航空宇宙軍史
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『航空宇宙軍史』(こうくううちゅうぐんし)は谷甲州作のハードSF小説作品群。この項ではこの作品と同一の世界設定を用いた作品群を含めて航空宇宙軍史シリーズとして扱う。

早川書房(主にハヤカワ文庫)より刊行されたほか、中央公論新社より、電子書籍として全面改稿された4巻が発売されている。

1988年、「火星鉄道一九」が第18回星雲賞日本短編部門を受賞。1995年、『終わりなき索敵』で、第25回星雲賞日本長編部門を受賞。2015年、『コロンビア・ゼロ 新・航空宇宙軍史』が第36回日本SF大賞受賞。

2016年から、早川書房(ハヤカワ文書JA)にて、加筆・新解説・新装丁による『航空宇宙軍史・完全版』が刊行開始。
航空宇宙軍史シリーズ

航空宇宙軍の発足から、外惑星連合(木星・土星の衛星による連合)との2次に渡る戦争(外惑星動乱)、そして汎銀河連合との恒星間戦争に至る人類文明史を背景に展開する、ハードSF作品群。

相対軌道・相対速度を利用した爆雷等の兵器をはじめ、航宙に年単位の時間がかかる(ワープの類は出てこない)、実際に計算された星間軌道など、今日の科学的知見と技術的蓄積の延長線上にある「嘘っぽくない」宇宙戦争が魅力である。また戦争の背景となるべき社会の資源・技術・エネルギー収支・新技術の実運用面等の考察を踏まえている点は注目に値する。
作品

作品の刊行順に分類する。大きく分けると、長編がメインストーリーで、短編は局地戦を描いたものが多い。一部、航空宇宙軍史の世界観で描かれている小説群(作中に共通の名称や設定があるが本史との直接の関係はない作品)も含める。
137機動旅団

奇想天外 36号(1979年3月号)掲載
SFマガジン 735号(2019年10月号)掲載地球がその勢力圏に取り込み、産業振興と植民を行っていた惑星ジャヌー。そこで起こった原住民の反地球騒乱を鎮圧するために、航空宇宙軍陸戦隊最精鋭の第137機動旅団が作戦に投入される。「いかなる混戦でもゲリラと良民を区別し、絶対に無辜の民間人を殺さない」誇り高き兵団である機動旅団の先鋒・偵察大隊矢澤小隊はしかしジャヌーで惨憺たる敗北を喫する。その理由ははたして… 第2期『奇想天外』1979年3月号掲載の谷甲州デビュー作。第2回奇想天外SF新人賞佳作受賞。なお、冒頭部は『終わりなき索敵』に叙述の視点を変えて取り込まれている。またSFマガジン2019年10月号に、谷甲州作家デビュー40周年記念作品「137機動旅団 新・航空宇宙軍史」として450枚一挙掲載された。[1]
ガネッシュとバイラブ

奇想天外 41号(1979年8月号)掲載
ハヤカワ文庫JA 『星空の二人』 2005年5月 ISBN 4-15-030798-9 に収録戦いに敗れ銀河に散って迫害を受ける地球人が、地球帰還のためにテロで恒星間宇宙船を奪おうとする。しかし成功せず、大量の犠牲者を出した末に惑星間宇宙船による無謀な恒星間逃避行となる。その妄執とも言える望郷の念を追跡機の機載コンピュータがシミュレーションの末に理解してしまったとき…。第2期『奇想天外』1979年8月号掲載。ハヤカワ文庫JAの短編集「星空の二人」に収録されている。なお短編集収載版は結末を含めてほとんど全面的に稿が改められており、奇想天外版は航空宇宙軍史世界が強く出ている。[2]
惑星CB-8越冬隊

