舌癌
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舌癌

概要
診療科腫瘍学
分類および外部参照情報
ICD-10C02
ICD-9-CM141
MeSHD014062
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舌癌(ぜつがん)は、口腔癌の一つで、前方2/3(有郭乳頭より前方)と舌下面の範囲で発生する腫瘍。口腔癌の中で最も多く、報告によっても差があるが、口腔癌全体の30%?60%を占め[1][2][3]、そのほとんどは舌縁部に発生する[4]
概念

舌癌とは、前方.mw-parser-output .frac{white-space:nowrap}.mw-parser-output .frac .num,.mw-parser-output .frac .den{font-size:80%;line-height:0;vertical-align:super}.mw-parser-output .frac .den{vertical-align:sub}.mw-parser-output .sr-only{border:0;clip:rect(0,0,0,0);height:1px;margin:-1px;overflow:hidden;padding:0;position:absolute;width:1px}2⁄3(有郭乳頭より前方)と舌下面の範囲で発生する腫瘍で、口腔癌の一つとして、最も発生頻度が高い腫瘍である。通常、目に見える範囲であるため、早期発見は容易であるが、疼痛などの自覚症状がない場合、放置され、腫瘍が進行してから医療機関を受診することもある。

舌根部(舌後方1⁄3)は中咽頭に含まれ[1]、この部位の腫瘍は舌癌ではなく口峡咽頭癌/中咽頭癌に分類される。

近年、発症者、死亡者は年々増加しており、2002年の日本における舌癌の死者は1,147名と30年前の2.7倍にまで増加している[5]
疫学

喫煙アルコールが舌癌の原因の一つとして明らかになっている[6]。この他、口腔癌#疫学も参照

組織型は大部分が扁平上皮癌であり、まれに腺癌がある[1]

男女比は2:1と男性に多く、他の口腔癌に比べ若い年代での発症が多く、20から40歳代でも罹患する[1]。10歳代で罹患した患者の報告もある[7][8]
症状

初期症状はびらん潰瘍、結節、表面塑像な顆粒状局面であり、白斑紅斑を含むこともある[1][9]。進行すると硬結を伴う潰瘍などが増大し、疼痛出血、さらには舌の運動や咀嚼嚥下、構音機能の障害を認める[9]
転移
所属リンパ節転移

他の口腔癌に比べ早期より発生しやすく[2][4]、初診時に30%から40%がすでに転移している[1]。特に顎下リンパ節や内頸静脈リンパ節に転移することが多いとされる[10]他、近年、画像診断機器の性能の上昇に伴い、舌リンパ節への転移の評価が容易になったことから、同部への転移の報告が増加している[10]
遠隔転移

気管が最も多く、このほか、胸膜肝臓甲状腺腎臓副腎心臓血管への転移や、肺・肺門・咽頭食道・気管周囲・鎖骨縦隔静脈角・腹部大動脈周囲・後腹膜などのリンパ節への転移が認められる[5]。稀な例として乳腺[11]などへの転移も報告されている。詳細は「転移」を参照
診療科

主に担当する診療科としては歯科口腔外科耳鼻咽喉科、癌センターなどでは頭頸部外科がある。このほか、再建が必要な場合は形成外科が、放射線治療では放射線科が、化学療法では担当診療科(化学療法科等)が加わる事もある。検査においては病理診断科臨床検査科消化器内科も関わる。言語聴覚士理学療法士等のリハビリテーション部門、栄養サポートチームも関与する。
検査

腫瘍部位の病理検査のほか、原発部位や転移部位の画像診断として、CT[12]MRI[12]PET[12]US[12]胸部X線[12]、Gaシンチグラフィ[12]、骨シンチグラフィ[12]が、また、重複癌の精査などで上部消化管内視鏡検査、消化管造影検査等が行われる。
MRI

主にT2強調画像や造影で舌癌の浸潤範囲やリンパ節転移の有無の精査に用いる。特に原発の浸潤範囲に関しては、T分類を決定するのに優先される検査である[13]下顎骨骨髄への浸潤部の精査等、CTに比べて優れた面がある検査であるが、初期舌癌症例では腫瘍の局在部位の指摘が難しいことも多い[14]
超音波検査

超音波検査により、頸部リンパ節転移の有無の精査[15]や、腫瘍の進展範囲の評価[16]を行う。原発巣の厚さは頸部リンパ節や遠隔組織への転移率や術後の再発率に関係していると考えられており[9][17]、腫瘍の進展範囲を調べる超音波検査の重要性を示している。検査では腫瘍部位は粘膜面から連続して低エコーに描出される[18]
上部消化管内視鏡検査

