自己株式
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この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。

自己株式(じこかぶしき、: Treasury stock、: Treasury share)は、株式会社が有する自己の株式をいう。金庫株(きんこかぶ)、社内株とも呼ばれる。
概説

株式会社の立場から見て「自己株式」は、日本語としては
当該株式会社の発行する株式

当該株式会社の発行する株式のうち、当該株式会社が自ら保有するもの

の可能性が考えられるが、2006年に日本で施行された会社法では、自己株式を「株式会社が有する自己の株式」と定義しており(113条4項)、「自己の株式」と「自己株式」とが明確に呼び分けられている(少なくとも同法条文上は自己株式は自己の株式の一部ということになる)。

株式会社は新株を発行することで発行済株式総数を増やし、資金を調達する。自己株式を取得することはこの反作用、すなわち、既発行の株式を入手回収 (自己の株式を取得) し、手元資金を放出して、発行済株式のうち自己株式以外の総数を減らす働きを持つ。取得された自己株式は、それ以外の自己の株式と区別して扱われることがある(例として、新株予約権発行可能数の算出時)。また、様々な目的のために処理 (再度放出 (自己株式の処分) または消却 (自己株式の消却) )されることがある。
制度沿革
諸外国

自己の株式の取得は、米国においては、多くの州によって古くから一般的に認められていた。一方、英国においては絶対禁止とされていたことがあり、ドイツにおいても「会社の重大な損害を避けるために必要な場合」には、資本の一割を限度として自己の株式の取得を認める[1]等、国によって規制は一様ではなかった。

日本

日本においては、次のとおり制度変更を経て現在に至っている。(商法改正全般については、商法の改正参照)
まず、1890年(明治23年)に商法が制定された当時は、自己の株式の取得が絶対禁止とされていた[2]。これは株式が、株主の会社に対する権利義務の主体であることから会社が取得できると民法第520条の混同の法理に反する(出資を募った株式が戻入されたのだから消滅すべきではないか)と考えられること、かつ、会社が同時に株主(構成員・社員)になることが不可能だからであるという理論に基づくものであった[3]。もっとも、実際界や学界はその緩和を望んでおり、株主失権、株式消却および合併の場合に一時的な自己の株式の取得が可能であると解釈上、認められていたこともあり、社団の法理に基づく前述の理由だけでは禁止の説明に窮する上、有価証券たる株式は発行会社自体も理論上、有効に取得し得るとされていた(通説)[4]

そこで、1938年(昭和13年)の商法改正により、(1)株式の消却、(2)合併・営業譲渡および(3)権利の実行の3つが初めて例外的許容事項として明文で規定された。

もっとも、自己の株式の取得が原則禁止とされたのは、
会社財産の充実を害し会社債権者および会社の利益を害する

会社の内情に通じた取締役等が株価下落時に自己の株式を買い占めた後、価格を高騰させる投機取引を行い、一般投資家・株主を欺瞞する弊がある(食い逃げ増資)

会社が自己の株式の取得による株価の維持工作、増資のための株価工作(株価のてこ入れまたは工作買い)などにより不当な株価操縦を行い、一般投資家を欺瞞する弊がある

取締役が株式の価値に影響する内部情報を利用して自己の株式の有利な売買を行うと、一般投資家を害する虞が多い。

自己の株式の取得を認めた場合に、方法・対価いかんによっては、特定の株主を優遇する結果になり株主平等の原則に反する。

会社支配権を維持する目的で、会社理事者が会社の計算で他人名義で株式を取得して、その議決権を利用するときは、株主および会社債権者の利益が害され、資本参加を伴わない総会決議支配等の弊が生じる。

会社が株式の買占めを行った者から株式を高価に買取る場合には、会社に対して財産的損害を与えるとともに、いわゆる会社荒らしを助長する弊が大きい。

等の理由によるものとされており、このため、許容事項を限定列挙するに留まっていた。
もっとも、1.については配当可能利益を財源とした場合には弊がないこと、2.については投機取引のために会社財産を処分する罪・株主の差止請求権による抑止、3.については証券取引法第125条・58条等による弊害の防止、4.については市場取引を通じた場合には該当しづらいこと、5.については取締役の忠実義務等、6.および7.については不法行為自体の抑止など、法令により対策が施されていた。
とはいえ、これらの場合の違法の追及には実際上、立証の困難が伴いやすいことから、法律政策上の理由で、自己の株式の取得が原則として禁止とされた。

1950年(昭和25年)の商法改正により、合併・営業譲渡に株式買取請求権制度が導入されたことに伴い、(4)合併・営業譲渡における反対株主買取請求権の行使が、新たに例外的許容事項として追加された。続いて、1966年(昭和41年)の商法改正で、株式の譲渡制限に関する定款変更についても株主買取請求権制度が導入され、合併・営業譲渡に加え、例外的許容事項として追加されている。

1994年(平成6年)の商法改正により、新たに(5)使用人に譲渡する場合、(6)定時総会決議で利益により株式を消却する場合、(7)譲渡制限会社における買受人として指定の請求をされた場合についても自己の株式の取得ができることとされた。取得に関する目的が緩和されたことに伴い、これを補うものとして以下の方策が手当てされた。
手続規制(株主総会決議を要し、かつ買付けは公開の場で行う)

