自虐の詩
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『自虐の詩』(じぎゃくのうた)は、業田良家による日本の4コマ漫画、またこれを原作とした2007年の日本映画。『週刊宝石』に1985年1月4・11日合併号から1990年8月2日号にかけて連載された。単行本は光文社コミックスから全5冊、それらを「幸江とイサオ」シリーズで再構成したハードカバー版全1冊、さらにそれを上下巻にした竹書房文庫版がある。2007年には、「幸江とイサオ」シリーズをすべて収録した、愛蔵版上下巻が発売された。タイトルは、業田が大きな影響を受けたと話す吉田拓郎の「イメージの詩」からインスピレーションを受けてつけられた[1]
概要

男性サラリーマン向け週刊誌『週刊宝石』のショートコミック枠に掲載。当初は複数のシリーズがあるオムニバス作品だったが、人気のあった「幸江とイサオ」シリーズに一本化された。この項では特に「イサオと幸江」シリーズを「自虐の詩」として記す。シリーズ初期は、怒るとすぐにちゃぶ台をひっくり返したり、金をせびるばかりのイサオとそれに従う幸江といった構図のギャグが中心だったが、中期以降幸江の子供時代の回想が増えてくるとしだいにストーリー4コマとなっていき、幸江の小学生編・中学生編を経て最終回に突入していくドラマチックな展開は「泣ける4コマ」として定番になっている。また作品完結からヒットし映画化されるのにかなりの時間が空いている。これは2004年に『BSマンガ夜話』にて取り上げられて泣けるマンガとして絶賛されたことが大きい。番組で取り上げた直後にはネット通販にて完売している。
登場人物
現代編
森田幸江
年齢は35歳ぐらい
[注 1]東京のとある安アパート(隣の話し声が聞こえる程壁が薄い)の1階の部屋で内縁の夫・イサオと暮らす。基本的にはイサオは働かないので、幸江があさひ屋(定食屋)で働くなどして家計を支えている。他の人からどんな目で見られようと愛するイサオと暮らせるだけで、本人は幸せらしい。
容姿
伏し目がちな目(というより作品では常に目を閉じた状態で描かれている)と鼻の中央にあるホクロが特徴。オシャレに無関心というわけではないが、飲食店勤務ということもあり、普段からほぼノーメイク。物語全体を通してもメイクをしたことは、あまりない。また、生活に余裕がないこともあり、いつも質素な服である。
性格
基本的に自分のことより周りの人間のことを考えて行動する控え目な性格。ただし、主張すべきことがある場合は結構ハッキリと口に出す。意外と度胸があり、イサオと行動するうちに(伏し目のまま)相手をにらみで威嚇する(いわゆる、ガン飛ばし)ことに強くなった。
趣味
趣味らしい趣味はほとんどないが、俳句の会に参加したことがある。また、趣味ではないが、イサオに頼まれて将棋の相手や麻雀のメンバーが足りない時に参加することがある。他にもイサオに付き添って(あるいは騙されて)パチンコ競馬に行くことがあり、何度かフィーバーを出したり、競馬予想を的中させるなどイサオよりギャンブル運がある。俳句以外のものは、元々興味がなかったためイサオにやり方を教えてもらっており、それなりに楽しんではいるが、これ以降も1人でやることはない。
その他
料理はそれほど得意ではない。お酒を飲むのはそれなりに好きである。地味で幸薄そうな顔のせいで小・中学生時代に男の子から「ドラキュラ」などとイジメられたことがあり、今でも時々思い出して落ち込むことがある。離婚経験がありバツイチである。荒れた生活を知った周りの人から何度か別れを勧められるが断っている。イサオの悪口を言われるのが嫌い。イサオのことを本当に愛していて、特に切れ長な鋭い目をカッコいいと思っている。また、イサオの匂いが好きで服や布団などの匂いを時々かいでいる。イサオとの待ち合わせ日時・場所を書いた走り書きを「手紙」として大事に保管している。
葉山イサオ
働かず、幸江から金をせびってはギャンブルや酒に費やす、いわゆるヒモ。ただし、女性が接客するスナックなどの飲み屋には行っても、浮気だけはしないようだ。
