自然言語理解
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自然言語理解(しぜんげんごりかい、: Natural language understanding, NLU)は人工知能自然言語処理の一分野であり、コンピュータ自然言語理解読解)または意図を抽出させるという試みである。

ニュース収集、テキスト分類、音声アクティベーション、アーカイブなどの大規模コンテンツ解析といった様々な応用があるため、商業化の面でも関心が強い分野である。
歴史

世界初の自然言語理解の試みとしては、1964年、MITのダニエル・ボブロウ(英語版)が博士課程の研究の一環として開発したプログラムSTUDENT(英語版)がある[1][2][3][4][5]ジョン・マッカーシー人工知能 (artificial intelligence) という呼称を生み出したのは、ボブロウが博士論文 Natural Language Input for a Computer Problem Solving System を書く8年前のことである。ボブロウの論文は、単純な英語で書かれた代数学の文章問題を入力として、それを理解して解くプログラムを示したものである。

翌1965年、同じくMITのジョセフ・ワイゼンバウムがセラピストを装って英語で人間と対話するプログラムELIZAを書いた。ELIZAは単純な構文解析とキーワードの決まり文句への置換で成り立っており、ワイゼンバウムは実世界についての知識データベースをプログラムに持たせるのを避け、豊富な語彙目録を与えるのを避けた。子供だましのプロジェクトとしては驚くほどの人気となり、例えば最近のAsk.comなどで使われていた商用システムの祖先となった[6]

1969年、スタンフォード大学ロジャー・シャンクが自然言語理解のためのCD理論を提唱[7]。このモデルは言語学者シドニー・ラム(英語版)の研究成果を踏まえたものであり、イェール大学でシャンクの指導を受けたジャネット・コロドナー(英語版)をはじめとする学生らがこれを応用した。

1970年、ウィリアム・A・ウッドが自然言語入力を表現する増補遷移ネットワーク(英語版) (ATN) を考案[8]。ATNは句構造規則の代わりに同等の有限オートマトンを使い、それを再帰的に呼び出している。ATNのより一般的な形式を "generalized ATN" と呼び、その後何年もつかわれ続けた。

1971年、テリー・ウィノグラードはMITでの博士論文のためにSHRDLUを書き上げた。SHRDLUは、積み木で構成される限定的な世界について単純な英語の文を理解でき、それに従ってロボットアームで積み木を操作できる。SHRDLUのデモンストレーション成功により、その後しばらくそういった研究が続けられた[9][10]。ウィノグラード自身も著書 Language as a Cognitive Process を出版し、この分野に大きな影響を与え続けた[11]。なお、後にウィノグラードはスタンフォード大学でGoogle創業者の1人となるラリー・ペイジを指導した。

1970年代から1980年代にかけて、SRIインターナショナルの自然言語処理グループが、この分野の研究開発を続けている。そこから商業化の試みもいくつかなされている。例えば、SRI出身のゲーリー・ヘンドリックス(英語版)は1982年にシマンテックを創業したが、当初はパーソナルコンピュータからデータベースへのクエリを自然言語インタフェースで行うシステムを開発していた。しかし、マウスを使ったGUIが登場したため、シマンテックの方向性を変えることになった。同じころ他にも自然言語理解の成果を商業化する試みがなされており、Larry R. Harris の創業した Artificial Intelligence Corporation やロジャー・シャンクが教え子らと創業した Cognitive Systems がある[12][13]。1983年、Michael Dyer はイェール大学でBORISシステムを開発。ロジャー・シャンクと W. G. Lehnart の行った研究と類似点がある[14]

2022年のある体系的な見解によると、深層学習は自然言語を理解する能力を向上させ、ほぼすべての領域を変えたという。教師なし学習とマルチタスク学習法に基づく深層学習言語モデルの組み合わせは、自然言語理解のさらなる向上をもたらす可能性を秘めている[15]
スコープと文脈

「自然言語理解」は様々な範囲のコンピュータアプリケーションに適用される。ロボットを操作する単純化されたコマンドから、新聞記事や詩を完全に理解しようという大掛かりなものまで幅広い。多くの実世界の応用はこれら2つの極端な例の中間に位置し、例えば電子メールの内容を分析して分類して企業内の適切な部門に振り分けるシステムは、それほど深い理解を必要としないが、固定のスキーマをもつデータベースへの簡単なクエリの管理よりはずっと複雑である[16]

長年に渡り、自然言語処理あるいは英語風の文をコンピュータへの入力に利用する試みが様々なレベルで行われてきた。一部の試みはそれほど深い理解を必要としないものだったが、それでもシステム全体の使いやすさを向上させる役に立っている。例えば、ウェイン・ラトリフ(英語版)が開発した Vulcan というプログラムはスタートレックに出てくる会話するコンピュータを真似て英語風の構文でコンピュータに指示できるようになっていた。Vulcanは後にdBaseへと発展し、その使いやすさで人気となり、パーソナルコンピュータのデータベース市場を生み出した[17][18]。しかし、単に英語風の構文で使いやすくすることは、豊富な語彙目録を持つシステムとは全く異なり、後者は自然言語文の意味論を表すのに独特の内部表現(一階述語論理であることが多い)を持つ。

例えば文章論理式に変換することによって、意味を扱う方法がある。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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