舌癌等の口腔癌、頭頸部癌の患者は胃癌食道癌を重複癌として発症することが多いため、上部消化管内視鏡を用いてこれらの癌の有無を精査する[19]
分類
TNM分類

TNM分類は、原発の評価をT、リンパ節転移の評価をN、遠隔転移の有無をMで評価し、さらにその評価に基づきStage分類を行う評価法である。例えば、舌癌T2N1M0と記載されていれば、腫瘍原発の大きさが2センチメートルより大きく、4センチメートル以下であり、腫瘍の同側に3センチメートル以下のリンパ節転移が一つあり、遠隔転移が認められない、StageIIIの舌癌であることを示す[20]。現在、UICCのTNM悪性腫瘍の分類第6版(2002)と日本口腔腫瘍学会口腔癌取扱い規約(2010)による分類がある。後者はUICCの分類と比べてT4a分類について顎下隙への浸潤が加えられており、皮膚への浸潤、上顎洞への浸潤が外されている[21]。また、T2についてはearlyT2とlateT2へ分けることが、舌癌においては有意な分類との考えもある[22]
臨床型分類

口腔がんの臨床型分類には多くの分類があり、基本的には発育形態により内向性と外向性に分け、さらに表層性状によって細分化するものである[23]。しかしながら、判定に迷う症例も多い事と、発育形態のみでも臨床病態を反映していることから、現在は舌癌の臨床型分類として口腔腫瘍学会が提唱した表在型、外向型、内向型に分ける分類が推奨されている(グレードB)[23]
山本-小浜分類

1983年頃に報告された分類[24][25]で、悪性度の分類として腫瘍の浸潤様式を指標とした分類であり、舌癌の局所再発率・頸部リンパ節転移率・5年累積生存率において有用であるとされるが、施設や診断者による判定基準の格差が大きく、診断統一のための検討がなされている[26]
治療

外科的療法放射線療法化学療法の治療法が、単独または組み合わせで行われる。特に外科的療法と放射線療法が行われてきた[1]。2017年3月には免疫チェックポイント阻害剤ニボルマブが適応承認されている[27]
放射線単独

放射線治療単独の場合、従来型の外部照射法では根治は期待できないが[28]、組織内照射法では腫瘍の厚さが1cm未満であれば外科的療法と同等の治療効果があるとされており、それ以上の厚さでは外科的療法より劣るとされる(グレードB[29][1][28]。組織内照射法では針状線源としてラジウムセシウムイリジウムが、粒状線源としてラドンを用い、腫瘍近傍にこれらを挿入することで正常組織の被曝量を下げて腫瘍部位に放射線を照射する治療法である[30]。ただし、針状線源ではラジウムは放射線防護状の問題から1982年に国際放射線防護委員会から廃棄の勧告がなされたため、使用されておらず、その後多くの施設で用いられたセシウムもすでに2001年に製造中止となり、現在使用している施設でも今後セシウムの放射線の減衰に伴い使用できなくなり、イリジウムは半減期が短く使用できる施設も限られている[30]。粒状線源ではラドンは現在は使用されておらず、粒子を使用している[30]
外科的療法

外科的療法を選択した場合、切除の範囲は臨床型、浸潤の深さ、周囲組織への進展により切除範囲が異なり、その範囲によって舌部分切除術、舌可動部半側切除術、舌可動部(亜)全摘術、舌半側切除術、舌(亜)全摘術に分類される[4][31]。切除部分が大きさにより、皮弁や筋皮弁による再建術が行われ、下顎骨や口腔底に進展している場合には下顎骨辺縁切除術や下顎骨区域切除術が行われ、血管柄付き遊離皮弁などにより顎骨再建が行われる[32][33]。頸部リンパ節転移がある場合、治療的頸部郭清術を行う[34]。頸部リンパ節転移を認めない場合に、予防的な頸部郭清術を行うか、頸部リンパ節に後発転移が認められた際に手術を行うかは意見がわかれており[34]、行わない医療機関が多い[1]が、術野に頸部が含まれるときには行われる[34]。術前・術後に放射線療法、化学療法やその併用が組み合わされることもある[35]。治療後は、摂食嚥下・発語等の機能が低下するため、医師歯科医師言語聴覚士歯科衛生士看護師らにより、リハビリテーションが行われる。
放射線化学療法

これらの機能の温存や審美面の理由で形態を温存するために化学療法と放射線療法の組み合わせで根治治療を行い、効果がない場合に手術をおこなうという方法がとられてきている[36]。この方法は手術が可能な場合に手術を行う方法に比べて生存率等を上昇させたというエビデンスはない(グレードC1[37])が手術回避または縮小手術による臓器・機能温存療法として期待できる(グレードB[38])。手術が不可能な症例においては放射線治療単独よりも生存率等が高い(グレードA[39])ために標準的治療と考えられている[38]
免疫チェックポイント阻害剤

再発又は遠隔転移を有する舌癌に対して2017年3月、ニボルマブ(オプジーボ)が適応承認された[27]
治療後


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