奇想天外社 1981年4月 新書本
ハヤカワ文庫JA 1983年1月
ISBN 4-15-030165-4地球は汎銀河世界にその位置さえも忘れ去られた時代。特異な軌道を持つ惑星CB-8を可住化改造するためのプロジェクトは、CB-8の異常な性質により人工太陽がトラブルを起こし、気圧変動も重なって越冬隊は全滅の危機に瀕する。一方CB-8にはありのままのその星に入植しようとした地球人グループもいた。空気が希薄になりゆく氷の大陸で、生き延びるための苦闘が始まる。谷甲州の処女長編であり第2期『奇想天外』1980年11月号・12月号・1981年1月号に分載、奇想天外社よりハードカバー単行本として出版される。当時の名義は「甲州」ではあるが、これは谷甲州の初単行本作品でもあった。
エリヌス?戒厳令?

早川書房 1983年4月 新鋭書下ろしSFノヴェルズ
ハヤカワ文庫JA 1988年12月 ISBN 4-15-030281-2
ハヤカワ文庫JA 2017年2月 ISBN 4-15-031263-X(航空宇宙軍史・完全版 四)外惑星動乱終結後23年。戦後地下組織化した外惑星連合軍SPAはエリヌスでクーデターを起こし同衛星都市の支配権を奪取、政治的・軍事的な聖域化を企てる。周到な計画の下に3隻の輸送船を仕立てた何か月にも及ぶ作戦ののち、圧倒的な兵力をエリヌスへ電撃的に奇襲降下させたSPAはいったんは行政府を制圧したかに見えたが…。憲法、あるいは最高法規を頂点とする法治国家の統治体系を、たった一つの宣言で覆しうる「戒厳令」(「国家非常事態宣言」)、その力と恐怖をポリティカル・フィクションとしてSFに取り入れた意欲作。航空宇宙軍史の外惑星動乱後の歴史のデッサンを示す。同時に、戦争に引き裂かれた家族の悲しい物語でもある。単行本化の際は巻末に著者自身が2123年時点での設定をまとめた「資料編」を収める。1 光帆(ライトセル)タンカー2 作戦会議 — ガニメデ3 天王星系第六衛星・エリヌス4 オグ — エリヌス赤道帯5 アクエリアス — 地球周辺軌道6 オグ — ポート・エリヌス7 アクエリアス — 太陽近傍8 ロペス部長 — ポート・エリヌス9 アクエリアス — 水星軌道内宙域10 SPA — ポート・エリヌス11 ジャムナ — アクエリアス12 考案作戦 — ポート・エリヌス13 アクエリアス — 地球軌道通過14 教授(プロフェッサー) — タイタン15 エリヌス・カント — オールド・ベース16 ハイジャック — 土星周辺軌道17 カミンスキイ中佐 — ガニメデ18 テロル — ポート・エリヌス19 侵攻部隊と公安部隊20 暴動中央広場21 二一二三年七月一三日22 リーとザカリア23 脱出24 航空宇宙軍陸戦隊25 逆侵攻26 エリヌス戒厳令27 集結
仮装巡洋艦バシリスク

ハヤカワ文庫JA 1985年4月 ISBN 4-15-030200-6
ハヤカワ文庫JA 2017年2月 ISBN 4-15-031263-X(航空宇宙軍史・完全版 四)短編集。

星空のフロンティア(第2期「奇想天外」1981年4月号・5月号・6月号に分載)

砲戦距離一二、〇〇〇(SFマガジン 1984年8月号掲載)

襲撃艦ヴァルキリー(書き下ろし)

仮装巡洋艦バシリスク(SFマガジン 1982年8月号掲載)

星の墓標

ハヤカワ文庫JA 1987年7月 ISBN 4-15-030244-8
ハヤカワ文庫JA 2016年12月 ISBN 4-15-031256-7(航空宇宙軍史・完全版 三)文庫書き下ろし長編。第1話 タナトス戦闘団第2話 ジョーイ・オルカ第3話 トランパー・キリノ第4話 星と海とサバンナ
カリスト?開戦前夜?

