVGの船体分類記号が付与された。1942年8月20日には補助航空母艦(Auxiliary aircraft carrier)と改称し、船体分類記号もACVに変更された[7]。 その後、1943年7月15日に整理が図られた。従来の航空母艦(CV)のうち、満載排水量5万トン以上の艦[8](ミッドウェイ級)は大型航空母艦(Large aircraft carrier)に類別変更され、CVBの船体分類記号が付与された。一方、巡洋艦の設計を流用して満載排水量2万トン以下の艦[8](インディペンデンス級・サイパン級)は軽空母(Light aircraft carrier)に類別変更され、CVLの船体分類記号が付与された。またACVについても、他の空母になぞらえて、護衛空母(Escort carrier)と改称し、船体分類記号もCVEに変更された[7]。 1952年には、正規空母(CV・CVB)について、下記のように役割による分類が導入された。また1956年5月29日には、核動力を導入した「エンタープライズ」が就役し、原子力攻撃空母(Nuclear-powered attack aircraft)の類別が新設されて、CVANの船体分類記号が付与された。その後、役割による分類が薄れたことから、1975年には、在来動力艦はCV、核動力艦はCVNと、再び設計のみによる分類へと回帰した[7]。 なおこのように、アメリカ海軍とカナダ海軍で空母を表す船体分類記号としては「CV」が用いられる。1文字目の「C」はCarrierとする説もあるが[9]、アメリカ海軍の公式webサイトでは、もともと巡洋艦の種別から派生したことからCruiserの頭文字をとったものとしている[10]。また2文字目の「V」はVesselの頭文字とする説もあるが[9]、世界の艦船ではこれを否定し、艦上機の主翼を模した象形文字としている[7]。ドイツ連邦共和国においては空母はRB、軽空母はRLに類別されている。またポルトガル語圏のブラジル連邦共和国においては空母はNAe、軽空母はNAeLに類別されている。 1952年7月、アメリカ海軍は、CVの一部を対潜戦に投入することを決定し、対潜空母(Anti-submarine warfare support aircraft carrier)の類別が新設されて、CVSの船体分類記号が付与された。また10月には、それ以外のCVとCVBが攻撃型空母に類別変更されて、CVAの船体分類記号が付与された[10]。 しかしその後、ベトナム戦争後の国防予算削減のなかで、対潜戦専従の航空母艦を維持することは困難になっていき、CVA/CVANに艦上哨戒機・哨戒ヘリコプターを搭載して対潜戦を兼務させることになり、CVSの運用は1974年までに終了して、CVA/CVANは汎用化されてCV/CVNと改称した[10]。一方、イギリス海軍のインヴィンシブル級航空母艦もCVSと称されていた[11]。 なお、大戦中よりヘリコプターが発達しており、対潜戦や上陸戦への応用が注目されていた。これは原理的には空母以外の艦船での運用も可能ではあったが、特に初期の機体はかなり大型だったこともあり、できれば空母での運用が望ましかった[12]。このこともあり、1955年には、CVEの一部が船団護衛でヘリコプターを運用するための護衛ヘリコプター空母(CVHE)に類別変更され、また「セティス・ベイ」が水陸両用作戦用の強襲ヘリコプター空母 (CVHA) に改装された。ただしCVHEについては特段の改修が行われたわけではなく、またCVHAについても、後には航空母艦の保有枠を圧迫しないように揚陸艦のカテゴリに移すことになり、ヘリコプター揚陸艦(LPH)という新艦種が創設された[13]。 一方、アメリカ国外でもヘリ空母が登場し始めていたが、その一部は、ヘリコプターだけでなくV/STOL機も搭載するようになった。このように固定翼機の運用能力を獲得したヘリ空母も「軽空母」と称されることもある[14]。 飛行甲板(flight deck)は、航空機運用のために船の甲板を発着陸用の滑走路としたもので、艦の全長にわたって、できるだけ長く、広く確保される。飛行の障害物となるような突出物は極力排除され、日本の空母の場合、探照灯などは全て電動昇降式(隠顕式)として、そのレセスの上には蓋が設けられた[15]。 またこの方針を追求した結果、最初期には、艦橋構造物を廃止して昇降式の小型指揮所にとどめ、煙突も廃止して艦尾排気とした平甲板型も試みられたが、操艦や飛行甲板の指揮などの観点からは不利が指摘された。
分類
設計による分類
役割による分類
航空母艦の特殊装置
飛行甲板「ニミッツ」の飛行甲板詳細は「飛行甲板」を参照
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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