容姿
初期のイサオは、モコモコとした髪型だったが、徐々にスッキリとした丸刈りになる。また、顔の下半分の広い範囲に渡ってヒゲを生やしている。切れ長の目で、普段から目つきが鋭い。幸江によると「(イサオの)目つきの鋭さは日本一かもしれない」とのこと。
性格
短気であり、気に食わないことがあると事あるごとに家の中で「でえーい!」などと言ってちゃぶ台をひっくり返す。家以外では、マージャン屋(麻雀荘)の麻雀卓、飲食店の長いイス、おでん屋台までもひっくり返したことがある。超面倒臭がり屋でちょっとしたことでも幸江にやってもらう。横着な性格でたまに幸江から布団干しやゴミ捨てを頼まれるが、適当にしてしまう。意外とシャイな部分もあり、幸江のことを想っているものの幸江から「愛している」などの言葉をせがまれるが、頑なに拒否する。
好み・趣味など
ヘビースモーカー、また大の好きでもある。ビールや日本酒をよく飲んでいる。ギャンブル好きであり、パチンコ、競馬など様々なものに金をつぎ込んでは、多くの場合負けて帰ってくる。また、麻雀や将棋もやるが、基本的に勝負ごとにはあまり運がないようである。
行動
前述の通り、鋭い目付きや短気な性格のために、路上で怖そうなお兄さんなどとにらみ合い(ガンの飛ばし合い)になったり、そのままケンカになることが多い。腕っぷしが強く力もあるためケンカに強く、ナイフ角材などの武器を持った相手にも素手で勝つ。また、上段蹴りや飛び蹴りなどの蹴り技を得意としており、パチンコ台のガラス扉や住んでいるアパートの扉(木造と思われる)を蹴って破壊したことがある。家にいる時は、テレビや新聞を見てすごしたり、寝ていることが多い。時々部屋に友人を呼んで麻雀をする。飲み屋などで泥酔すると帰り道のゴミ捨て場など外で寝てしまうこともしばしば。無職のイサオだが、たまに日雇いのバイトで建設現場などで働いても、疲れてタクシーで帰宅したり、高いマッサージを受けるなどして結局儲からない。
その他
過去に何人かの女性と付き合ったことがあるが、水商売の女や薄幸そうで世話好きな女ばかりである。車は持っていないが車の免許は持っている。意外なことにギター弾き語りができる。作中で「東池袋ブルース」(3番まである)という自作曲のオリジナルソングを歌っている。

イサオと幸江について
幸江は、イサオに真面目に働いてほしいと思っているが、中々働かず幸江が頼んでもらってきた仕事も「勝手なことをするなー!」などと断る。イサオが乗り気じゃないため、入籍していない。イサオが家の内外で面倒を起こす度に幸江が後片付けや相手への謝罪や弁償をする役目となっている。前述の通り、乱暴な性格のイサオだが幸江に直接手をあげるなどの暴力行為は一切したことがなく、ちゃぶ台をひっくり返す時も幸江にケガをさせないように配慮して投げている。ただし、過去に一度だけはずみで幸江がケガをしてしまい(「隣のおばちゃん」の部屋ごしにちゃぶ台をひっくり返す音によるもので、詳細は不明)救急車で運ばれたことがある。時々イサオは、「出て行けー!!」と幸江を追いだすことがある。しかし、その場合もイサオが後から呼び戻しに行ったり、家を出された幸江の方もイサオの夕食を心配して牛丼をそっと窓から届けるなど、お互いを気遣う行動を取る。幸江は何度か風邪などで入院したことがあり、決まってイサオが見舞いに訪れる。しかし、その度に幸江は嬉しくて体調が悪いのに、ついイサオの世話を焼いてしまう。たまにイサオからプレゼントとして、よそから見ればありがた迷惑なものや下心(金を借りるため)として渡されるが、それでも幸江は喜んでいる。
森田家康
幸江の父。イサオに幸江との入籍を勧めるなど、幸江の幸せを願っている。しかし、金をせびったり、ちゃぶ台をひっくりかえしたりと、やっていることはイサオとたいして変わらない。あさひ屋のマスターの気持ちを知っていてたびたびタカる。口の左側にあるホクロと幸江と同じ伏し目がちな目が特徴。1人暮らししていて、幸江からは手紙で「ありのままの生活状況」を書いた後に「私は幸せです。心配しないで」と書かれるが、不安になるだけである。そのこともあって知り合いに幸江のことを聞かれる度に「夫は大蔵省に勤めるエリートで、去年の文化の日大安吉日に結婚式をあげた」などと嘘をついている。