ハヤカワ文庫JA 1988年3月 ISBN 4-15-030260-X
ハヤカワ文庫JA 2016年8月 ISBN 4-15-031240-0(航空宇宙軍史・完全版 一)開戦前夜のカリスト。航空宇宙軍に対する戦略をめぐってカリスト軍幹部たちは議論を重ねるが、非公然組織であるがゆえの統制の甘さをついて主戦派は戦争準備につきすすむ。早期の開戦に反対する戦略情報部長エリクセン准将は、この動きを阻むべく、独自の活動を開始した…。文庫書き下ろし長編。第1章 アルテミス宙港 — 国境警備隊第2章 アリオト基地(ベース) — 幕僚会議第3章 タナトス戦闘団 — 戦略情報部第4章 幕僚会議 — 国防会議第5章 カリスト地表 — タナトス戦闘団第6章 リュカオンセル — 国防会議第7章 反乱(I) — 統合憲兵隊第8章 第三デメB— タナトス戦闘団第9章 謀略 — ミザルー・コンプレックス第10章 反乱(II) — アルテミス・ミザルー新たなはじまり
火星鉄道一九(マーシャン・レイルロード)

ハヤカワ文庫JA 1988年7月 ISBN 4-15-030272-3
ハヤカワ文庫JA 2016年10月 ISBN 4-15-031248-6(航空宇宙軍史・完全版 二)短編集。

火星鉄道一九(マーシャン・レイルロード)(SFマガジン 1986年12月号掲載)

ドン亀野郎ども(タートル・ギャング)(SFマガジン 1987年3月号掲載)

水星遊撃隊(マーキュリー・スカウト)(SFマガジン 1987年5月号掲載)

小惑星急行(アステロイド・エクスプレス)(SFマガジン 1987年9月号掲載)

タイタン航空隊(フライング・タイタンズ)(SFマガジン 1987年12月号掲載)

土砂降り戦隊(cats’n’dogs fighters)(SFマガジン 1988年2月号掲載)

ソクラテスの孤独(ロンリー・ソクラテス)(SFマガジン 1988年4月号掲載)

戦闘員ヴォルテ

TOKUMA NOVELS MiO 1988年9月 ISBN 4-19-153767-9
徳間デュアル文庫 2000年10月 ISBN 4-19-905018-3地球上、サハリンからシベリアでの物語。航空宇宙軍によって戦いのために作られた人造人間(遺伝子工学によって作られたサイボーグ亜人種)ヴォルテによる、自由を求める闘争を描く。SFアドベンチャー1983年8月号?1986年1月号連載。

雪稜の狙撃者(SFアドベンチャー 1983年8月号掲載)

2人の脱走兵(SFアドベンチャー 1984年5月号掲載)

霧の中の野獣(SFアドベンチャー 1984年11月号掲載)

殺人者の街(SFアドベンチャー 1985年2月号掲載)

追跡者の顔(SFアドベンチャー 1986年1月号掲載)

遠い河(書き下ろし)

タナトス戦闘団

ハヤカワ文庫JA 1989年3月 ISBN 4-15-030289-8
ハヤカワ文庫JA 2016年8月 ISBN 4-15-031240-0(航空宇宙軍史・完全版 一)慎重派のクーデターの失敗から、主戦派が主導権を握ったカリスト。開戦劈頭の奇襲作戦決行の準備を命じられたタナトス戦闘団隊長ダンテ中佐は、月面都市に潜入する。しかし、カリスト軍幕僚会議の思惑と航空宇宙軍警務隊の隙の無い警戒の間で、事態は思わぬ方向に進んでゆく。文庫書き下ろし長編。第1章 潜入第2章 謀略第3章 尋問第4章 支援第5章 反撃第6章 奇襲終章 離脱
巡洋艦サラマンダー(クルーザー サラマンダー)

ハヤカワ文庫JA 1989年12月 ISBN 4-15-030312-6
ハヤカワ文庫JA 2016年10月 ISBN 4-15-031248-6(航空宇宙軍史・完全版 二)短編集。


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