自殺報道ガイドライン(じさつほうどうガイドライン、Preventing Suicide - A Resource for Media Professionals)とは、世界保健機関(WHO)が2000年に発表した自殺防止を目的とする報道関係者向けの勧告である。
当初日本では2000年版を『自殺を予防する自殺事例報道のあり方』と訳していたが、2008年改訂版は『自殺予防 メディア関係者のための手引き』、2017年改訂版は『自殺対策を推進するためにメディア関係者に知ってもらいたい基礎知識』に変更された。「自殺報道ガイドライン」は通称である[1]。 1984年から1987年にかけて、オーストリアのウィーンでは、ジャーナリストが報道方法を変えたことで、地下鉄での自殺や類似の自殺が80%以上減少した。また、自殺率を減らす効果があった[2]。さらに教員やスクールカウンセラーのために作成された『自殺予防に向けた学校の教職員のための資料』では世界的に15歳から19歳までの年齢層の死因に自殺が多いことを指摘している[3]。 報道によって自殺を助長する効果をウェルテル効果、逆に抑制する効果をパパゲーノ効果として研究されている。 2020年、俳優の三浦春馬の死について、ガイドラインに違反して報道するメディアがあったため、メディア各社へ自殺予防民間団体が「ガイドライン」に従うように呼びかけがなされた[4]。 2022年5月11日、芸人の上島竜兵の死去が明らかになり、同日に厚生労働省から各メディアに対しガイドライン遵守の要請が出されたが、一部のメディアがガイドラインに違反する報道を行ったことにより、同日中に厚生労働省などから「再度の注意喚起」として、ガイドライン遵守の要請が出される異例の事態となった[5][6][7]。 また、多くの自殺に関する記事について文末に「日本いのちの電話
根拠
概要(2017年最新版)
やるべきこと
どこに支援を求めるかについて正しい情報を提供すること
自殺と自殺対策についての正しい情報を、自殺についての迷信を拡散しないようにしながら、人々への啓発を行うこと
日常生活のストレス要因または自殺念慮への対処法や支援を受ける方法について報道をすること
有名人の自殺を報道する際には、特に注意すること
自殺により遺された家族や友人にインタビューをする時は、慎重を期すること
メディア関係者自身が、自殺による影響を受ける可能性があることを認識すること
やってはいけないこと
自殺の報道記事を目立つように配置しないこと。また報道を過度に繰り返さないこと
自殺をセンセーショナルに表現する言葉、よくある普通のこととみなす言葉を使わないこと、自殺を前向きな問題解決策の一つであるかのように紹介しないこと
自殺に用いた手段について明確に表現しないこと
自殺が発生した現場や場所の詳細を伝えないこと
センセーショナルな見出しを使わないこと
写真、ビデオ映像、デジタルメディアへのリンクなどは用いないこと
過去の手引
2000年版
すべきこと
事実の公表に際して保険の専門家と密接に連動する
自殺は自殺成功とではなく自殺既遂と呼ぶ
関連する情報だけを中面記事として公表する
自殺に代わる手段を強調する
電話相談や地域の支援機関に関する情報を提供する
危険指標や危険信号について周知させる
すべきではないこと
写真や遺書を公開する
具体的で詳細な自殺手段を報告する
単純化した理由付けをする
自殺を美化したり、扇情的に扱う
宗教的な固定観念や文化的固定観点を用いる
悪人探しをする
2008年版 概要
機会あるごとに公衆に自殺に関する知識を与える
自殺をセンセーショナルにする言葉や陳腐化させる言葉を使わず、また問題に対する解決策のように表現しない
自殺に関する話題を目立つように配置したり、過度に繰り返したりしない
既遂した自殺や自殺の試みの方法について詳細な説明をしない
自殺既遂や自殺の試みがなされた場所についての詳細な情報を提供しない
見出しの言葉遣いに注意する
写真や動画の利用には注意を払う
有名人の自殺を報道する際には特に気を配る
自殺により先立たれた人に対して十分な配慮を見せる
助けを求める場所についての情報を提供する
メディア関係者自身も自殺に関する話題に影響されるということを認識する
扱いについて