興奮剤
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精神刺激薬(せいしんしげきやく、: stimulant[1][2][3], : psychostimulant[1])とは、中枢神経系の活動を増加させる薬物の総称である[1]。刺激薬、興奮剤[4]とも呼ばれる。乱用のため一定の規制があるが、医療や研究上の用途が認可されているものも多い。

デキストロアンフェタミンメタンフェタミンを含むアンフェタミン[5]コカインカフェインや他のキサンチン類、ニコチンメチルフェニデートが含まれる[1]。ということは、日本におけるアンフェタミン類の覚醒剤を含むものである。a-PVP(英語版)のような新規向精神薬(NPDs)のデザイナードラッグも含む。メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)は化学構造としてアンフェタミン類に分類される。しかし幻覚作用を有し特性が異なる[6]

関連障害の単位としては、世界保健機関はコカインと、それ以外のものに分け[1]ているがタバコの分類もある[7]アメリカ精神医学会は、アンフェタミン様の作用を持つものと、コカイン、またニコチンとカフェインに分類している[8]。共にMDMAは、幻覚剤に分類される[1][9]
定義
訳語の問題

次に訳語の問題があり、訳語が一定していない。同じような薬物を表すstimulantという単語に対して興奮剤、覚醒剤、刺激薬といった訳語が混在してきた。
Excitantica(analeptica, stimulanta) (1916年の簡易処方集におけるドイツ語の日本語訳)
脳興奮剤
[10]。カフェインが含まれている。

日本における乱用が問題となってくることによって取締法が制定される。
Stimulant Control Law(法務省刑事局の日本語訳)
覚醒剤取締法[11]。1951年の法律である。しかし、国連薬物犯罪事務所(UNDOC)での日本の厚生省の報告では、「覚醒剤(awakening drugs)」として知られる「興奮剤ないし精神刺激薬(Stimulant)」と報告し[12]、覚醒アミンあるいはアンフェタミン類である[13]
Analeptics and nervous system stimulants(総務省による1949年の薬効分類の翻訳)
興奮剤、覚せい剤[14]。1949年の分類である。
central nervous system stimulants(総務省による1964年と1990年の薬効分類の翻訳)
興奮剤、覚せい剤[15][4]。1964年改定と、1990年改定で同一のもの。Analepticsの語は無くなった。
stimulant drugs(医学書『モーズレイ処方ガイドライン』における翻訳)
刺激性薬物である。なお、コカインやアンフェタミンを説明している[16]

『グッドマン・ギルマン薬理書』第12版では、英単語が見当たらないが、「興奮薬」にてコカインやアンフェタミン、カフェインに言及している[17]
日本の法律

日本では、第二次世界大戦後に、アンフェタミンと特にメタンフェタミンの注射剤の乱用が問題となった。このため、1951年(昭和26年)6月30日に覚醒剤取締法が公布される。「日本の法律上の覚醒剤」が規定されている。

この法律の日本語訳は、法務省刑事局の『法律用語対訳集』によれば、Stimulant Control Lawである[11]。しかし、国連薬物犯罪事務所(UNDOC)における厚生省の報告ではAmphetamines Control Law[13][12]、UNDOCの認識やユネスコでの厚生省麻薬課の報告では、Awakening Drug Control Lawである[18][19]

第二条 この法律で「覚せい剤」とは、左に掲げる物をいう。
一 フエニルアミノプロパン、フエニルメチルアミノプロパン及び各その塩類
二 前号に掲げる物と同種の覚せい作用を有する物であつて政令で指定するもの
三 前二号に掲げる物のいずれかを含有する物 ? 覚醒剤取締法

第三条に規定されるように、医療および研究上の使用は認められている。

なおコカインやMDMAは「日本の麻薬取締法における麻薬」である。
世界保健機関

1961年の麻薬に関する単一条約は、第二次世界大戦後に解体した国際連盟による万国阿片条約を、国際連合および世界保健機関が引き継いだことによって締結された国際条約である[20]。これはコカインなどの使用も制限している[20]。当時、コカインは飲料のコカ・コーラなどにも含まれ乱用が問題となったためである。ただし、麻薬に関する単一条約の第30条(b)(i)および(ii)は、個人の治療に関して、処方箋を要して施用するための規定である。「コカインは国際条約上の麻薬」である。

しかし、麻薬に関する単一条約が公布される過程においても、1956年の「沈溺性薬物に関する世界保健機関専門委員会」は、日本におけるアンフェタミンの乱用を問題に挙げ、同時に睡眠薬のようなトランキライザーの国際的な乱用も問題に挙げた[21]。1963年には、「依存性薬物に関する世界保健機関専門委員会」と名を変えた委員会は、中枢神経系に対して鎮静あるいは覚醒作用のある鎮静剤や精神刺激薬(stimulants)の乱用が、麻薬の乱用のような問題となっていることを懸念し、新たな規制条約につながっていった[22]

1971年の向精神薬に関する条約において新たな規制の範囲が示された。条約の翻訳文では、stimulationに興奮の字をあてている。

1) A state of dependence, and
2) Central nervous system stimulation or depression, resulting in hallucinations or disturbances in motor function or thinking or behaviour or perception or mood, or
(i) (1)依存の状態及び
(2)幻覚をもたらし又は運動機能、思考、行動、知覚若しくは感情に障害を起こす中枢神経系の興奮又は抑制 ? 向精神薬に関する条約 (PDF) (外務省)

アンフェタミンやメタンフェタミン、メチルフェニデートなどが同じスケジュールIIに指定され規制管理下にある[23]。後の、1984年の世界保健機関の会議では、乱用が流行していたMDMAは医療価値がないとしてスケジュールIに規定された[24]。同条約の1条(e)に定義されるように、これらは「国際条約上の向精神薬」である。

疾病及び関連保健問題の国際統計分類』第10版(ICD-10)では、stimulantに精神刺激薬の語を用いている。stimulants, including caffeine

カフェインおよび他の精神刺激薬 ? 『疾病及び関連保健問題の国際統計分類』第10版(ICD-10):DCR研究用診断基準[2]

For stimulant drugs such as cocaine and amfetamines[25]
コカインやアンフェタミンのような刺激性の薬物の場合[26] ? 『疾病及び関連保健問題の国際統計分類』第10版(ICD-10):臨床記述と診断ガイドライン


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