財源規制(対価の支出は配当利益に限定される)

数量規制(発行済株式の一定割合を取得の上限とする)

開示規制(営業報告書に記載を要する)

また、証券取引法においては自己の株式の取得に関する不公正取引に対処する規定の整備が進められ、自己株券買付状況報告書の提出が義務付けられた。

1997年(平成9年)には、株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律(平成9年法律第55号、消却特例法)が施行され、定款に定めを置くことで、取締役会決議で利益により株式を消却することができるものとされ、手続規制の一部が緩和された。この際、取締役会決議で自己の株式を取得できる旨のほか、その効力発生開始時期および取得することができる株式数の上限を定めなければならなかった。

2001年(平成13年)の商法改正は議員立法により行われ、その際、目的規制および数量規制を法文上から完全に無くし、併せて処分義務も廃止し取得した自己株式の保有を認めた。これにより、自己の株式の取得は、原則禁止から方向転換がなされ、配当可能利益の範囲内であれば定時株主総会の決議によって行えるようになった。これに伴い、前述の消却特例法は廃止された。当時のニュースでは、金庫株解禁という言葉が頻繁に使用された。これにより、自己の株式は急増するに至り、バブル期に集めすぎた過剰資金、不景気による資金需要の低迷、株式持合いの解消等が重なった結果、増資額を自己株式の消却額が上回る事態となった。

2003年(平成15年)の商法改正によって、定款授権による取締役会決議に基づく自己の株式の取得が解禁(商法第211条ノ3)となり、手続きの簡便さも手伝って自己の株式の取得が普及し始めた。特に上場会社による自己の株式の取得は、証券市場に対し会社が現在の株価を割安と考えているサインを伝える、いわゆる「シグナリング効果」があるとされている。

2006年(平成18年)に会社法が施行されたが、改正商法の趣旨(自己の株式の取得の自由化)は引き継がれ現在に至っている。もっとも法文構成自体は商法時代と同じく、許容事項を限定列挙する形を採っている。なお、海外からの日本株への資金流入(対外直接投資)が増加したこと等により、アメリカ的な考え方として「自己の株式の取得は、配当と同様に株主還元の一つである」という考え方も浸透しつつあり、配当性向に替わり総還元性向(配当総額と自己の株式の取得額の合計を、当期純利益等で除して株主還元率を示す考え方)を採用する上場会社も現れている。
論点
メリット

自己の株式を取得することのメリットとして、次のことが挙げられる。

株式の持ち合い解消のため株式が市場で売却されると株価が下落する恐れがあるが、自己の株式を取得することにより市場に流通する発行済株式数を減少させることで需給バランスを調整し、株価の維持が期待できること

前述のとおり、上場会社の場合、自己の株式の取得を決定することにより証券市場に対し株価が割安であるというメッセージを伝えることができること

会社法施行に伴い財源規制が配当と統一化されたことにより、株主還元の一環として自己の株式を取得することができること

株式交換等の組織再編や行使された転換社債新株予約権のために新株を発行すると、株式の希薄化(ダイリューション)が起こり既存株主の反発が予想されるほか、株価の下落の恐れがあるが、取得した自己株式を代用自己株式として用いればこれらの懸念がなくなること

デメリット

会社支配の不公平:不法行為自体の抑止により対応

会社の財産が毀損する恐れ:財源規制により対応

株主平等の原則に反する:手続規制により対応

株取引の不公平が生じる恐れがある:上場会社の場合、金融商品取引法の規制により対応

各種規制

財源規制自己の株式の取得には一定の
剰余金が必要。(ただし、事業全部譲受、合併および吸収分割で承継する場合、反対株主買取請求権を行使された場合に取得するときに限り、財源規制はない。)

分配可能額との関係自己の株式の取得と引き換えに交付する金銭等の総額は、当該取得行為の効力発生日における分配可能額を超えてはならない。超過した場合は、関係者が連帯して金銭支払い義務を負う。なお、関係者とは、株式の譲渡人、その取得行為を行った会社の業務執行者、株主総会・取締役会の議案提案者のことをいう。

分配可能額の計算※1分配可能額= (1)+(2)(1)(最終事業年度の末日における)その他資本剰余金+その他利益剰余金?自己株式の帳簿価額+有価証券評価差額金※2+土地再評価差額金※2(2)(最終事業年度の末日後に剰余金の配当を行った場合における)剰余金の配当の総額+準備金積立額※3※1前提条件は、次のとおり。臨時計算書類を作成していない。最終事業年度の末日後に自己株式の処分・消却、資本金・準備金の減少、吸収型再編受入行為・特定募集、剰余金の資本金への組入れを行っていない。不公正発行による責任履行により増加したその他資本剰余金はない。のれん等調整額はない。連結配当規制の適用を受けない。資本金の額+準備金の額+新株予約権の額+評価・換算差額等の額(差益が生じている場合に限る)が300万円以上である。※2評価損がある場合のみ※3準備金の額が資本金の1/4に満たない場合における

自己株式の財源規制は「株主への払戻し」として、原則、分配可能額へと統一化されているが、事前規制の有無という観点で2通りに区分できる。


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