『自画像』スペイン語: Autorretrato
英語: Self-Portrait
作者ティツィアーノ・ヴェチェッリオ
製作年1562年ごろ
種類キャンバス上に油彩
寸法86 cm × 65 cm (34 in × 26 in)
所蔵プラド美術館、マドリード
『自画像』(じがぞう、西: Autorretrato、英: Self-Portrait)は、イタリア・ルネサンスのヴェネツィア派の巨匠ティツィアーノ・ヴェチェッリオがキャンバス上に油彩で制作した絵画である。1562年ごろ、画家が70歳を過ぎていたころに描かれている[1][2][3]。生涯にティツィアーノは数点の自画像 (記録に残っているものだけでも6点ほどある) を描いている[3]が、本作は、現存する2点[4]の自画像のうちの後のもので[1][3]、『画家・彫刻家・建築家列伝』を著したマニエリスム期の画家・伝記作家のジョルジョ・ヴァザーリが1566年にティツィアーノのアトリエで見た作品と同定できる[1][3]。レンブラント晩年の何点かの『自画像』とともに老年芸術の最高峰に位置付けられる作品であり[3]、美術史上最も感銘を与える自画像の1つであろう[2]。現在、マドリードのプラド美術館に所蔵されている[1][2][3]。 絵画は、老年期の身体的特徴を写実的に理想化することなく描いており、若い時期の1546-1547年ごろに制作された、未完成の『自画像』[3] (ベルリン絵画館) に見られるような自信というものはまったく示されていない。ベルリンの『自画像』が構えて攻撃的[3]なポーズのティツィアーノを4分の3正面向きで表している[5] のに対し、本作は古代ローマの硬貨にある権力者のレリーフ (浮彫) に想を得て、横顔の画家を描いている[2]。年老い、痩せたティツィアーノは遠くにいる感じで、離れたところを見つめており、物思いにふけっているようである[6]。しかしながら、威厳、権威、絵画の巨匠としての証が示されている。 ティツィアーノは簡素であるが高価な衣服を身に着け、絵筆 (画面下部左側) を握っている。絵筆は控えめに登場しているが、彼に画家としての正当な地位を与えるものである。ベルリンの『自画像』や本作以前の作品で、ティツィアーノは自身の職業をまったく示唆していない。一方、この作品は、西洋美術史において芸術家が自身を画家として明らかにしている最初期の自画像の1つである。ティツィアーノの影響は非常に大きなものであったため、ディエゴ・ベラスケスやフランシスコ・デ・ゴヤを含む後代の画家たちの自画像に繋がった。前者は『ラス・メニーナス』で、後者は『カルロス4世の家族』 (ともにプラド美術館) で、自身を絵画制作中の姿で描いている[7]。
作品