自衛隊ペルシャ湾派遣
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自衛隊ペルシャ湾派遣(じえいたいペルシャわんはけん)は、湾岸戦争後の1991年(平成3年)にペルシャ湾海上自衛隊掃海部隊(ペルシャ湾掃海派遣部隊)が派遣されたことをいう。この作戦は湾岸の夜明け作戦と名付けられ、ペルシャ湾上で6月13日に行われた記者会見で発表された[1]

他国領海付近における掃海作業は朝鮮戦争での海上保安庁特別掃海隊による活動(1950年)以来、また日本国外での実任務はマリアナ海域漁船集団遭難事件に対する災害派遣1965年)以来のことである。また練習艦隊等による遠洋航海以外の海外実任務で、日本海軍・海上自衛隊の艦隊がインド洋を渡るのは、第一次世界大戦地中海派遣第二次世界大戦のインド洋作戦以来の出来事であった。
派遣に至る経緯
クウェート侵攻と海幕の初期対応

1990年8月2日、イラククウェート侵攻に対して直ちに国際連合安全保障理事会決議660が採択され、即時の無条件撤退が要求されたのをはじめとして、国際社会はほぼ一致してイラクの行動を侵略的行動として非難した[2]海上幕僚監部(海幕)では、クウェート侵攻直後から、海幕防衛課に運用課・装備課等も加わって、現行法制内での可能行動についての白紙的研究に自主的に着手した[2]。8日には、ホルムズ海峡が封鎖される可能性等についての見積りと、その状況に対して海上自衛隊としてなし得る対応策についての検討結果を海幕長に報告し、今後の展開によっては、海上自衛隊の部隊の行動を伴う貢献の要請が予告なしに突然行われる可能性もあるとして、以後、できる限り幅広くかつ具体的な検討作業を進めていくこととなった[2]。14日には第1回幕内検討会が実施され、護衛艦や掃海艇等の派遣についての研究に方向を定めるとともに、日本の軍事的貢献策についての法制面の研究も開始した[2]。その成果を踏まえて、内局や統幕の上層部等に対応策の概案について説明するとともに、21日には第2回幕内検討会を開催し、掃海艇派遣の研究に続き補給艦及び護衛艦の派遣についての具体的研究を推進、23日には関係者に対しペルシャ湾海域への護衛艦派遣等についての研究結果を説明した[2]

一方、政府の対応は極めて慎重かつ否定的で、ボランティアの医療要員派遣の可能性表明等、極めて限定的な協力にとどまる模様を見せていた[2]。これに対し、既に砂漠の盾作戦を発動して軍事的対応に着手していたアメリカ合衆国は、アメリカ軍支援のための民間機や輸送機の提供を要請するほか、水面下では掃海艇や輸送艦の派遣も要請し、30日にはピカリング国連大使が、日本の中東貢献策への期待として掃海艇補給艦の派遣を第一に挙げるなど、軍事面に重きを置いた貢献への期待を再三表明した[2]。こういった動きに対し、8月31日、日本政府は、当面の局面打開を図るため「国連平和協力法」の検討を開始することを明らかにしており、海幕でも同日に第3回幕内検討会を開催し、以後は本研究の成果を基に同法の枠組での海上自衛隊の効果的活用と役割の明確化を追求していくこととした[2]
国連平和協力法と輸送機派遣の頓挫

当時の参議院における保革逆転現象を背景として、官邸筋は、同法によって設立される平和協力隊への自衛隊の組織的な参加には否定的であったのに対し、外交筋は国際社会の反応を踏まえて自衛隊の参加を模索しており、そして防衛庁・自衛隊が協議に参加しないままで法案化の作業が進められていった[2]。法案の骨子が固まるのにつれて、海幕内での軍事的貢献策に関する検討作業も公開化・本格化し、10月8日には従来の委員会を発展拡大させた形で、防衛部長を長とするME(Middle East)プロジェクトを公式に発足させ、自衛艦隊司令部なども参画し、下記の4ケースに関する基本計画の策定を進め、いずれも12月中旬には作業を完了した[2]
多国籍軍に協力するための海上輸送支援及び陸上自衛隊野戦医療隊支援のための補給艦の派遣

湾岸地域での掃海作業のための掃海部隊の派遣

湾岸地域における邦船の護衛のための護衛艦部隊の派遣

湾岸地域からの邦人移送のための護衛艦部隊の派遣

しかし国連平和協力法案は10月16日の閣議決定を経て第119回国会(臨時会)に提出されたものの、公明党や社会党の反対、そして海部首相の政治的求心力低下を背景とした世論の不支持に伴って、11月8日には廃案となった[3]。一方、その間も国際社会の動きは続いており、11月29日には、イラクに対してクウェートからの無条件撤退を求めるとともに撤退期限を設定する国際連合安全保障理事会決議678が採択され、これによって設定された期限が切れた翌々日にあたる1月17日、多国籍軍は砂漠の嵐作戦を発動して、武力行使に踏み切った[2]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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