あさひ屋のマスター
幸江が働く定食屋の主人。幸江に惚れている。しばし、幸江にアプローチするが、袖にされる。幸江には積極的にアタックするものの、イサオのことを恐れているため直接には何も言えない。幸江のことを考えて行動するあまり、客がいるのに店を放ったらかしに店を開けることがある。「幸ちゃん君を、幸せに、したいんだー」という言葉が気に入っているらしく、これを掛け声にしてゴルフのショットやボウリングをやると好スコアが出やすくなるらしい。
その他
一時、寂しさを紛らわせるためにあさひ屋の常連客に連れられて行った風俗店で働く「幸江」という風俗嬢と知り合って、仲良くなったことがある。妻は既に亡くなっていて、今は1人暮らし。あさひ屋で被っている帽子を私生活でも被っており、寝る時もお風呂に入る時も抜いだことがない。
隣のおばちゃん(苗字は「福本」というらしい)
幸江とイサオが住むアパートの隣りの部屋に住む初老の女性。夫婦喧嘩の仲裁役や幸江の愚痴、過去話などの聞き役と相談相手になる。町内会長に惚れている。
家族について
娘が大分にいるとのことで、お酒が送られてきたことがある。夫は既に亡くなっているが、回想シーンとして生前の夫との生活が描かれたことがある。ちなみに夫は薄毛でメガネをかけて、「隣のおばちゃん」より年上。「甲斐性なし」などと嫌味を言って冷めた態度で接していたが、独り身になった今は後悔している。加えて、隣に住むイサオと幸江を「ダメな男との不憫な生活」と思いながらも賑やかな夫婦生活を羨む一面がある。
その他
幸江にとっては、お母さん代わりのような存在で仲良くしている。ただし、幸江から実際に「お母さんみたい」と言われた時に隣のおばちゃんが一瞬喜んだが、『ということは、イサオ=義理の息子』と想像して「よしとくれ!」と強く否定していた。幸江に対し時々お金を貸してあげている。お茶漬けが好きらしく、よく食べている。好意を持った町内会長からは、色々なものを購入させられるが、本人は「好きになったから仕方ない」と半ば諦めながらも納得している。
町内会長
元は「隣のおばちゃん」とは、ただの茶飲み友達で、表向きは、品があって優しそうな雰囲気のおじさん。実はマルチ商法にはまっているらしく、「隣のおばちゃん」に怪しげな商品を勧める。
タロー
イサオの子分的存在で、よくギャンブルを一緒にしたり酒を飲んでいる。タローも遊び人らしく、時々イサオ(というより、幸江)にお金を借りに来る。また、イサオから言われて、2人で幸江から何とかしてギャンブルに使う金を(タローは、渋々と言う感じで)手に入れようとする。タバコはラークがお気に入り。
タローの女
タローの彼女か妻か、名前など詳細は不明。タローよりしっかりした性格。幸江や「隣のおばちゃん」と仲が良く時々一緒に出かけたりしている。
風俗嬢の幸江
風俗店で働く「幸江」という名前の風俗嬢。といっても太ったおばさんで、御世辞にも美人とは言えない。マスターとは風俗嬢とただの客の関係だったが、マスターから本物の幸江に受け取ってもらえなかったプレゼントやレストランでの夕食などで持て成されたことから仲良くなった。見た目に似合わず意外と女らしい性格。また、行動的な性格で、あさひ屋に普通の客として来たり、マスターの寝ている間に開いていた勝手口から部屋に入って朝ごはんを作ったりして、どちらもマスターから叱られている。
熊本さん
幸江の中学生時代の同級生にして、真の友。結婚し一人娘をもうけた後、夫の転勤で上京、幸江と再会する。
小学生編
森田幸江
幼くして母が家を出てしまい、父もろくに働かない人物であったため、愛情と金銭が共に欠乏した生活を送る。


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